Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    スギモトカズ

    @hgmt4217

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 23

    スギモトカズ

    ☆quiet follow

    くぜさんの呟きから勝手に妄想膨らませて書いてしまいました。勝手にすみません🙏でも楽しかった(*´Д`*)

    君が待つ部屋に姉の千速を無事、ライブ会場で友達に合流させ萩原研二は先に家へと帰ってきた。玄関の鍵を開けると自分のものと同じ、だけど少しだけ小さいサイズの通学靴が乱雑に転がったままそこにあるのを見て自然と頬が緩んでしまう。

    足音を立てないように階段を昇り、自室の扉も静かに開く。自分の部屋に入るのに気を遣うのもおかしな話だが、ベッドの上の膨らみを見ればやはりその行動は正しかったようだ。

    家の者は誰もいない萩原家に当たり前のように一人で居座り、人のベッドだろうとお構い無しに眠る幼なじみで親友兼恋人の顔を覗き込む。大きくて強い光を宿す瞳は閉じられ、いつもより幼さが増して見える。身体を少し丸めて眠る姿はまるで猫そのもので普段の男らしい口調とヤンチャな行動からは想像もつかない程可愛らしい。ペットがいたらこんな感じなのかなぁ、と萩原は苦笑いを浮かべながら柔らかいくせ毛にそっと指を通せば「んー……」と、むず痒そうに顔を歪めたが、小さな口が少しだけ開き再び寝息を立て始めた。

    「……いや、猫相手にはこんな気持ちにならないよなぁ」

    むらむらと腹の底から湧き上がってくる欲情を抑える事はできず、吸い寄せられるようにそのまま松田の唇に自分のものを重ねる。角度を変えながら啄むように何度か小さなキスを落とせばゆっくりと開いた大きくて綺麗な紺色の瞳に自分の姿が映り、萩原は満足そうに微笑む。

    「おはよ、じんぺーちゃん。ただいま」
    「……人の寝込み襲ってんじゃねぇよ」
    「あんまりにも可愛かったからさ。それに自分のベッドで恋人が寝てたら食べてもいいよって事でしょ?」
    「アホか」

    言葉とは裏腹にさして気にする様子もなく、ふぁあ、と大きな欠伸をかいて上半身起こした松田の髪を撫でて整える。そのまま指を滑らせ指先で頬をなぞってもされるがままで本当に猫みたいだなぁと萩原は再び苦笑する。ローテーブルの上にはすっかり元通りになった姉のスマホが置かれていて「おつかれさん」と労いの言葉をかける。唇の端にまだ少し血が滲んでいて指先でそっと触れれば染みたのか「ヤメロ」と手を払われる。

    「目元もまだ腫れてるね。ちゃんと冷やした方がいいよ?」
    「……ったく、千速の奴、ちったぁ加減しろってんだ。容赦なさすぎだろ」
    「そりゃあ手加減したらじんぺーちゃんに全部避けられちゃうからでしょ」

    姉が本気で殴りかかれば普通の男なら今の松田以上にボコボコにされているだろう。とは言え松田だって本気になれば姉の攻撃を躱せないはずがない。それをしなかったのは姉に対して手加減した訳ではなく、少なからず悪かったと思っているからだ。口は悪いが根は真っ直ぐな松田らしいなぁとは思うが実の姉弟以上に本気で喧嘩して怪我までされるのは萩原としてはどちらに対しても複雑な気持ちになる。

    「ちょっとスマホバラしたくらいで怒り狂いやがって、心狭すぎだろ」
    「そりゃあ自分のスマホがいきなりバラバラに解体されたのを見たら怒るって。ちゃんと言えば良かったのに」
    「はぁ?聞いたところであの千速がバラしても良いなんて言うはずねぇだろーが!」
    「そうじゃなくて、直したんだろ?姉ちゃんのスマホ、時々調子悪そうだったからなぁ」
    「……っ、別に俺は元に戻しただけだっつーの」

    最近、姉のスマホに雑音が入ったり音声の調子が悪い事に気付いた松田が姉の隙をついて修理するつもりがタイミングが悪すぎたようだ。素直に言えば良いものを、天邪鬼な性格が邪魔をしたのか、はたまた初恋の相手にはカッコつけたい気持ちがまだ松田の中に残っているのか……

