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    引っ越し

    📛×👮‍♂️あの人を意識したのがいつだったかははっきりとは覚えていない。

    ただ、何と無く好ましくは思っていた。

     

    「あっ!ヒロさん」

    「おー冥せんせ。仕事どうだ」

    「はい!楽しいです!」

    「そうかぃ、そりゃあ良い。今度良い話がありゃ教えてくれよ」

     

    ヒロさんはこの地域で大人気のお巡りさん。

    出会って数年、笑顔が可愛らしくて、先日初めて歳を聞いてビックリした。

    同い年くらいか少し年上かと思ってたら10も年上だった。

     

    しかも高校卒業後にすぐ警察学校へ入って社会人になったと聞いたので、社会人になってからも凄く長くて、とても頼りになるひとだった。

     

    「そういえばよぉ玄が仲直りしてぇみたいだから、申し分けねぇが折れてやっちゃぁくれねぇか?」

     

    首を少しだけ傾げる姿が凄く可愛い!

    最初は少し怖かったんだけど、ちょこちょこ声をかけてくれて、子猫を抱っこした時の子供みたいな笑顔とか、保護者に詰め寄られてタジタジしてる所とか、ギャップが凄いんだよね。

    カッコいいと可愛いが共存してて、本格的に彼に好意を抱いたのは、保育園にナイフを持った男が乱入してそれを彼と玄が取り押さえてくれた時だ。

    顔中二人とも傷だらけで彼は男が逮捕された後に僕に園児と先生に傷がないのか聞いてきて、僕が震えながら貴方のおかげで誰一人傷はないですとと伝えたら。

    今まで見たことないくらいに嬉しそうに可愛い笑顔でニコッと笑ってポロっと涙を流した。

     

    その姿にグッと来てしまって。

    胸がドキドキして、先生達には吊り橋効果だとか言われたけど、もうヒロさんだけ違って見えるって言うか、いろんな人がいてもヒロさんだけ輝いて見える

     

    ちなみに今回の玄との喧嘩(?)も玄からちょっとでも先輩に声をかける機会をつくってやるよとしてくれている事なので、はっきり言って八百長だ。

    心配してくれたのにヒロさんごめんなさい。

     

    「仲直りしてきたら話聞いてくれますか?」

    「俺みてぇなおっさんで良いなら聞いてやんよぉ、後輩に俺の連絡先冥先生に教えとくように伝えとくわ、とっそろそろ時間だな。んじゃまた明日」

    「はい!」

     

    今日も凄くカッコ良かった。

    それなのに何であんなに笑顔が可愛いのか!

    あー、好きだなぁ

     

    「せんせぇ!今日もおまわりさんカッコいいねぇ」

    「そうだねぇ」

     

    保育園の子達も先生達もここに通ってくれるお巡りさんが大好きだった特に今いる子供達はお巡りさん二人が本当に自分の身体を張って自分達を守ってくれたのを知っているからもう、お巡りさんと結婚するとこの園の女の子の五割は言っている。

    でもやはり人気は玄でヒロさんは自分をおじさんとかおっちゃんとか言うので少し人気が低い。

     

    「玄お兄ちゃん来てないの?」

    「そうだね。今日はヒロさんだけみたいだね」

    「ねえねはげんにぃにのほうがちゅき?」

    「うん、しのぶは?」

    「ちのぶはげんにぃにとけっこんちゅる」

    「はははっ二人とも玄武さんの方が好きなの?」

    「「うん!」」

     

    胡蝶さんちの美人姉妹はどちらも玄狙いなのか

    これは男の子達が泣くだろうなぁ

    男の子人気はヒロさんの方が圧倒的に高くて

    将来ヒロさんみたいな警察官になると皆が敬礼の練習をするのでヒロさんは照れ臭そうにしていた。

    その照れた顔がまた可愛いんだよねぇ

    いや、分かってんるだけど、今の僕、完全に痘痕も靨状態だよね。

     

    何見ても何してても可愛いしカッコ良く見えちゃうんだもんなぁ

     

    問題は多分ヒロさんが僕の気持ちに気付いているのかいないのか分からないが、物凄く結婚と子供を持つことを勧めてくる事だ。

     

    でも玄にも凄い勧めてるし、酔うといつも僕らに二人が家族に囲まれて幸せに暮らす姿が見たいなんて言ってくる。

     

    牽制なのかもしれないし、本当に年頃のおじさんが口癖のように言うあれなのか?

