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    きたまお

    @kitamao_aot
    なんでもいいから書いたもの置き場。
    脳直に書いたら見直し一切せずにおいています。

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    きたまお

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    のろける団長が書きたかったがあまりのろけなかったエルリ

    ##エルリ
    ##進撃

    狂犬だとか野良猫だとか言われていることは承知していた。否定する気にもなれない。地下街ではたまたまファーランとイザベルとつるんでいたが、もともとひとりが性に合っている。
     だが、世の中には物好きがいるもので、その最近入った狂犬とやらを見てみたいという御仁があらわれたそうだ。キースの部屋に呼び出され、渋面を作った団長直々に「一日だけある方の護衛を頼みたい」と言われた。
    「調査兵団は壁の外に行くのが仕事じゃねえのか」
     腕を組んだまま言う。机に肘をおいたキースがため息をついた。
    「そう言うだろうとは思っていたが、有力な後援者のご機嫌をとるのも必要なことだ」
    「俺はたまたま立体機動装置を使いなれて、巨人をそぐのがうまいだけだ。壁内で人間相手に手加減するなどできねえ。殺しちまう」
     事実だから仕方がない。殺すことは慣れていても、殺さないように手加減することは慣れていない。
     もう一度キースがため息をついて、顔を斜め上にあげた。視線の先にでかい金髪の男が手を背中側に組んで立っている。エルヴィンは大きな目をリヴァイに向けて口を開いた。
    「調査兵団の仕事は壁外を巨人から人類の手に取り戻すこと。壁外調査はその一環であり、壁外調査には金がかかる。そのためには壁内での資金調達も必要になる」
     リヴァイがにらみつけてもエルヴィンの視線は揺らがない。
    「また、殺してしまうというのは問題だ。力で押すだけが戦い方ではない。手加減をしろというのではない。正しい技術を身につけろ」
     口の中で小さく舌打ちしてから、リヴァイは了解だ、と答えた。視界の端にキースが目を見開いている姿が映った。

     仕事自体は大したものではなかった。そもそもお貴族さまだ、調査兵団の狂犬に本気で護衛などやらせるつもりはないだろう。憲兵団あがりらしい屈強な護衛を連れていた。リヴァイは見世物の扱いだ。
    「おや今日は珍しい方を連れていらっしゃる。調査兵ですか?」
    「最近、調査兵団に入ったものですが、これがめっぽう強い。三回の壁外調査ですでに巨人討伐数十三というから驚きでしょう」
    「ほう、こんなに小柄なのに巨人より強いとは意外ですな」
     貴族たちがリヴァイをじろじろと上から下まで見回す。視線を絡みつけたのち、貴族は鼻をならし、仲間内だけで口元をだらしなくゆるませた。
     不快だ。
     一日の最後は、その貴族の主催する夜会だった。貴族の護衛に、会場の隅で目立たないようにしていろ、と言われた。もとよりそのつもりだ。油をふんだんにつかった食べ物と、貴族の体臭と香水の混ざり合った広間に足を踏み入れようとしたら護衛にとめられた。
    「まて、おまえは武器を所持しているだろう。それはおいていけ」
    「あ?」
     持っていると言っても、ジャケットの下のホルスターに使い慣れたナイフ、ブーツに隠れるふくらはぎに小型のナイフを忍ばせているだけだ。
    「護衛が武器をもたねえでどうする?」
    「会場に入るには武器をすべておいていく決まりだ。それとも調査兵団というのは、刃物で巨人をそぐしかできない無能のあつまりか?」
    「その巨人をそぐことすらできずに、貴族の私兵になった腰抜けはどこのどいつだ」
     護衛の顔に朱がさした。肩を怒らせて、リヴァイに一歩近づく。いつでも飛びかかれるように、リヴァイは膝を軽くまげて身体を前掲させた。
    「失礼」
     後ろから声がかかり、肩に重みがかかった。
    「このものは危険と隣り合わせの環境で育ってきたので、武器を身から放すことに慣れていないのです」
     両肩に大きな手がおかれていた。聞き慣れた低い声が頭越しに護衛に向けられている。振り仰ぐと、力強い青い目があった。
    「リヴァイ、ホルスターのナイフを彼に渡すんだ」
    「……了解だ、エルヴィン」
     リヴァイは懐に手をいれ、ハーネスにとりつけてあるホルスターごと外した。そのまま護衛に渡す。護衛は口を半開きにしてそれを受け取る。
     あえて場所を指示をしたのは、ブーツの中のナイフは渡さないでいいということだ。見上げると、エルヴィンが無言でうなずいた。
    「分隊長。ずいぶんとそのゴロツキをしつけてあるんだな」
     野卑な声にもエルヴィンは平静どおりに返す。
    「彼は野生動物と同じでね、強いものの言葉しか耳に入らないのです」
     ふたたび護衛のこめかみに血管が浮いたが、エルヴィンはそのまま黙って会場にリヴァイを押しこんだ。
    「おまえ、なんでここにいる」
    「団長の付き添いでね。こういう会はおっくうなんだが」
     いつもの兵服ではない。夜会用のフォーマルな黒の上下だ。
    「あと、ああいう手合い相手におまえが暴れないように監視しにきた」
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    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん2今日の現場も一人で死亡した老人の住まいだった。大きな庭のある戸建ての二階で老人は死んでいた。老人には内縁の妻がいたが、折り悪くその妻は姪と一緒に十日間の海外旅行に出かけていた。家の状況から見て、老人は内縁の妻が旅行にでかけた初日の夜に倒れたようだった。さらに悪いことに、寒がりの老人は自室の暖房を全開にしていた。
     年齢のわりに老人は身体が大きかったようだ。ベッドに残された痕跡でそれを知ることができた。おそらく老人はリヴァイよりも二十センチ以上は背が高い。二階の部屋は天井が傾斜していて、ベッドは天井が低い方の壁にぴたりとくっつけておかれていた。
     リヴァイが最初にやることは、遺体のあった場所に手をあわせることだ。神も仏も信じてはいないが、これだけは行う。手をあわせているあいだはなにも考えていない。一緒に仕事に入ったことのある同僚には経を唱えたり、安らかに、などいうものもいたが、リヴァイは頭をからっぽにしてただ手をあわせる。これはもう習慣だった。
     後輩と一緒に、まずマットレスを外す作業をした。いくらかはまだ生きている虫がいる可能性があるので、殺虫剤を全面に散布する。動くものがなくなったこ 1271

