【陽だまりの窓辺】 *
「時計の……この長い針が一周するまで、ひとりで遊んでいてくれるか?」
「………………」
逡巡したのちにこくんと頷いた頭を撫で、小慣れた動作で額へキス。人形と目線を合わせるように膝を折っていた彼は立ち上がる。立ち上がりがてら棚の天辺へ置いたラジオを操作し、陽気な音楽が流れるチャンネルへと摘まみを合わせていた。多少なりとも、幼いあの子の孤独感がまぎれるように。そんな親友の優しい気遣いは、いつまで経っても変わらない。
そうだね、主人はこれから番匠たちと大事な打ち合わせがある。甘えん坊でひっつき虫のお人形は、込み入った話をする場には不適切だ。小さな君は大好きなご主人様の邪魔なんてしないのだろうけど、ごめんね。姿を僕に似せてしまったからこそ、大切に仕舞わねばならない時がある。
16333