季語シリーズ⑤ 扇風機 気怠げな夏の午後だった。部屋に二人の青年がいた。
夏と言っても始まったばかりで、暑さの盛りではない。太陽はてっぺんまで上り、蝉もわんわん鳴いているが、扇風機があれば昼間の暑さも凌げる程度だ。クーラーはまだ必要ない。
部屋でも扇風機が一台回っていた。首を左右に動かして、部屋全体に風をいきわたらせている。
青年たちは眠っていた。一人は深緑色の髪、もう一人は白髪だが先端だけ墨で染めたように黒い。二組の布団はぴたりとくっついていて、二人とも薄いブランケットを被っている。
さあと外からの風が吹いて、カーテンが大きく揺れた。スイング中の扇風機からの風が合わさるタイミングになると、内と外からのとでカーテンはぱたぱたと柔らかい音を立てる。
布団の傍には衣服が落ちていた。畳まれておらず、放っておかれたままだった。
青年らのうち一人が寝返りを打って、二人は向き合う形になった。すらりとしているが、しかし男性的に骨ばった足が触れ合う。どちらとも所在を探した後、軽く絡み合った状態で落ち着いた。
扇風機は規則正しく彼らの髪を煽る。
青年たちは静かに寝息を立てている。気怠げな夏の午後だった。