    「松田は姉ちゃんの事、大好きだもんな」

    思わず口から出てしまった言葉に自分で傷付く。殴られるのを甘んじて受けるのも、どれだけ改めろと言われ続けてても「千速」と名前呼びをするのも、やっぱりまだ松田の中で姉の存在は特別だからじゃないのか?自分と付き合っているのも姉に似ているから……なんて自虐的な事まで考えてしまう。

    こんな事を言った所で松田を困らせるだけなのはわかっていても時々、どうしようもなく不安になるのは姉が女性で松田の初恋の相手だから……なのだろう。もし何かの拍子にどちらかが相手に本気になったら松田と同性の萩原には成すすべがない。

    「そりゃまぁ、俺にとっても姉貴みたいなもんだしな」

    だが、萩原の心配を他所に松田の答えはシンプルだった。松田の中で姉への気持ちはとうに身内への愛情に落ち着いていて、それ以上でも以下でもないのだと。萩原の不安を知ってか知らずか、どちらにしてもさっきまで渦巻いていた嫉妬や不安は松田の一言で消え去ってしまうのを感じながら我ながら現金だよなぁ、と萩原は思わず笑ってしまう。

    「じゃあ俺の事は?」

    欲張って松田の言葉を引き出そうとするのは狡いと思いながらも顔を寄せて視線を合わせる。松田の瞳にもう一度自分の姿が映るのを確認するよりも早く胸ぐらを掴まれ、驚いた隙に唇を奪われていた。さっき自分がしたじゃれ合うようなものではなく、互いの舌と唾液が交じり合う恋人同士のキス。そのまま身体を引き寄せられ、二人でベッドに倒れ込んだ所で松田の少し濡れた紺色の瞳に萩原の色が重なると、松田は満足そうに微笑む。

    「俺がこんな事するのはお前だけだ。何か不満か?ハギ」
    「ないけど、俺の事は名前で呼んでくれないの?」
    「呼ばねぇよ。俺はお前の家族じゃねぇからな」

    家族と同じ呼び方なんてしない。してやらない。お前だけは特別だからなと恥ずかしげもなく言い放つ松田に一生勝てる気がしない萩原は心の中で白旗を挙げながら「俺もだよ、陣平ちゃん」と応えてもう一度キスをした。家族じゃなくてもいつでも当たり前みたいに自分の部屋に松田がいる幸せを噛み締めながら。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭💯🙏💖💞💴💗😍👍💘🇱🇴🇻🇪💜💙💯😭💖💕💗🙏💘💖😍☺💕💯😭💘💜💙💜💙💗💗💗💗💗💗😍😭💴💯
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    スギモトカズ

    DONE②お互いの頬にキスしないと出られない部屋「お互いの頬にキスしないと出られない部屋」そんな謎の空間に萩原と二人で閉じ込められて数分悩んだものの、試した方が早いとの結論に達した。

    萩原は楽しむかのように「じゃあ俺からね。はい、ちゅー♡」と頬にキスをされ、男同志で何やってんだか……と虚しささえ感じた。ただ、萩原の唇が触れた部分が妙にむず痒く感じて手で擦れば「えー、ひどいなぁ」と、少し寂しそうな苦笑いで返された。

    「じゃあ今度はじんぺーちゃんの番だね」

    そう言って少し屈んで差し出された頬にムカつきながらもさっさと終わらせてしまおうと唇を押し当てた。子供の頃にふざけて寄せあったふにふにとした柔らかさは微塵もなく、ガッシリとした骨格に薄くて硬い皮膚、そしてちくちくと刺さる短い髭。そのどれもが大人の男のもので、自分と同じはずなのに全く違う感触に驚き、すぐに唇を話してしまった。

    カチャン、と乾いた音と共に扉が開くのを見て何故か残念そうに「もっとちゃんとしてくれて良かったのに」と言った萩原の顔をまっすぐ見ることもできないまま「うるせぇ、開いたんだからいいだろ!」と答えて部屋を出たが、しばらく心臓の音はどくどくと煩いままだった。 496

