思い出すまでふ、と意識が浮上する。
腕を動かすと、素肌にシーツが当たる感触。
ぼんやりと目を開けると肌色が目に入って、驚いて飛び起きる。
するりとシーツが肌を滑り、素肌が露になって、ウィラは慌てて滑り落ちたシーツをかき抱いて体を隠した。
なぜ、なぜと疑問が思考を埋めつくす。
なぜ──服を着ていないのか。
「おや、目が覚めたかな」
突然かけられた声に驚いてウィラはそちらに視線を向けた。
そこにいたのは、濡髪をタオルで拭きながらこちらに近づいてくる白髪碧眼の男──ジョゼフ。
「昨夜は無理をさせたから…まだつらいなら寝ていていいんだよ」
そんな言葉をこちらに投げかけながら、ジョゼフは笑みを浮かべ、ゆっくりと近づいて来る。
ウィラはそこから距離を取るように、体をずらしながら思考を巡らせる──が、自分の記憶は試合の途中で途切れている。それが、なぜこのようなことになっているのかがさっぱり思い至らない。
「…どうしたかな」
不自然に距離を取るウィラを怪訝そうな顔で見つめ、ジョゼフはベッドの端に腰掛けてウィラに手を伸ばした。
その手が自分に触れる前に、ウィラは叫ぶように切り出した。
「…ごめんなさい、あの…どうして、貴方がここに?」
その言葉に、ジョゼフの動きが止まる。
「どうして…とは?」
「私、昨日の試合の途中から…記憶が、その…」
「忘れた、とでも言うのかな」
ジョゼフの眉が怪訝そうに歪められ、視線がウィラを射抜く。居た堪れなくて、ウィラは目をそらした。しかし、どう頑張って思い出そうとしても、昨夜の試合の後から記憶がない。
「──そう」
ため息にも似た呟きのあと、ジョゼフの手がウィラの頬に触れる。
「君が忘れたと言うのには慣れたつもりだったけど」
ジョゼフがウィラとの距離を詰める。ぎしり、とベッドが軋んだ。
「やっぱり傷つくな…」
親指の腹でゆるりと頬を撫でた指は首筋、鎖骨を滑り、胸元へ降りていく。その箇所がかっと熱くなり、じんと痺れるような感覚が全身へ伝播する。
くらくらするような恥ずかしさから、ジョゼフの手を掴む──が、そのまま手首を掴まれてベッドに押し倒されてしまった。
「昨夜の再現をすれば…思い出すかな」
そう言ってジョゼフはウィラを見下ろし、妖艶な笑みを浮かべた。