一方的に目的を遂げる力を持っている筈なのに、この人の大きな掌はぼくの手を床に縫い止めるだけで。
「さこんくん……」
覗き込んでくる瞳は自信なく揺れて、許しを乞うような声は弱々しい。
重さがかからないよう隙間を開けて覆い被さっている身体からは体温がじわじわと伝わってくる気がする。ぎゅうぎゅうと鳴っているぼくの鼓動も聞こえてしまっているんじゃないだろうか。
「さこんくん、好きだ……」
耳元に顔を寄せられ囁かれたその言葉が嬉しくて恥ずかしくて、自分も同じように想っていると返したくても素直になれない喉が邪魔をする。
(何も言わないで触ってくれたら良いのに)
握られた手に少し力を込めてみたらぴくんと高坂さんの肩が跳ねた。顔を横に向けるとすぐ側にあった耳や頬が真っ赤で。たまらなく愛おしいその肌に、ちょっとだけ、頭を上げて唇を触れされてみた。