Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    GoodHjk

    スタンプ?ありがたきしあわせです‼️

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🎃 ⚰ 🚑 🚨
    POIPOI 23

    GoodHjk

    ☆quiet follow

    【英零】ノリがゆるい|たまにシラトリクン

    ##英零

    病床パニック!【病床パニック!】






     その朝意識が表層へ浮上するにつれて次第に輪郭を露わにした感覚は、かつて幾度となく迎えた初夏の目覚めのいずれにも感じたことのないひんやりとした法楽の心地で以て、全身を繭のように包み込んでいた。身動ぎをすれば嫋やかに凪いだ敷布の小波があちこちの肌を撫ぜて得も言われぬ爽快を齎し、脚を伸ばせば浅瀬の底の精緻な白砂があなうらに纏わりつくあの擽ったい昂奮が悪戯に喚起された。
     とかくその日の覚醒は快く、叶うならば永劫この波間に漂っていたいと怠惰極まる願望を抱くほどだったが、如何なる浪費も我が身には許されないということを当人は誰よりも重々理解していた。次の瞬間には薄水青の双眸を瞬かせて心地良い睡気の靄を払い、天祥院英智は彼のベッドの上で目を覚ました。
     そうしてようやく、自分が服を着ていない事に気がついた。下着の一枚に至っても身に付けてはおらず、全くの素肌のまま上等な糸で編まれた敷布の上に仰向けに寝転び、これまた上等な羽根の詰まった掛布を被っているのである。今朝がやたらに清々しく感じられたのも道理で、それもそのはず、普段手脚を外気から守っている良質なシルクガーゼの寝間着もなく初めてありのまま、生まれたままの姿で一日を迎えたのである。この得難い滅多な解放感が悪癖として心底に根を張ってしまわないか寸刻他愛もない危惧をしたものの、その後すぐにより恐ろしい事実に直面したことで、そんなぞっとしない予感も初体験に伴った天上の夢心地もたちまち忘却の彼方へと押しやられてしまった。
     というのも、掛布から慎重に頭だけを外へ出して辺りを見回しても、着ていたと思しき衣服がどこにも見当たらないのである。裸で寝る慣習などないので着替えが用意されているわけもない。つまり、人間として正しく人前に出る為にはまず裸身のまま二人のルームメイトの目を盗んでクローゼットまで辿り着き衣類を調達しなければならないのだ。幸い漆黒のシェードを隔てた隣のベッドの主、朔間零の事はさしたる問題ではない。自称吸血鬼であるこの男は骨の髄まで夜型性質であり、万人が一日を終える支度を始める頃に目を覚まして動き出すためこの時間帯に顔を合わせることは殆ど有り得ない。気掛かりなのはもう一人、少し離れたところに据えられたベッドの所有者、健気で努力家の白鳥藍良である。オフであればまだ眠っている可能性が高いが仮令同じ事務所に雇われる身であろうと互いの予定を知り尽くしているわけではないので、英智は寝台の上で音を立てないように殊更ゆっくりと上半身を起こした。
    「え?」
     疑問符は頭の中に浮かべたつもりだったがしっかりと、しかもはっきりと音になって唇から零れ落ちた。剥き出しの胸元を覆うためたくし上げた分厚くも軽やかな水鳥の羽根の掛布の下、素裸を縮こまらせている自身の傍らに、同じく一糸纏わぬ裸体を晒して横たわる男がいたのだった。思わず条件反射的に羽毛布団を元通り掛け直し、突如停滞しがちになる思考とは裏腹に激しく脈を打つ心臓部をそっと手のひらで押さえる。どくどくとあまりに急な速さで血液を送り出そうとしているのでただでさえ丈夫ではない内臓が壊れてしまうのではないかと不安になった。大きく肩で息をして逸る呼吸を整える。幸運なことに藍良は留守にしているようで、部屋には自分と自分の隣に寝転ぶ男以外に人はいないらしかった。心音が落ち着くのを待っていても不毛だと悟ったのはそれから三分ほどかけて深呼吸を試みた後のことで、何をしていても動揺が治らない事を賢く優秀な頭脳の片端で悟った英智は、思いきってもう一度布団を持ち上げてみた。
     艶めく濡羽の癖毛が限りなく自由な筆致で描く緩やかな曲線、血の管が透けるかに思われるほど薄く青褪めた頬、安らかな吐息を洩らす口唇の淡い朱、目縁へ深々と憂いの影を投げかける睫毛の細やかな振動、横向きに折り畳まれた痩躯は危ういバランスで構成されており上背を感じさせずその様はどこか幻想じみていた。幻想であってくれればどんなにか安堵出来るだろうと思わずにはいられなかった。
    「……朔間くん」
