リプがきたカプのかわいいSSを書く(零景)昔の悪夢に魘されて目覚めた午前二時、警察学校の個室の扉が控えめにノックされる。誰だよ、こんな時間に……と思ったのは一瞬で思い当たる相手は一人しかいなかった。ただ、まさか同期の一人と真夜中に殴り合いをしてボロボロになっているとは流石のオレも予想出来なかったけど……
「……ッ、」
「ごめん、痛かった?でも少し我慢してくれよ」
「ああ、悪いなヒロ。薬箱を取ってきて貰った上、手当までしてもらって」
「絆創膏じゃ全然足りないからね。よし、終わったよ」
「ありがとう」
幼なじみで、警察学校の同期でもある降谷零ことゼロの褐色の肌に白いガーゼは痛々しさがより強調される。目立つ容姿や真っ直ぐすぎる性格のせいで誰かに喧嘩を吹っかけられるのは珍しくはないが怪我をする事は滅多にない。流石警察官を目指す人間が集まる学校だけあって手練もいるようだ。
「顔の腫れはしばらく残るかもね。教官に叱られるかな?」
「まぁ、適当に誤魔化すから合わせてくれよ」
「へぇ、気に入ったんだね、喧嘩の相手」
「はぁ?冗談じゃない。一方的に売られた喧嘩を買っただけだよ。同じ教場の奴だし面倒事にしたくないだけさ」
心外と言わんばかりだが背けた顔はどこか楽しそうだった。新しい友達ができるのはいい事だけど相手もゼロと同じタイプだとエスカレートしそうで心配だ。
「だってオレとは拳で語り合ったりしないだろ?」
「ヒロはちゃんと言葉で伝えてくれるし、考えてる事も大体わかるから必要ないだろ?」
「そう?じゃあ今オレの考えてる事わかる?」
じっとゼロの青い目を見据える。一点の曇りもない真っ直ぐで澄んだ瞳は言葉通り全てを見透かされているような気になるが、残念ながらゼロの答えは少し違っていた。
「喧嘩してもいいけど怪我するな、かい?」
「んー、おしいけどちょっと違うかな、正解はオレのなんだから勝手に傷付けるな、だよ」
そう言ってガーゼ越しの頬にキスをすれば消毒液の匂いが鼻を掠める。独占欲むき出しのオレの言葉に驚いたと同時に反対の頬を紅く染めながら照れる可愛いゼロの顔が見られたので今回は許してあげることにしよう。
「それは相手に言ってくれないか?」
「ゼロがオレの為に気をつければ済む話だろ?」
「……善処するよ」
鼻頭を擦りながら困ったように笑うのは降参した時のゼロの癖。可愛くて素直な恋人の頭をよしよし、と撫でてやればゼロの顔が近付いてくる。唇が触れる寸前、手のひらで壁を作ると不貞腐れた顔をする。
「こっちは治ってからね」
「~~ッ!!もう絶対怪我しない!!」
「うん、そうしてくれ」
普段の優秀で無愛想なゼロからは想像できない程、オレにだけは素直に色んな顔を見せてくれる。それが嬉しいと言ったら今度はどんな顔を見せてくれるのかな?