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    nathuki_tw

    twst🐚寮イドアズ(ジェイアズ寄り)🐉寮マレシル

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    フォロワーさんとのなんちゃって企画w
    6月なのでジューンブライドなイドアズ。

    #イドアズ
    idoas

    6月の福音それはもう何年も前の記憶…陸では紫陽花が咲き乱れ、薄暗く重い色をした雲が天空を支配する日々の中に訪れた梅雨晴れの日。
    真っ白なウェディングドレスと華やかなヴェールを纏った花嫁と真っ白なタキシードを来た一組のカップルが海辺にある教会で結婚式を上げていた。
    賑やかで華やかなその様子を好奇心が旺盛な3人組の人魚が、それはとても興味深そうに眺めていたのだ。
    それが陸でいうところの番の契約である事を知ったのは訓練学校で陸の基礎知識を学んで居た時であり、アズールはそんな日の事をスマホの画面に映っている日付を見ながら思い出していた。

    「六月はジューンブライドという言葉があるので、何かラウンジのイベント事に使えるのではないかと思ったのですが…男子校の僕達には無縁でしょうね。」
    「この季節は雨が多く湿度も高めですからね。おそらく稀少な晴れの日に行われるセレモニーが特別に感じるのでしょう?」

    アズールの独り言にそれらしい回答を述べながらジェイドは温かな湯気が立つ香りの良い紅茶を差し出してくる。

    「確かに学内はここ最近続いている雨で陰鬱とはしてますね…」
    「寮内の海中もこの雨続きで水が濁ってますし…あぁ、アズールがおっしゃっていた水槽のメンテナンスですが、今週末になるそうですよ?」
    「稼ぎ時の週末にラウンジを開けないのは大変残念です。」

    紅茶を口にしながら週末に学園で経営するラウンジを営業できない事を残念がっていれば、聞き慣れた足音が廊下からVIPルームに向かって近付いて来ていた。
    足音の主はVIPルームの扉を勝手知ったるとでも言うようにノックもなく開け放ち、ジェイドの風貌によく似た双子のフロイドが酷く上機嫌で入室してくる。

    「ピクニックに行こ〜」

    唐突に思い付きを口にすることはフロイドにはよくあった事だが彼は酷くウキウキしている様子で、ジェイドとアズールに笑顔を浮かべていた。

    「いいですね。週末はラウンジも休みですし、天気も良いらしいですからね。」
    「ジェイドは賛成してくれると思ってた!オレら3人一緒に休みなんてめったに無いんだし、ね?いいでしょ?アズール。」

    フロイドの言葉とジェイドの同意を求めるような視線に、アズールは紅茶のカップをソーサーに戻しながら小さく息を着いた。

    「どうしますかね…。」
    「えぇ~…週末学校もラウンジも休みなんだから別にいいじゃん。」
    「休みは休みでやらなければいけない事があるんですよ。」

    次のテスト対策の虎の巻を準備し無ければならなし、ラウンジの期間限定メニューの考案と仕入れ先の選定…やらなければいけない事が山済みだ。
    学業に支障が出ない為の体力回復の睡眠時間も確保しなければならない、学生にして経営者でもあるアズールは多忙の身なのだ。
    そんな多忙のアズールを支えてくれる友人で恋人の双子のこのウツボ達の事は大切に思っている。

    「良いではありませんか、アズール。次のテスト対策の資料やラウンジの期間限定メニューの事なら、僕やフロイドもお手伝いしますから…3人でピクニックに行きましょう?」
    「そうそう、ジェイドもピクニックの料理作ってくれるし、アズールはオレらの作るご飯好きでしょ?」

    二人のこの言葉はずるい…と、アズールは思うと同時に何か言いかけた口は静かに笑みを浮かべて肩の力を抜くのであった。

    「そうですね。ピクニック…いいかもしれません」

    アズールの同意の言葉を聞くのと同時にジェイドとフロイドの肩の力も抜くとお互いに目配せをすると、柔らかな笑みをお互いに向けた。それは3人の中に同じ楽しみが出来た問う言う証でもあった。


