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    ゲントが窮地に陥った時、ブレーザーさんが彼の身体を借りて助けてくれた話
    ほぼほぼ捏造。
    細かい事は気にしないでください。

    Xでアンケート取った結果及び書いた人が生身スパイラルバレードに固執しているせいで哀れにも文字通り木っ端微塵に焼かれた宇宙人さんですが、基本ノーモチーフです。円谷作品にたまにいるなんか飄々とした感じの異星人的なやつだと思います。

    #ウルトラマンブレーザー
    #ヒルマゲント

    蒼と炎[クソッ何なんだあの人間!なんで動けるんだよ!]
    薄暗いビルの間、彼は今大いに焦っていた。簡単な仕事のはずだったのだ。この星には同業者はほとんど進出していないと聞いていたし、いわゆる防衛隊もさほどの規模ではないと。だがしかし、どうして気づかれたのだろうか、いつの間にやら複数の尾行者がついてきていた。

    何とか振り切ろうと慣れない街を走り回り、大半の追っ手を撒いたはずだった。ただ一人、執拗に追ってくるその男に気づいたのは、日が傾き辺りを薄闇が覆い始めた頃だった。捕まると後々面倒だ、一人だけなら何とか対処できるか、そう考えた彼は追っ手を誘い込むことにした。手持ちの端末で周囲をスキャンし、人気のない場所へ向かう。喧騒から離れた路地裏、端末のジャミング機能が十分に働いていることをを確認した彼は、追っ手の方に向き直った。
    [追ってきてるのは気づいてる。姿を見せたらどうだい。]
    しんとした路地の暗がりにやがて一人の男が姿を見せた。大柄な体躯と黒いキャップに黄色の上着。よくこの目立つ服装で尾行ができたものだ。
    「気づいていたなら話は早い。とりあえず手を上げてもらおうか。」
    尾行者―ヒルマゲントは静かな口調で男に銃を向ける。
    [ふぅん、この星では異星人に対してまずそういう態度をとるのか。野蛮なものだなぁ。]
    「そうか、ではなぜ逃走した。こちらは再三呼びかけたはずだが?逃げるということは後ろめたいのだろうと判断したのだが。」
    […わかってるじゃないか。]
     後ろめたいのは当たり前だ。なにせ、彼の仕事は大概の場合犯罪行為と呼ばれるものだ。地球人のフリをしてアポを取った非合法組織との密会、今日の主な目的はそれだった。うまくいけばこの星に麻薬の密売ルートが組める。基本、そういう行為はその星で望まれることではない。
    ここで捕まるわけにはいかないのだ。犯罪者の自覚がある以上、見つかってしまったからには追っ手を振り切り逃げるしかない。様々な星を飛び回ってきた彼には、そういう思い切りの良さはあった。
    相手に思考の暇を与えてはいけない。ノーモーションで仕留める。地球人ではありえない膂力で地面を蹴って距離を詰めた彼は、ゲントのみぞおちに重たい一撃をたたき込んだ。はずだった。渾身の力を込めた拳はしかし、身体に食い込む前に受け止められた。
    [ほう、俺の拳を受けるのか、この星の人間にそこまでの力があったとはねぇ]
    「これでも特殊部隊なんでね。攻撃してくるってことは、そういう事なんだな。」
    ならばこちらも相応の対処に出ざるを得ないね。一旦距離を取ったゲントはそういって拳を構える。相手は宇宙人だ。見た目は人間でも今の力から考えてこちらよりも強い可能性が高い。味方を呼んでいる余裕はなさそうだし、さっきから通信機からはノイズしか聞こえてこない。

    [なかなかやるじゃないか]
    二手、三手、拳を交わして分かったことがある。この人間はそう簡単に膝を折ってはくれない。タフな上にその体躯から放たれる攻撃は強力だ。この星の格闘術はそこまで厄介ではないと踏んでいたが、使い手によっては俺たち相手にも脅威になりうる。そこまで考えて、彼は奥の手を使うことに決めた。
    再び距離を詰めた彼は、胴を狙うフリを入れて首筋に拳を滑らせる。
    「なっ…⁉」
     拳が当たったのはほんの一瞬のはずなのに、一気に体の力が抜けてゲントは膝をついた。全身を瞬く間に包んだ激しい痺れに息が詰まり、這いつくばる格好になる。
    「こ…れは…貴様っ…」
    [悪いなぁ地球人、捕まるのはご免でね。なに、死にはしないだろう。しばらく動けまいがな。]
    掌に握り込んだ銀色の小さな物体。充填した毒を相手の体内に一気に流し込む、強力な暗器だ。使ったのは即効性の痺れ毒。多くの場合重篤化はしないはずだがこの星の人間にどう効くかの実証はされていない。この場を切りぬけられたなら後の事は知らんのだ。
    [俺はまだこの星でやることがあるんだ。まぁでも、今回はこの程度で見逃してやるよ。これに懲りたら二度と俺を追ったりしないでくれ、君の仲間にもそう伝えてもらおうか。次はその命、貰うことになるだろうよ。]
    動かなくなったゲントを、喋りながら異星人がのぞき込む。フン、と鼻を鳴らした彼はおもむろに脚を上げ、思い切りゲントを蹴りつけた。マヒした身体に鈍い痛みが走ったその時だった。グラグラとゆがむ視界の中、ゲントはポケットの中で蒼い石が光るのを知覚した。
    [おやぁ、まだ動けたのか。丈夫な奴だなぁ。]
     倒れ伏していた地球人が、ゆらりと立ち上がったことに驚く。そして―
    なんだこいつ。それが彼が抱いた感想だった。
     纏う雰囲気が先ほどと一変している。不規則で、不可解で、得体の知れない気配を纏ってその地球人は腰を落とし、低い姿勢で構えた。

