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    ブラスタ(ソテケイ/黒ケイ/ケイ受け/他は筆が乗ったら)

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    黒ケイ。風邪を引いたケイの看病する黒曜。砂糖が多いです。何でも許せる方向け。

    ##黒ケイ

      目を覚ましたケイが最初に目にしたのは見慣れてしまった寝室の天井。ぼんやりとする頭でとりあえず起き上がろうと腕を付くが力が入らない。心なしか身体が熱い。倦怠感もある。まさか…風邪でも引いたか?と思いながらも認めたくない一心で無理矢理起き上がる。
    「起きたか寝坊助」
     先に起きていた黒曜がタバコ片手に戻って来た。いつもより気だるげな雰囲気なのはきっと昨夜の情事の名残りだろう。ケイはまだ熱っぽさと痛みを訴える腰をさすりながらため息をつく。と俯いた時に額に何かの感触。それが黒曜の手のひらだと気づくのに時間はかからなかった。
    「あ?熱いじゃねぇか」
     黒曜はぶっきらぼうにそう言いながらも、ケイの頭を優しく一撫でした。それから直ぐにリビングに向かうと風邪薬と、キッチンの冷蔵庫から冷却シートと水を持ってケイの元に戻る。スマホのメッセージをチェックをしている様だがどことなく覚束ない。はあぁ…と俺は今ため息零しましたと嫌でも分かるレベルでやると、ケイの手からスマホを取り上げる。
    「何をする」
    「余計なことしてねぇでこれ飲んで寝ろ」
     規定量の三錠をPTPシートから押し出し、白皙の手のひらに乗せてやる。ペットボトルの蓋を開けてから渡して、ちゃんと服用したことを確認すると、今度は冷却シートを額に貼り付けた。
    「飯食えそうなら用意するけど、なんか食いたいもんあるか?」
    「……なんでもいい」
     「んじゃ適当に見繕って作ってやっから、大人しく寝てろよ。あと、もしまた体調悪くなったらすぐに言え、分かったな?」
    「……ん」
     素直になったケイの頭を軽くぽんっと叩くと、黒曜は横になったケイにシーツを掛けると、財布とスマホ、家の鍵を手に買い物に出掛けた。


    「……」
     黒曜が出ていった部屋には、当たり前だがケイ一人だけ。先程まで黒曜がいた場所に触れてみると、まだ少し温もりが残っている。
    (……早く帰ってこい)
     …別に黒曜がいたところで具合が良くなる訳でもなんでもないのに。無意識にそう考えていたことに気付くとケイはシーツを被って無理矢理思考を切った。人間弱るとロクなことを考えないな…と瞼を閉じる。しかし中々寝付けず、何度も寝返りを打つ。それでも眠気がやってこないので、ケイは諦めて上半身を起こした。
    ふと、サイドテーブルに置いてあった体温計に手を伸ばす。何となく脇の下に挟んでみる。暫くすると電子音が鳴り響き、取り出して見ると、37.8°Cの表示。完全に発熱しているではないか…思ってた以上に宜しくない。自覚しているのと、していなのでは心身共に訳が違う。
    (…あつい…)
     それでも大人しく寝てろと言われたことを思い出して、シーツを被り直してベッドに横になる
    鳴らしたくもないのに鼻がぐす…と鳴って、目頭がじんわり熱くなる感覚。泣いている訳ではない。ただ生理的な涙が勝手に溢れてくるのだ。
    こんなことで泣くなんてらしくないと自分に喝を入れるも一向に止まらない。
    (なんだこの感情は……?)
     今まで感じたことの無いもの。これは一体なんなのか?どうして自分はこうなっているのか?いくら考えても答えは出ない。
    「…大丈夫か?」
     いつの間にか帰ってきた黒曜が心配そうな表情で覗き込んでいる。ケイが濡れた頬を隠すより先に、それに気づいた黒曜の手が優しく触れてそっと拭ってくれた。それだけなのに何故か安心感が広がっていく。
    「お前、演技以外でも泣いたりとか出来たんだな…」
    「……」
    「俺が居なくて寂しかったか?」
    「その様な訳が無いだろう」
    「あっそ。まあ、そういう事にしといてやるよ」
     言葉とは裏腹に手のひらに擦り寄ってくるケイに黒曜の口角が上がる。またケイの頭を撫でてから、キッチンへ向かうと手際よく調理を始めた。ドアが開けっ放しの為、コトコトと鍋の煮込む音と包丁がまな板を叩く音のリズムが心地良い。普段ならなんてことのない生活音すら今のケイには子守唄の様に聞こえる。漸くやってきた睡魔にうとうととしていると、黒曜に名前を呼ばれた。
    「起きれるか?」
    「…ん」
     身体を起こすと、背中に枕やクッションを挟んでくれる。それからマグカップを手渡されたので中身を見るとホットミルクだった。
    「飲めるか?」
    「……」 
     無言でこくりと首を縦に振ると、黒曜は隣に座って自分の分を飲み始めた。
    「美味いか?」
    「……あぁ」
    「そりゃ良かった」
    「ん」
     飲み終わったタイミングで黒曜は空になったコップを受け取ると、ケイの唇に軽くキスをする。移るぞと言いかけそうになった言葉をケイは喉の奥に押し込んだ。どうせ言ったところで黒曜は聞きはしないし、止めろと言っても止めない。意味が無いのだ。
    「黒曜…」
    「寝てろ。飯出来たら直ぐ戻ってくるからよ」
    「……はやくしろ」
    「はいはい」
     そう言ってから黒曜はケイを寝かせると、寝室から出ていった。それを確認するとケイはゆっくりと深呼吸をして、静かに瞼を閉じた。


