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    to_cosfree_12

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    フィとファ。
    甘えたいファ。

    ##ほやれん#フィガファウ

    変わりゆく陽光死の瀬戸際に巡り会う運命は数奇で、どうしようもなく僕を歪ませた。

    図書館に向かう昼下がりの中庭は穏やかに風が凪いでいく。
    自身にはあまりに似つかわしくなくてその場から距離を取ろうと急足で図書館へと歩みを進める。
    どうにも新しく補充された魔法使いは素質はあるが未熟な面が散見され放っておきたかったが自身が許さなかった。
    (やっと解放されると思っていたのに)
    何からかはとにかく色々だ。
    木漏れ日が漏れる木々の下、レンガ道、程よく手入れされた草花。
    薬草でもなんでもないただの鑑賞用の花。
    レンガ道の先には魔法の練習に馬車を動かすミチルと応援するルチル、見守るレノックスとフィガロ。
    日向の中随分とイメージとのギャップが激しい光景。

    前回の厄災では10人の魔法使いが死んだ。
    酷い光景を幼い彼らはまだ経験していない。ただ守りたい一心でここで訓練を積んでいる。
    そんな優しい訓練をつけるフィガロに、穏やかに見守るレノックスに新しい側面を見つける。
    実際には自分にも向けられていたかもしれないが、不意にでるもので、今の彼らの様子は愛情にもみれる表情で兄弟のそばに強かにそこにあった。

    一瞬見入ってしまった。足がぬかるんだ。

    必死に鉛の様に重い足を動かした。頭をよぎる思いを振り払う様に目を背ける。
    図書館に入って初めて落ち着けた。

    腰を落ち着けて机に向かい資料整理を始めたが集中できない。日向の光景が思い浮かびとても眩しい。
    「ファウストどうしたの」
    現実からの言葉が引き戻す。
    「フィガロか。授業はどうした」
    言葉を発してから気づく。あたりは赤く染まり時が長く過ぎ去っていた。
    眩しい西日に思わず目を細める。
    「もう終わったよ。みんな真面目だから今日もとても充実していたよ。」
    自分の修行ではあまり見れなかった穏やかな表情。
    本当は自分が大好きだった顔で今見れたことに悔しさも覚える。悔しいとも思いたくもないが。
    「晩御飯だから呼びにきたんだよ。行こう。」
    いつか聞いた自分に向けられた言葉。
    耐えられない。
    「今晩、飲みに行ってもいいか」
    どうにか思いついた未練がましい言葉。
    どうにもならない思いが引き止めたくて仕方がない。
    フィガロが少し目を細める。
    「いいよ。用意しておくね。さあ、行こう。」
    首を少し引いて席を立つ。
    どれだけ感傷的になっていたのか自身の提案に対して嫌悪感に苛まれる。
    連れられた夕食はあまり味がしなかった。喉を通りづらくて無理やり気味に口に含みできるだけいつも通りに見える様に務めた。
    酒のあてが無くネロから酒を飲みたがる魔法使い用の食事に出すワインをお願いした。
    ネロには訝しげに見られたが追及はされなかった。
    そこまでに酷いらしい。フィガロには筒抜けな気がする。情けない。

    服を簡略なものに着替えフィガロの部屋の前に立つ。
    自分の提案とはいえ居心地が悪い。それでもノックした。
    「僕だ。入っていいか。」
    「いいよ。」
    入った時に香る少しの薬臭さが過去と違いまた胸が燻る。
    フィガロは笑顔で迎える。少し見られたと感じると、
    「白ワインだね。これなら…雲の街でもらったチーズが良さそうだね。ベットに座ってて。」
    魔法でチーズとテーブル、グラスが用意される。
    現れたテーブルにワインを置くとワインも魔法で開けられる。
    注ぐのはフィガロの手で行われる。
    昔はつがせる訳にはいかないとファウストが率先して用意していたが、こんな風についでもらうのは初めてで注ぐ手先にも少し伏せられた目にも上がる口角にも目が無意識に走る。
    視線にフィガロと目線が合う。揶揄われると思ったがただ微笑まれる。目を奪われていて逸らしたいのに逸らせない。
    「ファウスト、グラスを持って」
    目の前の声が現実へと引き戻す。甘く聞こえる、あまりに重症な心に呆れさえ覚える。
    フィガロは言いながら机の椅子を引き出す。
    互いにグラスを持ち上げる。

