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    rinandon

    @rinandon

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    rinandon

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    ユリカイ♀
    爪切ってるだけ
    いつどこでがないんで好きな場所にあてはめてください

     指先から伝わる感触は、あの母親の胎内にも似た記憶を想起させる。
     他者に触れられるというのは、余程気の知れた仲ではない限り不快なだけだ。 
     それを許した相手に触れられるのは、眠りにつきたい程心地よいものである。
     手に触れるカイの指は、身体には優しく、ユーリが怖さを抱くことはない。
     ぱち、ん。
     と、小気味よい音が1つ鳴る。
     カイがユーリの爪を、爪切りで切った音だ。
     ぱちん、ぱちん。
     と、今度は2つ続けて鳴る。
     黙々と自身の爪を切るカイを、じっと見つめる。自身の爪を切るのに集中しているためか、カイの視線はユーリに向いていない。
     それでも、真剣な眼差しで爪を切る姿は美しいと思えた。
     成熟したブルーベリーの実を、そのまま落とし込んだような色彩のカイの瞳は、ユーリにはセクシュアルとロマンチシズムを感じさせた。
     もちろん、それを感じるのは世界で2人きりの時だけだ。
     真っ直ぐに引き結ばれたカイの唇は、白い肌に映えるほんのりと薄い桃色をしている。
     カイは美しい。
     それは、容姿だけによるものではない。
     ユーリがカイに心惹かれるのは、魂の輝きがあるからだ。
     絶えぬ炎のような、揺るぎない強さを持つ魂がカイにはある。
     その灯火が、ユーリを惹きつけてやまないのだ。
     隣に立つ者は、常に自分を鼓舞してくれる者がいいと、ユーリは生真面目に考えていた。
     だから、ユーリにとって、カイは理想の女と言える。
    「ほら」
     終わったぞ、とカイがユーリに声をかける。
    「爪とぎは自分でしろ」
    「ああ……」
     小さく頷きながらも、カイに甘えたいという気持ちが働いていく。
     爪を切るという行為は、セックスの前戯に近いものがあるとユーリは感じていた。
     この高揚する気持ちを分かってくれ、とカイに意識を飛ばしてみる。
     すると、カイの切れ長の目の奥が笑う。
    「……次はこっちだ」
     そう言ってカイが手を添えたのは、ユーリの足であった。
    「…? どうした」
    「足も出せ」
    「は?」
     早くしろ、とカイはユーリの足を軽く叩く。
    「爪が伸びているだろう」
    「足は自分で切るからいい。オレはおまえの子どもじゃないんだぞ」
     ユーリの言葉に、カイはふ、と小さな笑みをこぼした。
    「子どもじゃなくて、恋人だからだろう?」
    「くっ……そう言われるともう何も言えないな」
     カイはいつもユーリの一手先をいく。
     負けを認め、ユーリは大人しくカイに足を差し出した。
    「いい子だ。……こっちも伸びているな」
     ソックスを脱がされ、裸足になった足にカイの指がそっと触れた。
     普段あまり触られることのない場所に触れられて、ぴくっと足の指が動いた。
    「……っ」
    「動くな」
     愛撫するように、カイの指がするするとゆっくりと足の指と間を撫でていく。
    「小指からだな」
     そう言うと、カイは小指の爪をぱちん、と切った。
     白く細い指が爪を切る様は、まるで儀式のようだとさえ思えた。
     ぱちん。ぱちっ。
     小指から順番に、切られていく。
     ぱちん。ぱちんっ。
     足の10本、全ての爪を切り終える。
     長い時間ではない。ほんの数分の出来事である。
    「終わったぞ」
    「……ああ。ありがとう」
     爪を切られている間に、ユーリのものは反応してしまっていた。
     熱の籠った目で、もう一度カイに訴えかけてみる。
     力の差を考えれば、ユーリがカイを組み敷くのは簡単なことだ。
     しかし、今はカイに甘えたい。
     その感情に支配され、ユーリはカイの様子を窺っていた。
    「まったく……仕方のないやつだな。ただの爪切りで欲情するとは……。だが、今日は終わりだ」
    「……は?」
     カイはユーリの熱に触れることなく、淡々と告げる。
     ――本当に食えない女だ。
     だがそんな女に惚れてしまったのも、ユーリ自身だ。
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