悪魔の愛した論考今日の友人は、常になくご機嫌な様子だった。
私が彼、マックスウェルの部屋に入室した時には既にバインダーに挟んだ書類を熱心に読んでいた。邪魔をするのもなんだと思い、軽く目線を交わしただけにして茶の準備でもするかとジャケットをハンガーにかけた。
その間も、マックスウェルは夢中になって手元の書類を読んでいるようで、時折楽しそうにくすくすと肩を揺らしている。あまり普段感情を見ることのない彼がこんなに楽しそうにしているのが意外だった。いや、実験がうまくいった時などはこんな感じだったかもしれない。
彼の読書の邪魔にならないよう、最低限の動きで紅茶を淹れながら、ほほえましく友人を観察する。どうにも笑みを我慢することができないらしく、ページをめくるたびに口元はゆるみ、そわそわと指先が頬の近くをさまよう。濃いサングラスのレンズで目線こそうかがえないものの、よっぽど面白いものを読んでいるようだ、今日のお茶の話題はこれを教えてもらうしかないだろう。
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