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    きたまお

    @kitamao_aot
    なんでもいいから書いたもの置き場。
    脳直に書いたら見直し一切せずにおいています。

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    きたまお

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    某キッズ向けアニメの、ドアマンx派手な帽子のおじさん。

    彼はいつもやかましい子を連れている。この街の人たちは全体的に子供に甘いので、彼の連れている子のいたずらもにこにこ見過ごしている。もちろん私もだ。私の愛犬だけは、子供のいたずらには厳しいが、愛犬もたまにほだされてしまっている。
    「やあ、おはよう」
     エレベータから降りてきた彼の子にわたしは挨拶した。子は無言で手を振って返す。そのまま、一人でドアを開けて出て行ってしまった。
     時計を見ながら、あと三分かなと思う。はたして、二分経過したところで、エレベータが開いた。
    「ああ、ドアマンさん、うちの子を見なかったかい?」
    「さっき、元気に外に出て行ったよ」
    「外に行っただって? ああ、とんでもないことに。ありがとう!」
     ドアの外に行こうとする彼の腕をつかんで、私はエレベーター脇のものかげに連れこむ。
    「ハニー、昨日も私は待っていたんだよ。何時になってもいいと言っただろう」
    「ダーリン、すまない。昨日も遅くまでいたずらの始末におわれてしまって」
     私の手で壁に押しつけられたまま、彼は顔を背ける。
    「またか。なあ、言いたくないんだが、きみひとりであの子を見るのはもう限界だ。例の博士が育てたがっているんだろう? 彼女に預けることを考えてもいいんじゃないか」
    「……その話はまた今度。いまはとにかく追いかけないと」
     私は彼をおさえていた手を離した。彼は、じゃあ、と小声で言い、派手な帽子を目深にかぶって駆け出す。
     ガラスドアの外に消えていく彼の背中を、私は一抹の不安とともに見送った。私の積極的アプローチで始まった仲だが、いまだにふたりの気持ちの差は埋まらない。
     くうん、と鳴いて、こちらを見あげてくる愛犬に、私は心配ないよ、と微笑み返した。
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    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん2今日の現場も一人で死亡した老人の住まいだった。大きな庭のある戸建ての二階で老人は死んでいた。老人には内縁の妻がいたが、折り悪くその妻は姪と一緒に十日間の海外旅行に出かけていた。家の状況から見て、老人は内縁の妻が旅行にでかけた初日の夜に倒れたようだった。さらに悪いことに、寒がりの老人は自室の暖房を全開にしていた。
     年齢のわりに老人は身体が大きかったようだ。ベッドに残された痕跡でそれを知ることができた。おそらく老人はリヴァイよりも二十センチ以上は背が高い。二階の部屋は天井が傾斜していて、ベッドは天井が低い方の壁にぴたりとくっつけておかれていた。
     リヴァイが最初にやることは、遺体のあった場所に手をあわせることだ。神も仏も信じてはいないが、これだけは行う。手をあわせているあいだはなにも考えていない。一緒に仕事に入ったことのある同僚には経を唱えたり、安らかに、などいうものもいたが、リヴァイは頭をからっぽにしてただ手をあわせる。これはもう習慣だった。
     後輩と一緒に、まずマットレスを外す作業をした。いくらかはまだ生きている虫がいる可能性があるので、殺虫剤を全面に散布する。動くものがなくなったこ 1271

    きたまお

    TRAINING特殊清掃員のりばいさん「先輩はどうしてこの仕事についたんですか」
     行きの車の中で無邪気に後輩が聞いてきた。最近入ったこの後輩は、始めは短期アルバイトの大学生だったはずが、気がつけば正社員として登用されていた。なんか、これがオレの天職だって気がついちゃったんですよね、と大声で事務員に話しているのを聞いたことがある。
     リヴァイはウィンカーを一瞬出して隣の車線に割り込みながら、ぼんやりと答えた。
    「別にやりたくてやったわけじゃねえよ。たまたま、クソみたいな伯父が便利屋をやっていて、そのクソが仕事だけ受けて逃げ出した尻拭いであばらやの清掃に入ることになって、そこからまあたまたまだ」
     母の兄である伯父には、昔からいろいろ迷惑をかけられてきた。便利屋の仕事を借金とともに押しつけられたのが、最たるものだった。
     最初から特殊清掃だったわけではない。ゴミ屋敷の片付けなどを行っているうちに、割のいい仕事として特殊清掃ももちかけられた。六月にベッドで死亡して、一週間発見されなかった老人の部屋の清掃だった。遺体はすでに警察が持ち出していたがベッドには遺体のあとが文字通り染みついていた。床や壁にこびりついている虫を片付けると 674

    きたまお

    TRAININGエルリワンライの没軽くブラシをまわすと、面白いように泡が立った。その泡をブラシの先端にとり、リヴァイが無言であごをしゃくった。上を向けということだろう。
     もみあげから下、あごの先に向けてブラシが小さな円を描くように動いていく。なめらかな動きの中で、ブラシと肌の間に泡が立っていくのがわかった。すこしこそばゆく、しかし気持ちがいい。
     カミソリの扱いは慣れたもの、あっというまに泡をぬぐうように刃があてられて、エルヴィンの無精ひげは姿を消した。最後にぬるま湯の入った桶を寄せられ、身体をうつ伏せに倒せと言われた。
    「すすぐくらいは左手だけでも可能だとおもうんだが」
    「おまえにやらせたら、ベッドが水浸しになりそうだ」
     顔をすすぎ終わり、乾いた布で水分を拭き取るまでリヴァイの世話になった。
    「自分であたるよりも、ずっといいな」
     エルヴィンはすべすべになった自分のあごに手を触れる。
    「以前から、おまえのそり残しは気にはなっていた」
     ひげそりの準備は、エルヴィンが目を覚ます前からやっていたらしい。目を開けたらちょうど、至近距離にリヴァイがいて、手にしていた石けんを取り落としそうになっていた。すぐに医師が呼ばれ、 1958

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