    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん「先輩はどうしてこの仕事についたんですか」
     行きの車の中で無邪気に後輩が聞いてきた。最近入ったこの後輩は、始めは短期アルバイトの大学生だったはずが、気がつけば正社員として登用されていた。なんか、これがオレの天職だって気がついちゃったんですよね、と大声で事務員に話しているのを聞いたことがある。
     リヴァイはウィンカーを一瞬出して隣の車線に割り込みながら、ぼんやりと答えた。
    「別にやりたくてやったわけじゃねえよ。たまたま、クソみたいな伯父が便利屋をやっていて、そのクソが仕事だけ受けて逃げ出した尻拭いであばらやの清掃に入ることになって、そこからまあたまたまだ」
     母の兄である伯父には、昔からいろいろ迷惑をかけられてきた。便利屋の仕事を借金とともに押しつけられたのが、最たるものだった。
     最初から特殊清掃だったわけではない。ゴミ屋敷の片付けなどを行っているうちに、割のいい仕事として特殊清掃ももちかけられた。六月にベッドで死亡して、一週間発見されなかった老人の部屋の清掃だった。遺体はすでに警察が持ち出していたがベッドには遺体のあとが文字通り染みついていた。床や壁にこびりついている虫を片付けると 674

    きたまお

    TRAININGエルリワンライの没軽くブラシをまわすと、面白いように泡が立った。その泡をブラシの先端にとり、リヴァイが無言であごをしゃくった。上を向けということだろう。
     もみあげから下、あごの先に向けてブラシが小さな円を描くように動いていく。なめらかな動きの中で、ブラシと肌の間に泡が立っていくのがわかった。すこしこそばゆく、しかし気持ちがいい。
     カミソリの扱いは慣れたもの、あっというまに泡をぬぐうように刃があてられて、エルヴィンの無精ひげは姿を消した。最後にぬるま湯の入った桶を寄せられ、身体をうつ伏せに倒せと言われた。
    「すすぐくらいは左手だけでも可能だとおもうんだが」
    「おまえにやらせたら、ベッドが水浸しになりそうだ」
     顔をすすぎ終わり、乾いた布で水分を拭き取るまでリヴァイの世話になった。
    「自分であたるよりも、ずっといいな」
     エルヴィンはすべすべになった自分のあごに手を触れる。
    「以前から、おまえのそり残しは気にはなっていた」
     ひげそりの準備は、エルヴィンが目を覚ます前からやっていたらしい。目を開けたらちょうど、至近距離にリヴァイがいて、手にしていた石けんを取り落としそうになっていた。すぐに医師が呼ばれ、 1958