無垢と欲 たまに、本当にたまにだけど先生の反応にどうしたらいいか困ることがある。
「よく好きな子のこと目に入れても痛くないとか食べちゃいたいぐらい可愛いって言うけど大げさじゃない? なんて思ってたんだけどさ、悠仁のこと好きになってからその気持ち分かるようになっちゃった」
そう言いながら先生は苦しくなるぐらいに背中から俺を抱きしめて、犬がじゃれつくみたいに耳を甘噛みしてきた。噛まれた耳の縁からぞくぞくとした感触が首筋から背中に走って、思わず俺は肩を竦めて振り返った。
「ちょ──っ! せんせ、それやめてよ。こちょばったいから」
「コチョバ……? 何それ」
くすくす笑う先生の声が一段と甘く溶けて聞こえて、俺は嫌な予感を感じながら恐る恐る口を開く。
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