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    @iiitbutit14

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    丼天さんちの先祖返りアケ▽ちゃんの設定をお借りしたG▲さん×アケ▽ちゃんの三次創作です。ハロウィンの二人のお話。諸々許可済!

    君臨するは二対の翼 ハロウィンのギアステーションは忙しい。
     今までは特別イベント事などには関与せず通常運転を貫いていたバトルサブウェイだったが、今年は初のイベント企画として、バトルサブウェイに乗車しただけで参加賞としてお菓子が貰え、サブウェイマスターに勝てばお菓子だけではなく豪華景品も貰えるといった、初の試みがなされているのだ。
     慣れない行事の準備のため朝から慌ただしく動き回る鉄道員達の中に片割れの姿が見えず、クダリはきょろきょろと辺りを見回した。
    「おはようみんな!遅くなってごめんね。ノボリはいる?」
    「黒ボスなら執務室にいらっしゃるかと」
    「ありがと!」
     ばらばらと元気に返ってくるおはようございますの言葉と共に示された居場所へと、クダリは早足に向かう。
     今日のノボリはまだクダリが微睡の中から出られないくらいの早い時間に起き出し、習慣になっている朝の翼のブラッシングを手早く施して、あなたはゆっくり来て構いませんからね、と言い残した上で早々に出勤して行ったのだ。後を追おうにもノボリの行動はあまりにも機敏かつ有無を言わせぬ圧力があり、クダリには知られたくない何かがある事は明らかであったから、大人しくいつも通り
    の時間に出勤したのだのが。やはり、隠し事となれば気にならないはずがない。
     何せ今日はハロウィン当日なのだ。そんな日にする隠し事など一つしかないだろう。ぼくに隠したい仮装ってどんなものかな、とわくわくしながらギアステーションの長い廊下を歩くクダリの耳に、ふと聞き慣れたようで聞き慣れない音が転がり込む。
     カツン、カツン、と床を叩く独特のリズムと、羽根の擦れたようなかすかな空気の震え。廊下の先の薄暗闇から、鮮やかな赤がちらりと覗いた。
     ふわりと空を切る漆黒の翼と、地下鉄の王者である事を示す揃いのデザインのマスターコート。常とは違ってふわふわとした濡羽色のそれを翻しながら堂々と歩く姿に、息を飲む。
    「おやクダリ、随分と早かったですね」
    「の……のぼり……?」
    「ええ、あなたのノボリでございますよ」
     クダリとそっくり鏡写しにしたかのような姿をしたのは、確かに己の片割れだった。穏やかにゆるんだ目元は酷く満足気だ。
     制帽の鍔を持つノボリの指先は赤く太く、クダリが持つアーケオスらしい皮膚とそっくり同じ造りをしている。脚元を見れば同じく赤い皮膚で覆われていて、鋭い鉤爪まで完璧に再現されていた。これが、先程廊下に響いていた音の正体だろう。ゆらゆらと揺れる尻尾も、その先の尾羽もまるで神経が通っているかのように見える。目に見える全てが、本物と見間違える程の精巧さで出来ていた。
     昔々、もしもノボリがぼくと同じだったならと夢想したそのままの姿に、何とも言えない感情がクダリの胸いっぱいに広がっていく。
    「ノボリ……っ!」
     堪らない気持ちになって駆け出し、思い切り抱き付けば、慣れ親しんだ柔らかな体温が温かく迎え入れてくれた。
    「ふふ、驚いたでしょう?わたくし、今日のためにうんと頑張らせて頂きましたので」
    「うん…うん…っ!すっごく驚いた!ねぇノボリ、一体いつから準備してたの?」
    「さて、いつからだと思いますか?」
     楽しそうに忍び笑うノボリの声に、クダリは悟る。これは恐らく、ずっとずっと昔から入念に計画されたものだったのだろう。もしかしたら、うんと幼い頃から。それがたまたま今になって様々な条件恵まれ、実現したのだ。
     それも、最高のタイミングで。
     最高の舞台に巡り合って。
    「今日はもしかして、このままバトルする?」
    「勿論!本日の"バトルサブウェイの怪物"は、あなただけではございませんよ」
     さぁ、一刻も早くお客様を楽しませて差し上げなければ。
     まだ見ぬお客様の驚愕の表情と、最高のバトルの予感にわくわくと弾む声を隠しもせず、ノボリはクダリの手を取って颯爽と歩き出した。造り物のそれに温度はないけれど、それでも、クダリの胸はあたたかなもので満たされていく。
    「みんなきっとすっごくビックリするね!ぼく、とっても楽しみ!」
     クダリは歩調を早めてノボリの隣に並び直し、握られた手を強く握り返した。全く同じ姿をした片割れの隣に立つ事など生涯ないだろうと思っていただけに、気分がとても高揚しているのが分かる。
     ハロウィン当日限定の特別な魔法のような一日が、これから始まるのだ。

     
     余談だが、そっくり同じシルエットをした黒と白の双子のサブウェイマスターはこの日ライモンシティで大人気を博し、バトルにイベント行事にと引っ張りだことなる。結果、バトルサブウェイへの乗車人数の過去最高記録を叩き出したのだった。
     その後ファンからの熱い要望により、定期的に黒のサブウェイマスターが翼を翻して歩く姿を見せるようになるのだが、今の二人は知る由もない。
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