     朔間零、夜闇の魔物、かつて学院を荒らし回った魔王、今し方は常ならば隣のベッドで眠りに就いているはずの吸血鬼が何故自分のベッドの中で、それも何も身につけずにすやすやと健やかな寝顔を当然のごとく横たえているのか、理由を想像する事も叶わなければ身に覚えもなかった。昨晩はいつもの通りに机に向かって書類仕事を終えた後、言うまでもなく仕立ての良い夜着をきちんと纏ったままベッドに入り至って健全な時刻に寝付いたはずである。聡く利発な頭脳をふんだんに働かせたとて一片の現状把握もままならず、どうしようもなく居た堪れなくなって、あるはずもない間違いの証拠が何かしら残されてはいないかと恐るおそる自分の下半身や腰周りに触れてみたがべたついたりかさついたりしている感触はなく、体内に違和感や異物感があるような心地もしない。ほっとするのと同時に確実に確率がゼロである恐るべき可能性について真面目に検証したことを心から恥じた。いかがわしい痕跡がないのであれば堂々と胸を張って隣で眠る男を叩き起こして追い出しがてら状況を問いただせばよいだけの話ではあったが、いかんせん彼も自分も全裸なのである。二人の間に何があったのか明確な事実を特定出来ないことには下手に藪をつつくわけにはいかなかった。
     とうとう眩暈を感じて片手の甲を血の気のない額に翳した時、寮室の扉が開かれて、英智は咄嗟に羽毛布団を頭まで引っ被って寝台に寝転がった。
    「あれ、天祥院先輩。おはようございます、おれ、もしかして起こしちゃいましたか?」
     扉を閉める音と共に聞こえた気遣わしげな声色は同室の白鳥藍良のものである。誰にも見られてはならない秘密を一つも二つも掛布の下に覆い隠してしまった英智の心臓は今にも拍動の過剰で破裂するかに思われ、打ち震えるたびに肋骨を軋ませた。厚布の下は仄暗く生暖かく、すぐ傍で息衝く生き物の存在を如実に意識してしまって心拍に一層の負荷がかかった。このまま息が止まってしまうのではないかという懊悩の渦中で、辛うじて声を張り後輩の挨拶に応える。「うん、おはよう、白鳥くん。少し前から目は覚めていたんだけど、あんまり具合が良くなくってね、今朝はゆっくり過ごす予定なんだ。君も忙しいだろうけど、身体には気を付けてね」
     掛布団に阻まれてくぐもった声はさながら本当に体調が優れないかのような演出が施されていた。心ならずも作り話をしはしたものの、上昇するばかりの心拍数や真っ赤に火照った頬や対照的に蒼白となった額は見るだに病的であったに違いなかった。具合が悪いんですかと直向きで心優しい後輩は素直に額面通りの言葉を反芻し、慌しく寄って来ようとしたので、片手を翳してひらひらと振る。あくまで陽気な素振りを心掛けてはみたが手先の演技力にはまったく自信がない。
    「平気だよ、僕の事は構わなくていいから。少し横になっていたら治ると──」
     不自然に途切れた科白の先は終ぞ紡がれる事はなかった。柔くのしかかる羽毛布団の中で、生ぬるい繭の中心で、死んだように眼を閉ざしていた朔間零が徐ろに身動いで、まるで甘えるように裸身を寄せてきたために、英智は二の句を継ぐどころか継ごうとしていた句の内容を綺麗さっぱり忘れ去った。もっと言えば掛布の外の事も一緒くたに思考の外に放り出してしまって、外界と隔絶された薄暗がりの只中で、翻る仄白い手指が二の腕辺りに縋るのを、滑らかな頬の稜線が肩の線にぴたりと沿うのを、無防備に弛んだ唇が肌を掠めるのを、剥き出しの脹脛が脛にぶつかるのを、どこか他人事のように感じていた。その時胸中に湧き起こり溢れ返った未知の感覚が快であったのか不快であったのか、即座に断じることは出来なかった。全身が総毛立ち、鳥肌まで立てた割には円やかな黒髪の擽ったさや冷えた素肌の柔らかさ、無警戒な寝顔のあどけなさを神妙に、尊く思いさえした。その瞬間世界には英智と零の二人しかおらず、生まれたきりの穢れない身体で永久に裸の肉体を触れ合わせたままでいるような極彩色の錯覚、血迷った心像まで脳裏を過ぎった。
    「天祥院先輩、大丈夫ですか?」
    「ああ、ええと……うん、大丈夫だよ。すまないね、心配をかけて。僕は平気だから。さあほら、君は君の用事を済ませておいで」
     異質な無言の間を訝しんだ後輩を安んじるべくかけた言葉とてどこかふわふわとしていて心許なかった。藍良はそれ以上皇帝の領域に立ち入ろうとすることはせず、解りましたと一言物憂い声音で答えて部屋を去った。沈黙が掛布の外側を覆い尽くす。内側には、未だ二人分の呼吸音が充ち満ちていた。息苦しさが生むじりじりとした焦燥が身体の深いところに燻って得体の知れない熱源へと変じ、堪らずに空いた手で羽毛布団を跳ね除け酸素を肺いっぱいに吸い込んだ。荒れ狂う心音が響き渡りそうなほどの静寂を湛えた初夏の朝、天祥院英智はかつてないほどに朔間零を意識していた。意識せざるを得なかった、今や零のあらわな痩身は英知の全身に寄り添っていた。自分のものではない体温が、感触が、呼気が、誰にも許した事がないほど近しい距離に、当たり前のように存在している。それはひどく恐ろしく、また気味が悪いくらいに悦ばしかった。