     

    いまいち良く分からないんだよね。

     

    手を握っても、んっ?みたいな顔でこっちみてニコってしてくるし、先に進みたいんだけど、二人で飲みに行くのはOK、でも遅くなる前に帰されるんだよね。

    玄が言うには男にも女にも滅茶苦茶モテるらしいんだけど、誰とも付き合ってないらしいんだよね。

    でも、ホモにもレズにも寛容で署内のそう言った性癖の人を守ってくれるそうだ。カッコ良すぎる。

     

    でも好きって言っても気付いてないのか、躱してるのか友愛にとられちゃうんだよね

     

    食事に誘うとお金出させてくれないから、誘い辛いんだよね

     

    ふぅっと、息を付いて園児を集めて室内に戻ると園長やさよ先生が布団を敷いて待っていてくれたので寝たがらない子供もひょいと抱え上げて布団の上に運んぶと不満そうな声がいろんな所からする。

     

    「あらあら、皆ちゃんと寝れないの?困ったわねぇ悪い子はお巡りさんに嫌われちゃうわねぇ」

    「そうですねぇ、私お巡りさんに皆が悪い子だってお伝えしちゃいますもん!嫌われちゃいますねぇ」

     

    園長達の会話に不満そうな声を上げた子供達は大急ぎで布団に潜り込んでいく。

    全くお巡り様々だなぁ

     

    「ちゃんとお昼寝出来てますから、良い子達ですよ」

    「あら?本当ね、いつの間にか皆おねんねしてるわ!気のせいだったのねぇ」

    「あら、じゃあお巡りさんには皆良い子だからナデナデしてくださいって伝えないとね」

     

    わっと布団が楽しそうに膨らんで、園長の起きてたのかしらの一言でスッと静かになったので、大人皆で笑ってしまう。

     

    しばらく様子を見ていたが、子供達から寝息が聞こえ始めると、教室の端に机を出して子供達の連絡帳にしっかり呼んで返事を書いていく。

    どの先生も教室で同じことをしているだろう。

     

    園児のノート一冊づつしっかりと読み込んで、丁寧に丁寧に返事を書いていく。

     

    ヒロさんの姪っ子の寿美ちゃんのノートには今日はヒロさんが書いてくれたんだろう妙に角張った字についにっこり笑ってしまう。

     

    「ヒロさんらしいなぁ」

     

    書いてあることは、昨日の夜から今日の朝までの食事とか相談事とか、本当にお母さんみたいなのに。姿が凄く可愛い、いや格好良い。

     

    子供達の寝息を聞きながら何を考えているんだろうと、手を止めて真面目にお返事を書いていく。

    今日後一回くらい会えたら良いんだけど。

     

     

     

    「めーい!こっちこっち」

     

    大きく手を振ると大きな身体をぐるんと回してこちらの顔を確認するとパッと表情を明るくして冥が急いで歩いてくる。

     

    「玄!お待たせ」

    「待ってないっすよ~。今日のお店食べ放題だから期待しててくださいよ~」

     

    二人で並んで歩くと周りの人がチラチラとこちらを見てくるが、俺も顔の中心に結構深い傷もあるし、冥も身長が220以上あるから、妙に目立つのは良く分かる。

     

    「冥から誘ってくれるなんて久しぶりだよな!」

    「誘ったの僕なのに、お店探してくれてありがとうございます」

    「いーのいーの!俺が行きたかった店だから」

     

    二人で並んでお店には入ると個室で少し驚いている冥を座らせて俺も席に着くと、冥は少しもじもじしている。

     

    「何飲む?」

    「えーと、玄は明日は?」

    「休み!冥もだろ?お互い飲もうぜ」

    「じゃあカシオレ」

    「すいません!カシオレ一つと生中ひとつ!」

     

    二人でモグモグ食べながら最初は普通の話をしていたんだが、どうやって先輩の話を引き出そうかと思ったんだがなぁ

    これは言いたくて仕方ない感じかなぁ?