    ───…当日



    天気予報通りそれまでの曇天の空が嘘の様に抜けるような青空で、その天気はまさにピクニック日和であった。
    今日のこの日が楽しみで、なかなか寝付けずに居たなんてアズールは言えなかったが、それは恋人のジェイドとフロイドもそうであったようで…朝方に目が冴えてしまったアズールがラウンジの厨房を覗けば、二人が忙しなくお弁当の準備をしているのを目撃した。

    「おはようございます。」
    「おはようアズール」
    「おはようございます。…ふふふアズールも寝付けなかったのですか?」
    「僕“も”というと…お前たちも?」
    「そう、オレもジェイドも、今日が楽しみで中々寝付けなくって、二人でお弁当の準備してたんだ。期待して良いからね?」

    幸せを隠しもせず瞳を穏やかに細めて微笑んだフロイドに、ジェイドも習うように小さく笑った。

    「お前たちの料理はどれも絶品ですからね。えぇ、楽しみにしてます。」

    言いながらアズールも腕まくりをして冷蔵庫を開ける姿を見たジェイドとフロイドが目を丸くする。

    「僕もお前たちの為に何か作るとしますか」

    アズールの手料理…その魔法の言葉にこのオクタヴィネルの海の魔女にして友人で恋人である彼に首ったけなウツボの双子がさらに熱を上げてしまうのであった。











    深海では見る事が無かった光と緑が溢れている。湿気のない涼やかで過ごしやす風が3人の頬を撫でる。
    ピクニック先に選んだ草原には、この晴れ間の太陽の光を待ち望んだように色取り取りの花が咲き乱れ風にそよいでいた。
    悪だくみをするでもなく、ただこうして3人で休日を恋人として過ごすなど随分と久しぶりだ…と、思いながらアズールはフロイドが『ココにしよう!』と、キャンピングシートとラグを敷いた大木の木陰でジェイドが用意してくれた紅茶を味わいながら思っていた。
    二人の作っていくれた料理はどれも絶品で、アズールが作った二人用の料理は真っ先に二人が食らいつくしてしまった。
    本当に美味しそうにアズールが作った料理を食べる姿に、作った本人であるアズールも満足げな笑みを浮かべると、そっと伸ばしたアズールの両手は二人の口元に着いたシーザードレッシングのソースを拭ってやる。

    「アズールありがとう」
    「ありがとうございます」
    「本当…お前たち兄弟は…クスクス」
    「だってアズールがオレらの為に作ってくれたんだろ?」
    「僕らの為に作ってくれた貴方の料理なんです。僕らがはしゃがない訳ないじゃないですか。」
    「あ~もう…お前たち…最近どんどん図々しくなってるよな?」

    二人の言葉に微笑んでいたと思っていたアズールの表情は次は頬を染め目元も紅くさせた。
    照れていることなど明白であり、そんなアズールの仕草に恋人の二人も嬉しそうな笑みを浮かべてくるものだからアズールは一つ息を着いて残っている紅茶を煽った。

    「ふふふ、アズール紅茶のおかわりは?」
    「……いただきます」
    「そうだ!オレちょっと行ってくる!」

    思いったように立ち上がったフロイドにアズールが何処に行くのかと問えば、フロイドはニコニコと笑みを浮かべたまま二人の目が届く所だから大丈夫っと、花々が咲き乱れる付近へと走り始めた。

    「何か思いついたんでしょうか?」
    「フロイドのとこですから、きっと面白い事ですよ。」

    ジェイドと共にアズールはフロイドを眺めていた。
    それにしてもなんと穏やかな気候なのだろうか…木陰で木々の揺れる音と木漏れ日…そしてこの涼し気な風は酷く心を落ち着かせ、アズールは紅茶を手にしながら微睡んでしまう。

