休憩 突き刺すような冷たい風が、露わな頬と、テラスの照明、足元の籠に置いた紙袋を撫でていく。
向かいに座るファイヤーマンが肩をすくめて目を固く閉じ、小声で情けない悲鳴をあげた。その手のひらに包まれたカップの中身は、自分のものと同じく、既に暖を取るには心許ない温度になっているのだろう。
「さっさと飲んでしまえ。もう帰るぞ」
労りのつもりで投げた言葉に、震えていた彼は渋い顔を返してきた。
定期検査の為に研究所へ帰っていた休日。検査も処置も終え、揃って暇を持て余しているのを見かねた姉に、ふたりまとめて買い出しを頼まれた。
量販店や商店街に足を運び大小様々な品を揃え、終えた頃には街の明かりが灯る時間になっていた。ふたり荷物を携え共に家路に就く途中で、洒落たカフェを見つけて足を止め、どちらからともなく一休みをすることを決めた。あいにく厚いクッションの乗ったソファが置かれた暖かい店内は、若い人間やロボット達で席が埋まっており、その時はまだ歩き詰めた後で機体が暖まっていたので、オープンテラスへの案内を快諾してしまったのだった。
1941