たのしいたのしい地獄巡り 一つ年下の、異世界からやって来たという後輩が元の世界に帰るのだとフロイドが知ったのは、ある夏の日の、嫌な熱気がこもった部室でのことだった。
「アイツ、帰るんですって」
シャツの釦をとめながらエースが呟く。その横顔が一瞬、痛みに耐えるように歪んで、しかし直ぐにいつものように猫のような笑みを浮かべてみせた。
「デュースとグリムがすんげぇ落ち込んでて、もう鬱陶しいのなんのって」
「君たち、仲良いもんな」
髪を結い直していたジャミルがそう言うと、エースは不服そうに唇を尖らせた。そうして否定の言葉を紡ごうと口を開いて、何かを考えるように視線を落とした。
「……うん」
珍しく素直な物言いにジャミルとフロイドの視線がかち合う。
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