リボン 暮れていく青空は淡く、遠くに揺れる街に落ちる影は深い。夏の名残はすべて去り、今、窓の外を吹く風は、その一息ごとに空気を涼しいものへ、厳しいものへと入れ替えていくようだ。
海風が強く当たるこの場所は、常に何かしらの音がする。風の唸る音、東京国際空港へと降り立つ飛行機のエンジン、東京湾に入港した汽船の遠吠、はためく警察旗と国旗が、絶え間なく刻む不定期なリズム。陽光は急激にその力を失って、世界は浅梔子のやわらかい光に包まれつつある。先日まではまだまだ昼間の範疇だったというのに、時は瞬く間に過ぎ去って、すべての形を変えていくのだ。
変わり映えのないものが一年ごとに廻ってきているように見えて、同じ日は二度と来ない。螺旋階段のような時間を過ごして、そして気が付いたときには、うえへ上がり、したへと下り、全く知らなかったものや見えなかったこと、あるいは思いがけないものが見えたりする。
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