     

    「で、冥はどこまで行ったのかな?」

    「えっ?」

    「先輩の事」

    「そうだ!玄に聞きたかったんだけど!ヒロさん酔うとあんなに可愛くなるの!?」

     

    ぐっと前のめりに伝えてきた冥にちょっと仰け反りながら考える。

    可愛いだと?

    グダグダ絡み酒で、でも相談事を聞いてくれる時の顔は優しくて可愛いか?

    いやでも、そんなに言うほど可愛いか?

     

    「酔った時に傷、触らせて貰ったんだけど…こう、親指で目の下を擦るみたいに触ったんだけど、目を細めてふにゃって笑いながら掌にすり寄ってきて悲鳴嶼さんって言われて、可愛すぎじゃない?」

     

    そんな可愛い事したことあったか?

    そんなこと無いよね。

    傷触らせて貰えた事なんてないし。

    これってもしかして、希望アリじゃない?

    真っ赤な顔で話す冥は可愛いけど、もしかして先輩が幸せになれるかもって方が俺としては凄く嬉しい。

    昔から何故か知らないけど、先輩最初に会ったその時から、運命みたいなの感じて、先輩が幸せから必死に遠ざかるさまを見る度に凄く辛くて、先輩が幸せになって欲しくて欲しくて仕方ないんだよね。

    あっ運命って言うのは恋愛的な意味じゃない。先輩みたいなガチムチの男は俺的に好みじゃない。

     

    「冥、先輩が俺の前でそんなことになったことはない。これは行けるぞ!捕まえろ!」

    「本当?」

    「マジだよ!先輩酔っても絡み酒なだけだからさ!俺もそんな先輩見たことないもん」

     

    全然想像つかないけど!

    先輩が年下の冥に甘えるって凄いことだけど!

    匡近先輩ももっと甘えて良いんだよと先輩に言ってたから、甘えることも無いんだろうし。

     

    「冥!良く聞け!先輩は自分が幸せにはならないと決めてる!だから、お前が押すしかないんだよ!ずいずいと押さないと、先輩は幸せから遠ざかろうと逃げるぞ!絶対!!!!」

     

    多分だけど、先輩は幸せになると倍以上の辛いことが起きるとか、俺の傍に居るやつは幸せになれないと決めつけているところがある。

     

    酔っている時に聞いたら自分の傍には鬼が出るとか何とか。

    良く分からないけど、先輩視える人なのかな?とは思ったけど、素面の時には幽霊なんているわけねぇと言ってるからどうか分からない。

    でも先輩は昔っから変な人に好かれる傾向があるらしくて、誘拐やら強盗やら、通り魔やら、遭遇率が凄いんだよね。

     

    「あのさ、ヒロさんって距離感近い?」

    「いや、逆。懐にいれた人以外凄く距離とるし。懐に入れた人でも一定以上に踏み込んじゃうと懐から出されちゃう。かなり難しい人だと思うよ」

     

    一人になりたがる先輩に一人にさせたくない、匡近先輩と俺が無理矢理傍に居るような感じの今だ。

     

    「冥はさ、多分手も繋げたって言ってただろ?そんなことしても懐に入れたままって事は行けるって!先輩を幸せにしてやってくれよ」

    「うん、頑張る。僕さ、その頬っぺたにキスした事もあるんだけど、それすら笑って流されたんだけど、これってもしかしてペットみたいに思われてない?大丈夫?行けると思う?」

    「それ許してるんなら!もう落とせるって!いけいけ!良いか!先輩は決めたら意地でも離れると思うから、依存させるレベルで頑張れ!じゃないと逃げられるぞ」

     

    先輩がそこまで許すなんてビックリだけど、最初に冥に会った時から先輩は何か変だったから、きっとうまく行く。

    先輩が幸せになって安心して笑える場所に冥がなってくれたら凄く嬉しい。

     

    ぎゅっと冥の掌を握り締めると冥は嬉しそうにニコット笑う。

    俺は冥にも実は運命みたいなの感じてる。

    二人が幸せなら俺は凄く嬉しい。

    であったその時から冥も先輩も凄く大好きで、二人が幸せになるお手伝いがしたいと思っている。

     

