きょさとパロディside k
「僕に相談されても、僕は何も言えませんよ。」
油絵の修復家である岡聡実は、俺の恋人である。いつも東京と大阪で離れて暮らす俺たちだが、今日は諸用があり、彼を車で迎えに来た。
外は暑く、聡実くんの白い額が光り、前髪が貼り付いている。車から出て、その額に掛かった前髪を指でそっと払った。彼は汗っかきなのである。元々、体温から高いのだろう。赤児のように生のエネルギーが身体に凝縮されていると思う。
「ごめんな、呼び出して。待たせたか?」
助手席を開けると、ありがとうございます、と律儀にお礼を言い、聡実くんは乗り込んだ。
自分も運転席に乗り込んで、シートベルトをすると、聡実くんは先程の話を続けた。
「組長さんからの依頼って絵のことでしょう? 価値とかも付けられませんよ、僕。僕の仕事ちゃうから。」
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