    スギモトカズ

    DONE③お互いの好きな所を10個言わないと出られない部屋「じんぺーちゃんの好きなところかぁ。まず目かな。それと顔が可愛いし声もいい。後はやっぱり手だよね。指先器用ですっげー綺麗。くせ毛も可愛いし、ぶっきらぼうだけど本当は優しいし、一生懸命メシ食うとこも好き。そんで頭もいいし、ケンカ強いし、俺の運転付き合ってくれて、どこでも寝ちゃうのものもすっげー可愛くて好き。他にも……」
    「もう10個言ってるぞ」
    「もう?まだまだいっぱいあるんだけどなぁ」

    そう言ってニヤニヤと笑う俺を見て心底呆れた顔ではぁ、と短くため息を吐く松田の背後の扉には『お互いの好きな所を10個言わないと出られない部屋』と書かれた張り紙。元々人のいい所を素直に褒めることには抵抗ないし、ましてや松田相手ならいくらでも言える。短気で口も悪いけど心根は優しい男がオレは大好きだから。

    だから松田からも俺の好きな所を聞かせてもらえるのは嬉しいし楽しみだけど素直じゃない松田にとってこのお題はちょっと荷が重いかもしれない。

    「お前の好きな所……ねぇ」

    うーん、と少し考え込んでから俺の好きな小さな口がゆっくりと開く。

    「誰彼構わず愛想振りまくとこ」
    「へ?」
    「困ってる奴がいたら老若男女 1127

    スギモトカズ

    DONE④一緒のベッドで一時間寝ないと出られない部屋「じゃあ寝るか」と言って徐にシャツのボタンを外し始めた松田に慌ててその手を止めた。

    「は?え、何でシャツ脱ぐの?!」
    「何でって、このまま寝たら皺になるだろーが」

    普段ガサツなくせに変な所で細かい幼なじみに「あー、うん。ソウデスネ」と棒読みで返事をした。

    「?変な奴だな」と言われたのは心外だが口に出して拗らせるのも面倒だ。確かに皺は気になるがどこの誰の物とも分からない部屋のベッドで寝ろと言われて服を脱げる程、警戒心は薄くない。

    そんな俺とは対照的に松田は何も気にする様子もなく脱いだシャツを畳んで床に置き、更に腰のベルトを緩めたスラックスに手を掛けた所でもう一度俺の上擦った声が部屋に響く。

    「ちょ、じんぺーちゃん、まさか下も??」
    「さっきから何だよ?外歩いてきたズボンで布団に入ったら汚れるだろ?」
    「いや、それは自分のベッドならって話だよね?」
    「リラックスした方が寝やすいんだよ。ほら、さっさと寝るぞ」

    そう言って脱いでしまったズボンも綺麗に畳んで布団に潜り込んだ松田の豪快さと警戒心のなさに頭を抱えた。知らない部屋やベッドというだけではない。人の気も知らないでそんなにも簡単 1092

    スギモトカズ

    DONE⑤カラオケで100点取らないと出られない部屋『96.37』

    モニターに表示された数字に俺と萩原はガックリと肩を落とす。俺たちが今いる部屋は一見カラオケボックスのような空間だが、そこには扉も窓もない。『カラオケで100点取らないと出られない部屋』と書かれた壁の張り紙に唖然としたのも歌の苦手な俺ではなく萩原の方だった。

    萩原は昔から歌も得意で、自分の好きな歌手や女子ウケのいい曲をいくつもマスターしてはカラオケで披露していた。そんな萩原なら100点なんて余裕だろ、とタカを括っていたが流石に機械相手となるとそう簡単にはいかないようだ。

    「あー、もう!100点なんて無理だって~~」
    「泣き言言ってねぇでさっさと次歌え。いつまで経っても出られねぇだろうが」
    「じんぺーちゃんも歌ってよ!さっきから俺ばっかでズルい」
    「ばーか。お前でも難しいモンが俺に俺にできる訳ねぇだろ。時間の無駄だ」
    「そんな開き直るなって。俺も喉痛いし、ちょっと休憩するからその間練習だと思って歌ってよ」

    そう言ってマイクを渡され俺も知ってる萩原が好きな歌を勝手にセットされた。そりゃあ萩原ばかりに歌わせるのは悪いと思うが俺が音痴なの知っててわざわざ歌わせてくるのはム 1687