     

     

     

    あの人を意識したのがいつだったかははっきりとは覚えていない。
    ただ、何と無く好ましくは思っていた。

    「あっ!ヒロさん」
    「おー冥せんせ。仕事どうだ」
    「はい!楽しいです!」
    「そうかぃ、そりゃあ良い。今度良い話がありゃ教えてくれよ」

    ヒロさんはこの地域で大人気のお巡りさん。
    出会って数年、笑顔が可愛らしくて、先日初めて歳を聞いてビックリした。
    同い年くらいか少し年上かと思ってたら10も年上だった。

    しかも高校卒業後にすぐ警察学校へ入って社会人になったと聞いたので、社会人になってからも凄く長くて、とても頼りになるひとだった。

    「そういえばよぉ玄が仲直りしてぇみたいだから、申し分けねぇが折れてやっちゃぁくれねぇか?」

    首を少しだけ傾げる姿が凄く可愛い!
    最初は少し怖かったんだけど、ちょこちょこ声をかけてくれて、子猫を抱っこした時の子供みたいな笑顔とか、保護者に詰め寄られてタジタジしてる所とか、ギャップが凄いんだよね。
    カッコいいと可愛いが共存してて、本格的に彼に好意を抱いたのは、保育園にナイフを持った男が乱入してそれを彼と玄が取り押さえてくれた時だ。
    顔中二人とも傷だらけで彼は男が逮捕された後に僕に園児と先生に傷がないのか聞いてきて、僕が震えながら貴方のおかげで誰一人傷はないですとと伝えたら。
    今まで見たことないくらいに嬉しそうに可愛い笑顔でニコッと笑ってポロっと涙を流した。

    その姿にグッと来てしまって。
    胸がドキドキして、先生達には吊り橋効果だとか言われたけど、もうヒロさんだけ違って見えるって言うか、いろんな人がいてもヒロさんだけ輝いて見える

    ちなみに今回の玄との喧嘩(?)も玄からちょっとでも先輩に声をかける機会をつくってやるよとしてくれている事なので、はっきり言って八百長だ。
    心配してくれたのにヒロさんごめんなさい。

    「仲直りしてきたら話聞いてくれますか?」
    「俺みてぇなおっさんで良いなら聞いてやんよぉ、後輩に俺の連絡先冥先生に教えとくように伝えとくわ、とっそろそろ時間だな。んじゃまた明日」
    「はい!」

    今日も凄くカッコ良かった。
    それなのに何であんなに笑顔が可愛いのか!
    あー、好きだなぁ

    「せんせぇ!今日もおまわりさんカッコいいねぇ」
    「そうだねぇ」

    保育園の子達も先生達もここに通ってくれるお巡りさんが大好きだった特に今いる子供達はお巡りさん二人が本当に自分の身体を張って自分達を守ってくれたのを知っているからもう、お巡りさんと結婚するとこの園の女の子の五割は言っている。
    でもやはり人気は玄でヒロさんは自分をおじさんとかおっちゃんとか言うので少し人気が低い。

    「玄お兄ちゃん来てないの?」
    「そうだね。今日はヒロさんだけみたいだね」
    「ねえねはげんにぃにのほうがちゅき?」
    「うん、しのぶは?」
    「ちのぶはげんにぃにとけっこんちゅる」
    「はははっ二人とも玄武さんの方が好きなの?」
    「「うん!」」

    胡蝶さんちの美人姉妹はどちらも玄狙いなのか
    これは男の子達が泣くだろうなぁ
    男の子人気はヒロさんの方が圧倒的に高くて
    将来ヒロさんみたいな警察官になると皆が敬礼の練習をするのでヒロさんは照れ臭そうにしていた。
    その照れた顔がまた可愛いんだよねぇ
    いや、分かってんるだけど、今の僕、完全に痘痕も靨状態だよね。

    何見ても何してても可愛いしカッコ良く見えちゃうんだもんなぁ

    問題は多分ヒロさんが僕の気持ちに気付いているのかいないのか分からないが、物凄く結婚と子供を持つことを勧めてくる事だ。

    でも玄にも凄い勧めてるし、酔うといつも僕らに二人が家族に囲まれて幸せに暮らす姿が見たいなんて言ってくる。

    牽制なのかもしれないし、本当に年頃のおじさんが口癖のように言うあれなのか?

