「孝二、あんたそんなんしとると目ぇ悪くすんで」
幼少期に再三言われた母の言葉だ。
おれはそんな母をよそに布団に潜り続けていた。暗い中で読む児童書はなんだか特別感があって、それ以上に大事なことなど、この世にあるとは思えなかった。
「隠岐、お前は目ェと指だけ大事にしとったらええわ」
時は流れて現在。おれは十と少しの年月を経て再び注意を受けていた。
ごく一般家庭で育ち、両親の愛情をそれなりに注がれ、なのに今では立派な犯罪者に成ってしまった。
どこで培った才能か、狙撃の腕を買われ組の一員として殺したり殺されかけたりは日常茶飯事で、良く言えば飽きない日々を過ごしている。
「他にも使うてるんやけどなぁ。足とか」
「海に運んでもらえ。拾ったからにはちゃあんとボロ雑巾になっても使ったるわ」
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