    「朔間くん、」
     結局英智がようやく不法侵入者の肩を揺さぶったのはそれから三十分が経過した後の事で、再び反対方向へ寝返りを打った零がすっかり傍を離れてこちらへ背を向け、あの類稀な歓喜を催す熱や肌心地や吐息を感じられなくなって、謎めいた前後不覚の恍惚感が尾を引きながらも引いた頃、やっと我に返る事が出来たのだった。あれだけ大騒ぎしていた心臓も平静を取り戻しやや駆け足ではあるものの正常な速度で脈打っている。やたらに渇く喉へ僅かな生唾を押し込んで、もう一度夢の淵に横たわる魔物の名を呼んだ。既に二人の他に人はいないのだからクローゼットへ一走りしてまともな衣服を身に纏ってから起床を促すのが賢明だったが、何だか目を離した隙に取り返しのつかない事態に見舞われるような、所以なき不可解な悪い予感に取り憑かれて寝台を下りられずにいた。
    「朔間くん、起きてよ」
     魔物の王は目蓋を堅く閉ざしたまま眉根を寄せて低く唸り、横向きから仰向けへと体勢を変え、裸の片腕で視界を覆った。「……まだ夜でもなかろうに、邪魔をしないでおくれ、天祥院くん」
     寝惚けて掠れた声でのんびりと、しかし鬱陶しげに英智に拠って齎された目覚めを拒絶するものだから、先刻まで胸の内を満たしていた溢れんばかりの慈愛に似た思慕は瞬く間に霧散して、思い通りにならないものへの不満と苛立ちばかりが残った。大体これは骨組みから布生地まで徹頭徹尾自分のベッドなのであって、かつて英智を苦しめた老獪な吸血鬼が無礼にも一糸も纏わずに平然と横たわっているべき場所ではないのだ。ここは天祥院英智が支配する領域である、そこへ足を踏み入れた者は誰であれ自分に敬意を払い、少なくとも遠慮をし、更に何をされたとしてもどんな目に遭ったとしても自業自得、一つの文句を述べる権利すらないのだ。そういう憤懣がふつふつと胃の府から迫り上がる勢いに任せて半身を起こし、零の痩せた双肩を掴んで一層強く揺すぶった。
    「ねえ、朔間くん。この僕が起きろと言ってるんだよ、早く起きてよ。大体そんな恰好で人のベッドで寝てるってどういう事? いくら自称吸血鬼だと言ったって、さすがに常識を疑うよ。今からどういう目に遭わされても文句は言えないからね。例えばここから蹴落とされたって、素裸のまま蹴り出されたって、君に僕を責める資格はこれっぽっちもない。解ったらとっとと起きて、状況を釈明するなり自分のベッドに帰るなりしてくれないか」
     低く、淡々と、しかし確たる脅迫の念を込めて言い含めると、零はむずかる幼児の仕草で何度か小さく首を左右に振って、ようやく重たげに目蓋を押し上げた。朧ろに霞む涙のベール越しに魔的に艶いた紅玉が覗き、やがてみるみるうちに丸くなっていく。二つの瞳はまっすぐに、彼自身の両肩をがっしりと掴んで覆い被さっている素裸のルームメイトの姿がまざまざと映し取っていた。そしてまた、一糸纏わぬ裸身を晒しているのが皇帝陛下だけではない事を、半分ずり落ちた掛布の内側で擦れ合う肌の表にありありと思い知らされていた。矢継ぎ早に襲い来る衝撃と困惑で睫毛の一本さえ動かさなくなってしまった夜闇の魔物のいじらしい満面を辛くも保った笑顔で見下ろしながら、どうやらこの男も記憶を失っているか或いは何が起こったのか知る由もないのだろうということを即座に察し、先手を打とうとしたが先に口を開いたのは零の方だった。
    「天祥院くんは、何故、素裸で素裸の我輩を押し倒しておるのかのう……」
    「奇遇だね朔間くん、僕もその理由が知りたかったんだ、だからこうして痛む心を押し殺して夜型の君を無理やり叩き起こしたんだよ。ねえ、どうして君は素裸で僕のベッドに──」
     今度も英智は終いまで言葉を言い終える事が出来なかった。乱れた純白の敷布の上に緩やかにうねる漆黒の曲線を踊らせ、真っ赤な双眸を悩ましげに揺らす憐れな吸血鬼を揺さぶり起こした姿勢のまま、皇帝陛下は背後で扉が開く音を聞いた。
    「天祥院先輩、あの、おれ先輩に紅茶を淹れたんですけど……」
     勿論白鳥藍良も失った言葉尻を未来永劫取り戻す事はなかった。片手に湯気を立てるティーカップを携えて、親切で献身的な笑顔を浮かべたきりセメントの塊のようになってしまった後輩を振り向いて、英智は何となく、もう自分には失うものなど何もないのではないかと真剣に考えた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭💒❤💖💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    GoodHjk