    いまいち良く分からないんだよね。

    手を握っても、んっ?みたいな顔でこっちみてニコってしてくるし、先に進みたいんだけど、二人で飲みに行くのはOK、でも遅くなる前に帰されるんだよね。
    玄が言うには男にも女にも滅茶苦茶モテるらしいんだけど、誰とも付き合ってないらしいんだよね。
    でも、ホモにもレズにも寛容で署内のそう言った性癖の人を守ってくれるそうだ。カッコ良すぎる。

    でも好きって言っても気付いてないのか、躱してるのか友愛にとられちゃうんだよね

    食事に誘うとお金出させてくれないから、誘い辛いんだよね

    ふぅっと、息を付いて園児を集めて室内に戻ると園長やさよ先生が布団を敷いて待っていてくれたので寝たがらない子供もひょいと抱え上げて布団の上に運んぶと不満そうな声がいろんな所からする。

    「あらあら、皆ちゃんと寝れないの?困ったわねぇ悪い子はお巡りさんに嫌われちゃうわねぇ」
    「そうですねぇ、私お巡りさんに皆が悪い子だってお伝えしちゃいますもん!嫌われちゃいますねぇ」

    園長達の会話に不満そうな声を上げた子供達は大急ぎで布団に潜り込んでいく。
    全くお巡り様々だなぁ

    「ちゃんとお昼寝出来てますから、良い子達ですよ」
    「あら?本当ね、いつの間にか皆おねんねしてるわ!気のせいだったのねぇ」
    「あら、じゃあお巡りさんには皆良い子だからナデナデしてくださいって伝えないとね」

    わっと布団が楽しそうに膨らんで、園長の起きてたのかしらの一言でスッと静かになったので、大人皆で笑ってしまう。

    しばらく様子を見ていたが、子供達から寝息が聞こえ始めると、教室の端に机を出して子供達の連絡帳にしっかり呼んで返事を書いていく。
    どの先生も教室で同じことをしているだろう。

    園児のノート一冊づつしっかりと読み込んで、丁寧に丁寧に返事を書いていく。

    ヒロさんの姪っ子の寿美ちゃんのノートには今日はヒロさんが書いてくれたんだろう妙に角張った字についにっこり笑ってしまう。

    「ヒロさんらしいなぁ」

    書いてあることは、昨日の夜から今日の朝までの食事とか相談事とか、本当にお母さんみたいなのに。姿が凄く可愛い、いや格好良い。

    子供達の寝息を聞きながら何を考えているんだろうと、手を止めて真面目にお返事を書いていく。
    今日後一回くらい会えたら良いんだけど。


    「めーい!こっちこっち」

    大きく手を振ると大きな身体をぐるんと回してこちらの顔を確認するとパッと表情を明るくして冥が急いで歩いてくる。

    「玄!お待たせ」
    「待ってないっすよ~。今日のお店食べ放題だから期待しててくださいよ~」

    二人で並んで歩くと周りの人がチラチラとこちらを見てくるが、俺も顔の中心に結構深い傷もあるし、冥も身長が220以上あるから、妙に目立つのは良く分かる。

    「冥から誘ってくれるなんて久しぶりだよな!」
    「誘ったの僕なのに、お店探してくれてありがとうございます」
    「いーのいーの!俺が行きたかった店だから」

    二人で並んでお店には入ると個室で少し驚いている冥を座らせて俺も席に着くと、冥は少しもじもじしている。

    「何飲む?」
    「えーと、玄は明日は?」
    「休み!冥もだろ?お互い飲もうぜ」
    「じゃあカシオレ」
    「すいません!カシオレ一つと生中ひとつ!」

    二人でモグモグ食べながら最初は普通の話をしていたんだが、どうやって先輩の話を引き出そうかと思ったんだがなぁ
    これは言いたくて仕方ない感じかなぁ?

