秘宝の里にて「御手杵、足が重くなっているぞ!」
「そうは言っても、なぁーっ」
濃い霧に包まれた里での花集め。定期的に行われるこの任務では短期間に集中して繰り返しの出陣を行う事になる。今回も第一部隊に選出された御手杵であったが、出陣を重ねるにつれ目に見えて一振だけ動きが悪くなってゆく。軽やかに戦場を駆け回る短刀たちは置いておいくとして、同じ大物である筈の部隊長の石切丸も平然としているのは一体どうした事か。内心八つ当たりのように思い、息を切らしつつ遡行軍に三連撃をお見舞いした所で歌仙から叱咤の声が掛かったのであった。
陣形では二振隣り合う事が多く、御手杵が避けきれない投石を歌仙が打ち払う姿も度々見られる。華やかな外套を翻し己をかばう背は自身よりも小さい筈だが、不思議と頼もしく、守られていると安心感を覚えるものだ。本丸最古参の男士というのは伊達ではない。
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