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    be_cocoon

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    目標:12/23あたりまでに書き終わる(甘々)

    終業式通学路の紫陽花が、枯れたまま半年もそのままになっているのを見て、この花は茶色く変色してもそう簡単には落ちてしまわないのだということを初めて知った。そもそも花弁に見える部分は実は花ではなく萼であるという話を見たことがあるような気がする。確か、そうだ。小さい頃に母親から買い与えられた図鑑で見た。
     確かに梅雨の時期には鮮やかな紫であったはずのものをちらりと見ながら通り過ぎる。去年だって一昨年だってこの通学路を通っていたはずなのに、その存在に全く気がついていなかった。過去の自分は、一体何を思いながらここを歩いていたのだろう。そんなことを考えていると、視線に気がついたのか横を歩く百瀬が「あじさいだねえ」と右手に持つスコップで枯れた花……萼、を指した。
    「紫陽花だったものだな」
    「いまでも紫陽花でしょ」
     もっともなことを言いながら、百瀬は紫陽花に近づいていく。葉は全て落ちているのに紫色だった部分だけ丸いまま残っていて、よく見ると気味が悪い。茎は水分を失って、痛々しかった。
     金髪の真ん中につむじが見えるなあ、とぼんやり百瀬の後ろ姿を眺めていると、不意に百瀬はスコップと左手を使って枯れた紫陽花を一朶、細い茎から引き剥がした。あまりに一瞬だったので、止める暇もなかった。
    「は!? お前、何して……」
     枯れているとはいえ、住宅街の中にあるのだから誰かの持ち物である可能性だって十分にある。いや十中八九この紫陽花が植っている塀の向こうの家のものだと思うのだが……。紫陽花に近づいた時点で止めるべきだった。いやそもそも、校舎裏の使われていない倉庫からスコップを持ち出してきた時点で止めるべきだったのだ。百瀬ならばまあそういうこともあるかと流さず意図を聞いておくべきだった。
     いや、意図は一応聞いてはいるのだけれど。
     百瀬は萼の集合体を茎の切り口から持つと、腕を伸ばして俺の眼前に晒した。一瞬、視界がセピア色に染まる。
     うわ、と後ずさる俺を百瀬は特に気にせず、空いた歩幅を躊躇わずに縮めてくる。そうして、いつもの笑顔で言った。
    「星野、これも埋めよう!」
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