琥珀と黄色、ギザギザしっぽ(シンサト) 1
シンオウ地方は全体的に寒い地域だが、全てが雪で覆われているわけではない。期間は短いが夏だってあり、北側でなければ薄着で旅もできる程だ。
そんなシンオウは本日、澄んだ青空をしている。時折吹く風は穏やかで、絶好の旅日和といった天気だった。旅をする者としてはとても過ごしやすいだろう。浮かれているトレーナーがいてもおかしくないくらいだ。
しかし残念ながら、シンジはそのような気分にはなれない。それどころか不機嫌ですらあった。というのも、彼がいるのは深い森の中だからである。
人里離れたそこは伸び放題の木々によって太陽が遮られ、昼間だというのに薄暗い。かろうじて所々に日が差し込んでいるものの、ひっそりと静まり返った森からは生命の気配を感じられず、仄暗い雰囲気を醸し出している。さらに道らしきものはなく、草木をかき分けて進むしかなかった。
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