【薫零】ロミジュリ3演技に行き詰っていて余計な事考えている場合じゃないのはわかっているのに、薫の頭からは先日の会話が抜けないでいた。
身を焦がすように恋する相手が零にいる。
それは薫にとって大きな衝撃だった。
弟を除けば万人を平等に愛しているような、博愛主義の象徴のような零に、特別な"誰か"がいる。
初恋のようなものだと言っていたから幼稚園の頃かもしれない、自分が先生に恋していたように零も憧れていたのかもしれない。
そう思いはするけれど。
恋するシーンの稽古をしている零はとても無邪気な顔で嬉しそうに相手を見つめて、離れれば切なそうな顔をする。その表情はとても、幼稚園児の幼い恋とは思えなくて。
見ていると何故か薫の胸が苦しくなる。
1174