その日一月十七日。
塔矢門下に入ったその年から続いていることがある。
これは塔矢先生と自分、多分明子さんしか知らない話。
特に何をするわけでもなく、会えれば一局、無理ならば電話で話すだけのこと。
基本塔矢先生は誰か祝えば他も祝わなければならなくなると、明子さんとアキラくん以外はどうしても頼まれなければ祝うことをしない。
自分で決めたそれを曲げることはない。が、融通を利かすことはある。そのさじ加減は未だに良くわからないが、今まで塔矢先生に「誕生日おめでとう」と言われたことはない。
それでも緒方にとって塔矢先生の弟子となった時から続く大切な時間だ。