    「ケイ、起きられるか?」
     またも声をかけられて目が覚めた。ぼーっとした頭のまま、上体を起こして時計を見る。時刻は既に午後二時を過ぎていた。いつの間にか眠ってしまっていた。水を手にしようとしたケイへ、黒曜はすかさず経口補水液を開けて渡す。ケイがそれを飲んでいる間に、反対の脇の下に体温計を挟んで熱を計る。
    「…少し下がったか。飯出来てるけど」
    「……食べる」
     のそのそと布団から出たケイの姿を見て、黒曜は先と同じく甲斐甲斐しく枕とクッションを積んで背凭れを作ると、一旦キッチンへ。数分後、持ってきたトレイをサイドテーブルに置く。そこには卵粥があった。黒曜はレンゲを手に取ると、一掬いして息を吹きかけて冷ましてからケイに差し出す。キョトンとするケイだが、すぐに察して口を開けた。程よい温かさのそれは、塩味と出汁の風味が絶妙だった。
    半分ほど食べたところで、ふと視線を感じて顔を上げるとこちらを見つめている黒曜と目があってしまった。ケイが何か言う前に、黒曜は再びレンゲを差し出した。再び差し出されたそれを、ケイは何とも言えない気持ちで口に含む。
    (何故こんなことになっている…?)
     自分でもよく分からない行動に疑問を持ちつつも、黙々と食べ進めていく。結局最後まで黒曜に食べさせてもらった。
    「ご馳走様」
    「お粗末さん」
    「……」
     食事を終え片付け様とする黒曜の服の裾をケイはそっと掴む。それに気がついた黒曜が、どうかしたのか?と尋ねると、ケイは無言で顔を背けてしまった。何事か……黒曜はすぐにその理由を理解を示す。
    「なんだよ、やっぱ寂しいのか?」
    「違う」
    「じゃあ何だよ」
    「別に、なんでも無い…」
     黒曜は小さくため息をつくと、ケイを抱き寄せると、ケイの身体がビクッと震える。
    「怖いか?」
    「……」
    「大丈夫だ、何もしねぇよ」
     ぽんぽんと背中を叩きながら、一定のリズムで優しく叩く。すると、ケイは黒曜の肩口に額を擦り付けた。鼻をすする音が聞こえたが、黒曜は何も言わずにただケイの頭を撫で続けた。病気は意図せず人を弱らせる。それはこの傲慢な金色の王者も例外では無かった様だ。
     暫くして落ち着いたケイは、そのまま黒曜の膝の上に横になって寝てしまった。その寝顔は、普段の表情からは想像出来ないくらい穏やかで幼く見える。黒曜は自分の膝で眠るケイの顔を見ながら思う。どうしてこいつは、ここまでにならないと素直に人に甘えることが出来ないのだろうかと。黒曜自身にも人並みにそういう欲はある。…大分昔に置いて来たけど。だが、ケイはそんなものよりもっとタチが悪いように思えた。ケイが望むこと、それはあいつを守ること。確かにある程度は達成感や何かしらで満たされるだろう。しかしそれと同時にケイ自身が満たされることではないと思っている。他人を優先するということは自分のことを後回しにするということだ。その結果が今のこれなのだから笑えない話である。だから、だろうか。黒曜はケイを放っておくことは出来ない。出来なくなってしまった。切り捨てるにはもう、遅いレベルにまで来てしまっている。黒曜も、ケイも。
    「んぅ……」
     寝苦しそうに身じろぎするケイを眺めていた黒曜は苦笑いを浮かべて、ケイを膝から下ろす。つか自分から勝手に人の膝を枕にしたんだろうが……なんて、病人相手に言える訳もなく。
    「ったく、世話のかかる奴だな」
     仕方がない、といった風に肩をすくめると黒曜はベッドに寝かせ直してやる。額の冷却シートを貼り替えてやり、汗ばんでいる肌を軽くタオルで拭いてやって、布団をかけてやったところで、再びケイは寝返りを打つ。その様子に再び呆れた様な笑みを見せる黒曜。そして、その寝顔を静かに見守っていた。
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