All for you 「次はこのお店に行きたくて……って私ばっかりごめんね」
「いや、俺はあまりこういったものに詳しくないから助かる」
スマホで地図か何かを表示している少女と、それを覗き込む青年。少し遠くで交わされるふたりの会話は傍目から見れば仲睦まじいカップルのそれのようで。杏は隣で面倒そうに、その割にはしっかりと隠れて、しかもすぐそこにあった店で帽子なんかを買って隠蔽工作をしている彰人に、特に意味もなく小声で問いかけた。別に普通に話したって、前方を歩く二人には聞こえやしないのに。
「……どう思う?」
「どうもこうも、やっぱオレ達怪しくねぇか?」
「私たちじゃなくて、冬弥とこはね!」
「あのなぁ……別にいいだろ、仮に付き合ってても、あいつらのことだから活動に影響出したりしねぇよ」
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