好きな人に会いに行くならお洒落するだろ③あつい。暑い。熱い。
思考がぼんやりしている。目の前は霞んでよく見えない。仰向けに横たわったまま、指1本動かせない。全身にじんわりと汗をかいているのが分かる。
光が遮られた。誰かが自分に覆いかぶさっている。シャツのボタンを1つ1つ外され、晒された肌が空気に触れてひんやりした。
何をしているんだろう。何をされているんだろう。
頭がうまく回らない。なんとか起きようとすると、それを咎めるように瞼に大きな手が置かれた。視界が暗くなり、優しく撫でられると力が抜ける。
伏黒は襲いかかる眠気に抵抗できなかった。
ハッと目が覚める。
目の前には見知らぬ天井。木目。消えている照明。明るい部屋。知らない匂い。
何処だ、ここ。
ガバッと勢いよく起き上がる。心臓が嫌な音を立てている。全く見覚えのない和室に寝かされていた。布団も、今自分が着ている浴衣も、何も知らない。朝か昼か、太陽が完全に昇りきっていることは分かる。
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