    「フィガロ…隣に……座らないか。」
    声が震える。思ったよりも小さな声量でなぜ言ってるのかわからない。
    今日の自分の行動が自分のものとは思えなく困惑はさらに強くなる。顔も熱い。
    「いいの?」
    顎を引き肯定を示す。
    「じゃ、遠慮なく」
    隣にかすかに温もりを感じる。
    心が浮つく。今更。
    手のグラスをフィガロのグラスと合わせる。
    夕食とは変わり香りが鼻をくすぐる。だがアルコール度数はある程度強い。
    用意してくれたチーズにも手を伸ばし口に入れる。
    「美味しい」
    思わずこぼれた言葉。
    フィガロは慈しむ様に見ているだけだった。
    フィガロも口をつける。
    静かに、自分を大切にしてくれているのが解る。どんどん感情が迷子になっていく。
    わからないまにワインに口をつける。
    「……本当は、不安だったんだ。あの時みたいに、この時間がなくなってしまうんじゃないかと思った」
    顔が見れない。不安に潰れている心が情けない。
    生物である以上、魔法使いも死ぬ。永遠の別れの時は必ずある。
    僕の方が先に死ねると思ったのに。これ以上の生きる苦しみを感じなくていいのに。
    でもフィガロは未来を託すために寿命を示したのだと思った。
    ひだまりの授業はいつかの輝かしい日々を思い起こすには、その後を思うには十分すぎた。
    身体に腕が周り抱きしめられる。
    「ごめんね。でも託せるのはファウストだけだったんだ。これから先、予言が皆んなを苦しめる。その時に俺はいないかもしれない。それは双子先生もオズもそうかもしれない。手が離せない状況もあるかもしれない。だから愛弟子に伝えたかったんだ。」

    身勝手すぎる。あまりにも身勝手すぎる。
    僕を捨てて置いて助けにも来なかったくせに今更。
    本当はずっとそばにいたかった。世話を焼いてもよかった。
    南の生徒が羨ましくて、甘えたくて、文句は言うと思う。
    それでも一緒にいたいくらいの気持ちが嫉妬していたんだ。

    腕をフィガロの背に伸ばして強く抱きしめる。


    本当はとても死にたい。
    本当は生きて守りたい。

    なんとも皮肉な。
    顔をあげると情けない元師匠の姿。
    仕方ない。
    「仕方ないから祝福を授けるよ。呪い屋からの特製の祝福だ。」
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    DONEほしきてにて展示していた小説です。

    「一緒に生きていこう」から、フィガロがファウストのもとを去ったあとまでの話。
    ※フィガロがモブの魔女と関係を結ぶ描写があります
    ※ハッピーな終わり方ではありません

    以前、短期間だけpixivに上げていた殴り書きみたいな小説に加筆・修正を行ったものです。
    指先からこぼれる その場所に膝を突いて、何度何度、繰り返したか。白くきらめく雪の粒は、まるで細かく砕いた水晶のようにも見えた。果てなくひろがるきらめきを、手のひらで何度何度かき分けても、その先へは辿り着けない。指の隙間からこぼれゆく雪、容赦なくすべてを呑みつくした白。悴むくちびるで呪文を唱えて、白へと放つけれどもやはり。ふわっ、と自らの周囲にゆるくきらめきが舞い上がるのみ。荘厳に輝く細氷のように舞い散った雪の粒、それが音もなく頬に落ちる。つめたい、と思う感覚はとうになくなっているのに、吐く息はわずかな熱を帯びてくちびるからこぼれる。どうして、自分だけがまだあたたかいのか。人も、建物も、動物も、わずかに実った作物も、暖を取るために起こした頼りなげな炎も。幸福そうな笑い声も、ささやかな諍いの喧噪も、無垢な泣き声も、恋人たちの睦言も。すべてすべて、このきらめきの下でつめたく凍えているのに。
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