📿先生の犯人捜しその日は、教員の忘年会で、普段はあそこまでは飲まないが、今年の受け持ちがあまりに破天荒だった為に疲れ果てた教員達は本当にビックリするほど飲んだ。
飲み食べ放題のその店で、周りがビックリするほど飲んで食べた。
二次会は無かったが、二次会がわりに悲鳴嶼の自宅で仲の良いメンバーでまた浴びるほど飲んだ。
料理が出来る不死川と宇髄が家庭的なものからおしゃれなものまでつまみを作り、ワインビール焼酎清酒様々な酒を飲んで、全員でリビングでごろ寝した。
その時に誰かにキスをされた。
皆が寝静まった深夜に誰かが身体を起こす気配がして目が覚めたが、うろうろしながら歩き回っているだけで、特に問題があるわけではないのでそのまま寝ようかとしていると、その誰かは私の傍に座ったかと思うと、私の唇に触れるだけの口づけをして、ゆっくりと髪をすいて、私から離れた場所で再度身体を寝かせてしまった。
あまりに驚いたが、眠気と酔いが邪魔をしてそれが誰だったのか分からず眠ってしまい、朝に不死川がキッチンから声をかけてきて目を覚ました。
誰か私にキスしたか何て聞けずにそれからもんもんとした日々を過ごした。
宇髄と伊黒はあり得ない。何だかんだで二人は恋人をとことん愛しているから冗談でもこんなことはしないだろう。
だが、煉獄も不死川も冨岡も遊びでそんなことをするタイプではない。
ならば酔っていて誰かと間違えてキスしたのか?
だが、私と間違える程でかい人間なんて居ないし、おそらく、この街で一番近いのも宇髄だろう。
それでも、高さも厚さもかなり違う。
それからもんもんとしているうちに季節は巡っていった
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「悲鳴嶼先生、今年のお疲れ様会どうされます?」
「もうそんな季節か…」
「確かに文化祭からは怒涛でしたから、時期がわけわからなくなりますよね~」
うふふと笑う胡蝶先生も何だかんだで目の下のくまが隠しきれていないくらいには疲れているようだ。
「正直、この季節ごとの集まりで季節を思い出すことになるな」
「ですねぇ、でも4月になったらまた怒涛ですねぇ」
「ははは、子供達が成長してくれれば少しは利点があるんだがなぁ。まぁ、今回も参加させてもらおう、やるとしたら三連休の前日だな」
「女子会が楽しみだわ~男性の方々も二次会されるんでしょう?」
その言葉にふにっとした柔らかい唇を思い出してしまう。
もしかしたらまたキスされるんだろうか?
やっと誰がキスをしたのか確認できるかもしれない。
そう思えば、少し楽しみだ。
そこまで考えてふと思う。楽しみ
不死川か、煉獄か、冨岡にキスされて私は嬉しかったのか?
顔に髪が触れなかったので私は不死川かと思っていた、それが嬉しいと思う自分に驚いた。最近そういうった感覚が鈍っていた。
だけど、キスされるのが嬉しいのであればこれは恋愛的な好きだろう?
「あぁ、本当に楽しみだ」
「ですねぇ、お店は不死川君が選んだ、和食居酒屋ですって、不死川君って和食好きですよね」
「そうか、なら炊き込みご飯があるかもしれないな」
不死川か煉獄が店を選んだ時には高確率で和食で美味しい炊き込みご飯が締めだったりするので、私は楽しみ過ぎてついにっこりと笑ってしまう。
「あっ、悲鳴嶼先生、胡蝶先生、今度の出欠どうしますかぁ?」
「私は出席でお願いします」
「あっ!私も。美味しいカクテルはあるかしらぁ」
「カクテルはねぇなぁ、二件目はカクテルの美味しい店探しとくわぁ」
ポケットから出したメモに何かを書いた不死川はにっと笑って楽しみにしててくださいねぇと教材を持って席へと戻っていった。
チラリと視線を彼にやると、スラッとした身体に横から見なくても綺麗に伸びた睫毛。
猫のように目で訴えてくる姿が愛らしい。
あの色味の薄い小さな唇の感触はあの日に感じた唇と同じなんだろうか?もっとしっかり感じてみたい。あの柔らかくて、少し甘い酒の味がする唇と…
意識したらもう駄目だな…
こっちを見てくれないだろうか?
「悲鳴嶼せーんせ!先生も行くんですよね!今度もド派手に飲んでくださいね!」
後ろから宇髄に肩を抱かれ、驚いたが笑って返す。
あぁ、飲み会が楽しみだ
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飲み会の日、不死川は飲んでいるようであまり飲んでいないようだった。
美味しい酒と美味しいご飯、仲間との時間はとても楽しかった。
それにしても、意識してしまうと不死川の頬が酒で赤く染まる姿が本当に可愛らしい。
「あー楽しい~週一くらいで飲みたい~」
「週一で飲むなら、大好きな嫁と居る時間が減るぞぉ」
「それは嫌だけど…ド派手に騒ぎてぇじゃんよぉ~」
「お前なぁ、もうちっと大人しくしろォ」
肩を抱き寄せられて仲良く喧嘩する二人にちょっとムッとしてしまう自分に自分で驚いてしまう。まぁだが、感情に振り回されてしまうのも悪くない。
どうせならこっちを見てくれないだろうか?