    スギモトカズ

    DONE⑥走り回る子犬を5匹捕まえないと出られない部屋「萩原!そっち行ったぞ!捕まえろ」
    「いや、俺もう両手塞がってるし!おわっ」
    「くっそ、逃げられた」

    俺と松田が今いるのは『子犬を5匹捕まえないと出られない部屋』いや、部屋と呼ぶには余りにも広い空間。地面には草が生えているし天井や壁は空のようにも見える。だがそれ以外には何も無く、此処が何処なのかもわからない。

    草の上に落ちていた紙に書かれた言葉を信じるならば走り回る元気な子犬たちを5匹捕まえるまでここからは出られないという事になる。3匹まではどうにか捕まえたものの子犬を抱き抱えたまま、しかも残りの2匹は格別ヤンチャなようで楽しそうに逃げ回っていて、このままではとても捕まえられそうにない。はぁ、と一度腰を降ろして乱れた息を整える。

    「ちっ、あいつら楽しんでやがるな」
    「ほんと、ヤンチャだねぇ。まるでじんぺーちゃんと降谷ちゃんみたい」
    「あー?零と一緒にすんじゃねぇよ」

    犬に喩えられた事ではなく降谷と一緒の扱いにされた事に腹を立てる所が何とも松田らしい。

    「萩原、お前はその3匹とここにいろ。俺が捕まえてくる」
    「りょーかい。後で代わる」
    「いらねーよ」

    そう言って子犬たちの方へ 1536

    スギモトカズ

    DONE⑦お揃いコーデで顔ピタ写真を撮らないと出られない部屋『お揃いコーデで顔ピタ写真を撮らないと出られない部屋』

    まるで写真館のように様々な衣装やカメラも用意された、だけど扉も窓もない空間に俺と松田は閉じ込められていた。

    まぁこの程度のお題なら何の問題もないし、むしろどんな衣装にしようか迷って部屋から出るのに時間がかかりそうだ。カジュアルな普段着からアイドルのような衣装、スーツにドレスに着物。ふわふわパステルカラーのパジャマや着ぐるみ。そして様々な制服やアニメキャラのコスチュームと思われるものまで幅広く取り揃えられている。

    どれも松田に着せたら似合うだろうし楽しみだなぁ、とウキウキしながら物色していると「おい、萩原こっち向け」と腕を引かれた。ふに、と頬に触れる柔らく暖かな感触と同時に松田が自分たちに向けたスマホからパシャリとシャッター音が鳴った。すると壁の一部が開き、外に出れる事を示してきた。

    「よし、出ようぜ」
    「は?え、何?!何で?!!」
    「何でって、元々同じ服着てんだし顔ピタ写真取りゃ出れるんだろ?」
    「お揃いって……え?まさか今着てる制服??」

    そう、俺と松田は共に警察学校に通っていて、同じ制服を着ている。お揃いと言えば確か 1156

    スギモトカズ

    DONE⑧唇にキスをしないと出られない部屋突然現れた謎の空間に閉じ込めれて早一時間。こんな所、出来ることなら一刻も早く出たいのは山々だが、扉どころか窓一つない。壁や床も一通り調べては見たが隙間もつなぎ目さえも見当たらない。壁に貼ってあった唯一この部屋から出られるヒントらしき張り紙に書かれてある事を信じるのならば今、一緒にこの部屋にいる相手と唇にキスをすれば出られる、という事になるのだが……

    「うーん、見事に隙間もないね」
    「そうだねぇ」
    「後は天井だけど、椅子もないし無理かな」
    「教官を助けた時みたいに肩車でもしようか?」
    「ははっ、班長じゃないんだし、俺が上に乗ったら萩原の肩が壊れちゃうよ」

    俺の隣で普段と変わらぬ穏やかな口調で笑っているのは警察学校の同期の一人、諸伏景光。一日の訓練を終え、いつものように五人で自習室にいたところ突然部屋が謎の光に包まれ、咄嗟に班長が隣にいた降谷の身を引き、そして俺が松田を庇うように押し出した所で一番奥に座っていた諸伏と共に光の中へ閉じ込められてしまったのだ。

    部屋の外には松田たちがいるはずだが声も聞こえないし、こちらの音も届いていないようだ。不自然な程にしんとした空間で自分と諸伏の呼吸 3684