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    ゲント隊長とご飯食べたいブレーザーのお話。
    ゲントに擬態するブレーザーが書きたかったのと、サングラスかけて欲しかっただけですん…。
    細かい事は気にしないでください。

    #ウルトラマンブレーザー

    教江野基地、夜。ヒルマゲントは頭を抱えていた。
    「いや…ちょっとこれは無理がある…どうするんだよ…」
     眉間にシワを寄せて呻く彼を不思議そうに覗き込んだ悩みの原因は、透き通るような蒼い瞳をしていた。
     黒い髪、大柄な体躯、浅葱色の上下。瞳の色以外のすべてがゲントと全く同じ姿をしたそいつは、つい先程まで蒼い石の状態でゲントのポケットに収まっていた。
    「ブレーザー…どうしてもその姿じゃないとダメか…?」
     蒼い目のゲントが、本人は絶対にしないであろう勢いで首を縦に振る。
    「行くとしたら、今日なのか…?」
     激しく首を縦に振る。思いっきり肯定を示されてゲントはますます頭を抱えた。

     事の発端はおそらく数日前。SKaRDの面々で焼き肉を食べに行った時である。人間の食事に興味津々のブレーザーは散々ゲントの脚を焦がし、遂には表に出てこようとまでした。帰り道にストーンに苦情を述べたのだが、物言わぬ蒼い石は無機質に沈黙していたのである。
     そして今日、1人残って夜勤をこなしていたゲントがポロリとこぼした言葉を、耳聡い相棒は拾ってしまったのだ。
    「もしお前が人間の姿なら、一緒に食事にも行けるんだよなぁ。」
     言い終わるかというところで、ポケットの中のストーンが猛烈に熱を発した。思わず立ち上がったゲントの眼の前で、ポケットから飛び出したストーンは眩い光を放ちながら飛び回り、やがて人型に落ち着いたた。
    「ええと…ブレー…ザー…!?」
     困惑するゲントの目前に、彼と全く同じ姿の男が現れたのだった。

    「そうか、うん…人の姿って言っちゃったの俺だからなぁ…」
    「ロァァイィィ」
    「あー、喋れはしないのか。」
     首を傾げた彼の口からこぼれたのはいつも戦っている時に発する音と同じものだった。どうやら完コピしたのは外観だけで、発声器官は対象外だったようだ。
    「でもなぁ…そのままじゃ出られないんだよな…」
    目、凄い光ってるし。
     基地の食堂は夜勤の隊員向けに夜間も営業している。今日のところはそこで勘弁してもらおう、そう思ったゲントだったが、基地を出なくても問題がいっぱい。なんせこのまま食堂に行ったら、ゲント隊長が2人並ぶことになってしまう。職員の大半は顔見知りだ、流石にびっくりさせてしまうだろう。なんと言い訳するにせよ蒼く光る瞳は隠したほうが良い。それに隊服も。
     思考を巡らせたゲントはふと、ロッカーの中身に思い至った。
    「ブレーザー、わかった。一緒に食堂に行こう。あと10分程でアンリに交代なんだ。俺も夕食採らないとな。」
    「ウルァァイ」
    「でもその前に一つ、いいかな?」
    「フルルァァィ?」

     約15分後、教江野基地の食堂に2人の男がやってきた。片方はSKaRDの隊長ヒルマゲント。もう片方は―
    「こんばんは、ゲンちゃん。お連れ様?」
    「こんばんは。ええ、田舎から出てきた…えっと、従兄弟です。ちょっと見学に、ね。」
    「あら、従兄弟さん。こんな時間に。よく似てらっしゃるのね〜」
    「はは…昔からよく言われます。」
    「で、今日は何食べる?何でも作るわよ~」

     同じメニューを頼み、同じサイズのどんぶりをお盆に乗っけて席につく。ゲントの私服に身を包み、ゲントのサングラスをかけたブレーザーは表情こそ無いもののなかなか上機嫌の様だ。
     うん、服装を変えて、サングラスをかければ並んでも別人に見え…見え……まぁなんとかなる。夜間営業で照明を落とした食堂だからかろうじて、という感じだが、ひとまず調理場のスタッフはごまかせた。カウンターから1番遠い席に陣取り、並んで食事を始める。
     意外にも器用に箸を操りカツ丼を頬張る彼をぼんやりと眺めた。サングラスの奥でかすかに揺れる蒼い光がなんとも楽しげだ。戦っている時は非常にハイテンションだが、彼なりにわきまえているのか今は物静かだ。よく似た血縁者でごまかしたが、自分の顔は自分でわかる。直で見ることはないからちょっと新鮮ではあるが。
     
    「ブレーザー、美味しいか?」
    小声で話しかける。
    「ロァイ」
    小さな返事が帰って来る。
    よかった。興奮して飛び回ったらどうしようなどと考えていたが杞憂だった様だ。ていうか、彼が食べたモノはどこに行くんだろう。そもそも食事とかするんだろうか。なんてことを考えながら、気付けば2人のどんぶりは空になっていた。

     食堂をあとにし、ロッカールームの前まで戻ってきた時だ。今CPにはアンリが居る。彼女にどう説明しようかと考えているとふいに、背後から声がかかった。
    「ゲ…ン……ト…」
    慌てて振り返ると、彼は微かに笑みを浮かべている様だった。サングラスを外し、蒼い目がこちらを見つめている。
    「ブレーザー今のは君が」
    「マタ…タベル…イコウ」
    たどたどしい発音で言葉を紡ぐ。
    「あ、あぁ、また行こうな。」
     次の瞬間、激しい閃光が走り、彼の姿は消え失せていた。足元に、彼に貸してやった服とサングラスが落ちている。ポケットの中に温かみが戻ってきたのを感じてゲントは笑みをこぼした。どうやら今日はかなり楽しかったようだ。
    「あぁ、また一緒に食事にでも行こう。」
     小さく語りかけて散らばった服をロッカーに片付けた。




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