    「で、冥はどこまで行ったのかな?」
    「えっ?」
    「先輩の事」
    「そうだ!玄に聞きたかったんだけど!ヒロさん酔うとあんなに可愛くなるの!?」

    ぐっと前のめりに伝えてきた冥にちょっと仰け反りながら考える。
    可愛いだと?
    グダグダ絡み酒で、でも相談事を聞いてくれる時の顔は優しくて可愛いか?
    いやでも、そんなに言うほど可愛いか?

    「酔った時に傷、触らせて貰ったんだけど…こう、親指で目の下を擦るみたいに触ったんだけど、目を細めてふにゃって笑いながら掌にすり寄ってきて悲鳴嶼さんって言われて、可愛すぎじゃない?」

    そんな可愛い事したことあったか?
    そんなこと無いよね。
    傷触らせて貰えた事なんてないし。
    これってもしかして、希望アリじゃない?
    真っ赤な顔で話す冥は可愛いけど、もしかして先輩が幸せになれるかもって方が俺としては凄く嬉しい。
    昔から何故か知らないけど、先輩最初に会ったその時から、運命みたいなの感じて、先輩が幸せから必死に遠ざかるさまを見る度に凄く辛くて、先輩が幸せになって欲しくて欲しくて仕方ないんだよね。
    あっ運命って言うのは恋愛的な意味じゃない。先輩みたいなガチムチの男は俺的に好みじゃない。

    「冥、先輩が俺の前でそんなことになったことはない。これは行けるぞ!捕まえろ!」
    「本当?」
    「マジだよ!先輩酔っても絡み酒なだけだからさ!俺もそんな先輩見たことないもん」

    全然想像つかないけど!
    先輩が年下の冥に甘えるって凄いことだけど!
    匡近先輩ももっと甘えて良いんだよと先輩に言ってたから、甘えることも無いんだろうし。

    「冥!良く聞け!先輩は自分が幸せにはならないと決めてる!だから、お前が押すしかないんだよ!ずいずいと押さないと、先輩は幸せから遠ざかろうと逃げるぞ!絶対!!!!」

    多分だけど、先輩は幸せになると倍以上の辛いことが起きるとか、俺の傍に居るやつは幸せになれないと決めつけているところがある。

    酔っている時に聞いたら自分の傍には鬼が出るとか何とか。
    良く分からないけど、先輩視える人なのかな?とは思ったけど、素面の時には幽霊なんているわけねぇと言ってるからどうか分からない。
    でも先輩は昔っから変な人に好かれる傾向があるらしくて、誘拐やら強盗やら、通り魔やら、遭遇率が凄いんだよね。

    「あのさ、ヒロさんって距離感近い?」
    「いや、逆。懐にいれた人以外凄く距離とるし。懐に入れた人でも一定以上に踏み込んじゃうと懐から出されちゃう。かなり難しい人だと思うよ」

    一人になりたがる先輩に一人にさせたくない、匡近先輩と俺が無理矢理傍に居るような感じの今だ。

    「冥はさ、多分手も繋げたって言ってただろ?そんなことしても懐に入れたままって事は行けるって!先輩を幸せにしてやってくれよ」
    「うん、頑張る。僕さ、その頬っぺたにキスした事もあるんだけど、それすら笑って流されたんだけど、これってもしかしてペットみたいに思われてない?大丈夫?行けると思う?」
    「それ許してるんなら!もう落とせるって!いけいけ!良いか!先輩は決めたら意地でも離れると思うから、依存させるレベルで頑張れ!じゃないと逃げられるぞ」

    先輩がそこまで許すなんてビックリだけど、最初に冥に会った時から先輩は何か変だったから、きっとうまく行く。
    先輩が幸せになって安心して笑える場所に冥がなってくれたら凄く嬉しい。

    ぎゅっと冥の掌を握り締めると冥は嬉しそうにニコット笑う。
    俺は冥にも実は運命みたいなの感じてる。
    二人が幸せなら俺は凄く嬉しい。
    であったその時から冥も先輩も凄く大好きで、二人が幸せになるお手伝いがしたいと思っている。



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