    DONE【渉零】新衣装の話
    天性回遊 でも、つかまえて『夜のご殿』を出たとたん、青い鳥はみんな死んでしまいました。
     ──モーリス・メーテルリンク『青い鳥』




     ひと言で言い表すならば洗練された、瀟洒な、或いは気品溢れる、いずれの賛辞が相応かと択ぶに択ばれぬまま、密やかに伸ばした指先で、コートの広い襟をなぞる。緻密に織り込まれた濃青色の硬質な生地は、撮影小道具であるカウチの上に仰向けに横たわる男の、胸元のあたりで不審なほどに円やかな半円を描き、さながら内側に豊満なる果実でも隠し果せているかのように膨らんでいる。指先を外衣のあわせからなかへと滑り込ませると、ひと肌よりもいっそう温かい、小さな生命のかたまりへと触れた。
     かたまりが震え、幽かな、くぐもった声で抗議をする。どうやら貴重な休息の邪魔をしてしまったようだと小声で詫びを入れれば、返ってきたのは、今し自堕落なそぶりで寝こけていた男、日々樹渉の押し殺した朗笑だった。床にまで垂れた薄氷の長髪が殊更愉しげに顫えている。この寝姿が演技ならば、ここは紛れもなく彼の舞台の上であり、夕刻になって特段用もなく大道具部屋へ赴く気になったことも既に、シナリオの一部だったのだろう。
    1993

    recommended works

    MicroMoon微月

    DONE*メル燐长篇剧情向连载

    *原著世界观基础上的架空设定,早就把大纲写好了,为了不被剧情打脸,所以把计划提前了

    *破镜重圆pa,前期dk校园恋爱,后期追梦娱乐圈(bushi),一定程度上会和游戏剧情有关联,但是推荐还是把它当作架空世界观来看
    【メル燐】春蚕(3)  06.

      “啦啦啦啦~”椎名丹希下班推门而入时看到的最令他一生难忘的一幕,莫过于天城燐音居然一边哼着歌,一边穿着那条滑稽的粉红色围裙站在锅旁炒菜做饭的开心模样,燐音的听觉一直很敏锐,因此就算是在嘈杂的厨房之中,他仍旧清楚的听到了他开关门走路的声音,“丹希亲回来啦,快去洗手准备吃饭~”

      “……”椎名丹希听着天城燐音说的话莫名感到一阵恶寒,他下意识的搓了搓手臂上莫须有的鸡皮疙瘩,在观察了天城燐音的背影好久之后,这才把手中去超市买来的打折特价菜放入冰箱里,然后准备去打探打探这个家伙目前到底是个什么情况。

      正所谓有句俗话说得好,无事献殷情非奸即盗,能让天城燐音这个无良混蛋献殷勤成这样,估计他又在外面给他捅出了一大堆的篓子,而且八成没有半分悔改,这样想着,椎名丹希在心里做足了心理准备,生怕从天城燐音的嘴中吐出什么语出惊人的话,谁知在对方把两人份的饭菜都摆好了后,他却什么都没说,反而反常的开始在饭桌上一边吃饭一边玩起手机来了。
    13547