    [クソッ何なんだあの人間!なんで動けるんだよ!]
    数分後、裏路地を全速力で逃げる彼の姿があった。何もかもがおかしい。打ち込んだ毒は確かに効いていたはずなのだ、どうして、倒れる前より素早く動けるんだ。地球人にあそこまでの膂力があるのか、拳の威力が段違いだ。なんなんだ、あの目は、あの蒼い眼は。本当にアイツは地球人なのか、外星人ならどうして地球人のフリをしているのか。完全にパニック状態の中、初手で食らった膝蹴りが食い込んだわき腹を押さえ、路地裏を走り続けて数分。後ろの気配が消えたのに気付いて立ち止まった。おそるおそる振り返った背後には誰も居ない。わずかな月光が差し込むビルの隙間で静かに埃が踊っていた。
    何とか逃げ切ったようだと思わず息を吐いた刹那、全身の毛が逆立つような感覚を覚えた。あぁ、あの蒼い光。蒼く燃え上がる炎のような光を脳の底で知覚した。逃げ切ってなどいない。

    [お前、お前は何なんだよ!なんで!なんで毒が効いてないんだ!]
     悲鳴に近い声を上げ、いつの間にか距離を詰めていた相手に無我夢中で拳を振るう。
    確実に当たった拳はしかし、何の効果も挙げていないようだった。びくともしないのだ。
    「uuuuuuuurrrrrrraaaaaa」
     突然の咆哮に思考が停止する。なんだこの声、とても、とても人間とは思えない。そして、叫んだそいつはすさまじい顔をしていた。蒼い眼がギラギラと光を放ち、顔の左半分に蒼い光がまとわりついている。
    [誰…だ…?]
    全身から立ち上る気配は明確に激しい怒りを示している。そう、怒っているのだ。
    「uuuu....」
     言葉のていを成さない独特の唸り声と共に、一歩、また一歩と近づいてくる。これはもう、逃げるほかに道はない。長年の経験からくる勘がそう叫ぶ。そして、彼の勘はこうも告げていた。この狩人から逃げることなどできない、と。
    [助けてくれ…]
    恐怖に覆われた視界の中で、そいつの掲げた右手から光渦巻く槍が現れた。




    敵対異星人との交戦記録
    (中略)
    ・〇月〇日、○○市内にて、観測員の報告により異星人の可能性がある人物を尾行し、接触。敵対異星人であるとの確証を得たため交戦し、これを排除した。以下、実際に対処に当たった隊員による報告を元に記載する。

    ・〇時頃、尾行開始。
    ・〇時頃 逃走を測ったため追跡。
    ・〇時頃 当該人物と接触。
     こちらの呼びかけに対し、敵対意思を示し攻撃してきたためやむを得ず交戦開始
     何らかの通信妨害機器を所持していたとみられ、この間の通信が遮断されていたため、当該隊員単独での対処となった。
     未確認の携行武器及び、未知の毒物を用いた攻撃を行ってきたため、武器を攻撃したところ想定外の挙動が発生したとみられ、武器本体が爆発した。これにより異星人は死亡、周囲の建物外壁などに一部被害が発生した。
     なお、異星人の遺体は原形を留めておらず、断片のみ回収した。所持していたとされる武器の類については、爆発により破壊されたものと思われ、ごくわずかな細片が確認・回収されている。異星人の使用した毒物について、当該隊員の体内からごくわずかな量が認められた。現在解析中である。
    (中略)


     医務室のベッドで報告書の文章を確認しながら、ヒルマゲントはぼんやりと記憶を反芻した。正直、毒を打ち込まれてからの記憶はあいまいだ。体が勝手に動いていたような気がするし、意識がはっきりした時には周囲は真っ黒に焦げ、目の前には何かのかけらが散らばっていた。爆発音に駆け付けた隊員たちに囲まれ、終わったのだと安堵した瞬間、今度こそ本当に意識を飛ばしてしまった。
    「ブレーザー、君が助けてくれたんだよな。」
     状況からみて恐らく、相棒が出てきてゲントの体を使い、打ち込まれた毒をあらかた分解し、異星人を倒したのだろう。両手のひらが薄っすら火傷の様になっている。これは多分。
    「俺の体であの槍使っただろ。」
     そんなこともできたんだなぁと感心する一方で、敵が文字通り粉々になってしまったのだ。そこだけは、失敗だった。捕らえて目的を聞き出すこともできただろうに。
    「言い訳考えるの大変だったんだぞ…。」
     あの異星人には申し訳ないが、持ってもいない未知の兵器のせいにさせてもらった。これなら上も文句を言わないだろう。
    「まぁ、その、それでも助かったよ。ありがとう。」
     掌の上で、蒼い石が楽しげに光っていた。



    おまけ

    遠い宇宙のどこかの星。とある町の小さな店で。

    [少し前からあいつの姿を見ないね。]
    [そういやそうだな、最後に会った時に何か言ってなかったかい?]
    [辺境の星に新ルート開拓に行くんだって言ってた。]
    [あぁ、俺、あいつから通信来てたよ。]
    [なんて言ってたんだい?]
    [もうすぐ商談ができそうだって、ずいぶんと調子が良かったンだけどな、その直後に連絡が途絶えてサ、最後に意味の分からない言葉が連なって、それっきり。]
    [何かトラブルにでも巻き込まれたとか?]
    [たぶんネ。]
    [ま、あいつもだいぶ危ない橋渡ってたんだ、何かあっても仕方がないさ。]
    [その星ってどこ?]
    [ええとね、○○○○。]
    [うーん、近づかないほうが無難かなぁ。]
    [だろうな、あのベテランが消息を絶った星なんだ、何かあるんだろ。危ない道は通らないのが商売繁盛と長生きの秘訣だ。]







     
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