怒ったりしていない彼は子供のようで愛らしい顔をしているんだ。
きょとんと此方を向く姿は本当に可愛い。
「不死川先生は今日強制二次会でーす」
「俺幹事だからそりゃ出んぞ二次会」
「えぇー実弥ちゃんお店どこ~」
「重てぇよ。此処から五分くらいのbarだよ」
「あら~!そこ行ってみたかったの!素敵よ不死川君!」
きゃあと黄色い悲鳴をあげながら顔を真っ赤にした胡蝶と宇髄が不死川に飛び付く。
あそこは高校からの同級生らしく異様に仲が良いようだ
「カナエ、あんま飛び付くな!胸があたんだよ」
「不死川君のエッチ!」
これは、三次会の宅飲みは無しかもしれないな…こんな胡蝶を放置しては帰れないだろうからなぁ
「あっ!でもダメよ!そこで二次会は無しよ!三次会でそこで飲むはずだったんだから!男性陣は別のとこで二次会してちょうだい!」
へにゃへにゃと他の女性陣とくっついて可愛らしく拒否する姿に男性陣は大笑いで、不死川だけが不満そうに次の店を探し始める。
「あっ、そういや俺今日駄目よ。嫁が一次会後に迎え行くって言ってたし」
「うん?宇髄もか、俺も明日は甘露寺と出掛けるから帰るぞ」
「煉獄は明日弟の発表会だっけ?」
「うむ!だから直ぐに帰る」
「冨岡も明日お姉さんと何かあるっつってたし、後藤先生は明日ご実家だし、鱗滝先生も鋼塚先生も基本不参加だからぁ行けんの俺と悲鳴嶼さんか…んじゃ悲鳴嶼さん良ければ俺と宅飲みしませんかぁ?狭いですけどぉ」
声をかけてくる不死川に笑って頷くと、不死川は嬉しそうに笑った。はい、可愛い。
ん?あまり飲んでいないはずなのに、顔が赤いな…これが私と二人での宅飲みに喜んでだったら、可愛いとか言っている場合では無いのではないか?
娶るべきか?いやいや落ち着け。本当に不死川だったかは確定してないぞ。
だったらいいなぁと、かもしれないなぁのレベルだ落ち着け自分。
「不死川、もし良ければなんだが、家にいい酒があるんだ。私の家で飲まないか?実家から送られてきた大量の果物も持て余しているんだ」
「良いんですかぁ?じゃあ是非。もし良かったらなんかつまみ作りますよぉ」
「ならば早めにスーパーに行こう!閉まる前に!」
不死川は料理上手で以前作ってくれた炊き込みご飯が絶品だったので、此方もつい興奮してしまったのだ。
「今出てもいいですけど、此処の〆は美味しい鯛飯ですよぉ?食べなくていいんですかぁ?」
結局私たちは本当に〆の時間までゆっくりと楽しんだ。
もちろん鯛飯はとても美味しかった。
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「あっあの」
「んー」
「ちっ近く無いですかぁ?」
顔を真っ赤にして腕の中で、どうしても此方を向けない姿が可愛らしい。
「嫌か?」
「嫌、ではねぇですけどぉ」
これだけ近いと不死川が唇をにゅっと尖らせるのが見える。
それすら可愛い。
「嫌ではないなら此処にいて欲しい」
「でも、おつまみ作れないですけど」
「なんだまだ空腹なのか?」
「いや、そういう訳じゃねぇんですけど、空きっ腹に酒は良くないでしょぉ?」
ふんわりと居酒屋と臭いの中にも不死川の匂いがして、嬉しくなってしまって、首筋をすんすんと嗅いでしまう。
「ひっ!悲鳴嶼さん!」
「ん、不死川の匂いがする」
「もしかして、前回の時に起きてて怒ってるんですか!?」
不死川は半泣きで腕から逃げようと踠くが、逃がさずにグッと括れた腰をがっしりと捕まえておく。
「不死川はどういう気持ちで私にキスしたんだ?」
「酒のせいで我慢できなくて、すみません」
「我慢?ではしなくてもいいと言えば何をしたい?」
「何もいらねぇです。ごめんなさい」
いじらしいし、しょんぼりした姿が可愛らしくて、首筋にちゅうっと吸い付いた。
「ひゃっ!?」
「私は不死川がキスしてくれたんだったら良いなぁと思ってな、不死川が好きだと自覚してしまったんだが」
普段真っ白な首筋に付いた赤い跡に再度唇を寄せると真ん丸に見開かれた目がやっと此方を向いた。普段から大きい瞳がもっと見開かれて少し潤んでいる。
「本当?」
「どう思う?」
「どうしよぉ、嬉しい…本当ですかぁ?嘘じゃねぇのぉ。酔ってるからって今の無しっつーのは無しだよなぁ」
うんっと頷いてやると、子供みたいにくしゃっと泣き笑いをして、私の服をぎゅうっと握ってくる。
「でももう無理!供給が多すぎて、いったん離してくんねぇ?心臓が爆発しそうなんです!」
「そうか…なら此方を向いてくれないか?」
「はい」
私を全く疑わずに身体を捻ってこっちを向いてくれた顔に両手を添わせるとまた真っ赤に染まる。
はぁー可愛い、ついその唇に唇を押し付けてしまうと、不死川は中学生のように固まってしまった。
「ふふふ、慣れて貰わなければな」
ちゅっちゅと繰り返し唇を重ねると不死川はふっと身体から力を抜いて後ろに倒れそうになり、慌てて抱き寄せれば、完全にキャパオーバーして意識を飛ばしてしまっているようで、私は声を出して笑ってしまって、明日彼が起きたらおはようと笑いかけようと彼を抱き上げて部屋へと運んだのだった。