おやすみ、とリビングで百之助に言い部屋に戻ったのはいったい何時間前だろうか。ベッドの中でスマホをいじってた時間があるから、2時間……3時間くらいは経ってるはず。つまりいまは真夜中ってことなんだけど。
いつの間にかダブルベッドの隅のほうに百之助が小さくなって寝ていた。いや正確には狸寝入りだ。寝たふりをして、寝ている僕の隣でじっと息を潜めている。僕に触れてくることはないし、僕が寝返りをうってもぶつからない位置に移動してる。日が昇るまでずっとそうしていて、朝になるとこっそりベッドを出て自分の部屋に戻る。そして何事もなかったかのように起きてきたふりをして自室から出てくる。
付き合い始めても寝室を別にしたいと言ったのは百之助だった。その代わり一緒に寝たい時は申告して、された方は余程の事情がない限り断らないこと。「今日お前の部屋行くから」「わかった」という会話をして、ただ一緒に眠るだけになるのかセックスをするのかはベッドの中で決める。
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