    「横なって昼寝をしても構いませんよ?なんなら添い寝をしましょうか?」
    「この微睡みが心地よいのですよ。お前たちだってあまり寝てないだろう…」
    「今日はとても良い気候ですからね…アズールが微睡むのも仕方ありません」


    草を踏む音が近づいてくるのに、フロイドが戻って来た事をアズール感じ取った。
    目を閉じていても、アズールはこの双子の気配をどちらがどちらであるか分かる所までである。ラグの上に戻ったフロイドがアズールの頭の上に何かを乗せた感触に、何の悪戯をしているのかと片目を開けてフロイドを伺えば、視線の先のフロイドとジェイドはとても嬉しそうに微笑んでいるではないか。この笑顔は悪戯が上手く行ったというよりは酷く喜んでいるという方が正しい笑顔だ。


    「アズール、とても綺麗です。似合ってますよ。」
    「アズールすっごく綺麗だよ。」


    言われて次は完全に両目を開き頭の上へと手が伸びて行く。カサリと指差に触れた感触と僅かに散った花びらからそれが花の冠である事が分かった。

    「花冠?」
    「そう、この前コバンザメちゃんが作ってるの見て、面白そうだから教えて貰ったんだ」
    「ラギーさんが?なんで花冠なんて…」
    「近所の稚魚達に作ってやるんだって言ってたよ。」

    ラギーがあれで意外と面倒見が良い方であるのをおもいだしながらアズールは再びフロイドの作った花冠に視線を向けているとそれを見ていたジェイドが思い付いた様にフロイドに声を掛けた。

    「フロイド」
    「うん、ジェイド」
    「?」



    急に二人が立ち上がるのをアズールが首を傾げながら目で追っていると、二人は酷く優しくこれから飛び切りの宝物を見せるとでも言いたげな眼差しをアズールに向けていた。

    「直ぐに戻ります。」
    「大丈夫、アズールの目の届く所に居るから」


    アズールがオーバーブロットを起こしてからはジェイドもフロイドも授業中以外は片時もアズールの傍を離れようとはしなくなった。少々過保護にも感じるが…それだけ自分を大事にしてくれているのだと分かってはいるので悪い気はしない。
    先程までフロイドが花冠を作っていた場所にジェイドもしゃがみ込んで二人で何やら話をしながら花を手に取っていた。ジェイドとフロイドの大きな手が器用に花の茎を編み上げているのが遠目にも分かる。二人の姿を視界の端に見やりながら手持ちぶたさにスマホのマジカメアカウントを覗いていればそう時間は掛からないうちに双子はアズールの元へと戻って来た。

    「アズール」
    「アズール」

    二人同時に名前を呼ばれたことにアズールの視線が声のする方へ向くと案の定嬉しそうな顔でこちらをみているジェイドとフロイドがいた。
    お弁当を詰め居ていたバスケットに入れてあった真っ白なクロスを手にしてそれを二人同時にアズールに被せ、アズールは何事かと瞬きを何度も繰り返した。真っ白なクロスに花冠…そんなアズールの姿を見たジェイドとフロイドは同時に頬を染め上げ、うっとりと目元を赤くする。

    「あぁ…やっぱり綺麗だ…」
    「うん、すごく良いじゃん」
    「?」


    二人だけが納得している様な物言いに、アズールは首を傾げていれば、二人はアズールと視線を合わせて来た。アズールの大好きな黄金色と橄欖の対の瞳がアズールを見詰めている。

    「アズール…今の貴方まるで花嫁のようですよ?」
    「は…なよめ?」

    花嫁と言われて今の自分の姿をアズールは改めて視線を巡らせると、頭から被せられた真っ白なクロスはさながらベールの様で…それを『綺麗』だとか、『良い』だとか言っていたのだと思うとアズールの頬は朱色に染まった。

    「おっお前たち!!」
    「綺麗な花嫁さん」
    「どうかこれを受け取って下さい…僕らが作りました」

    ジェイドの手にあったのは二人が先程大きな手で器用に作っていた花の指輪であった。
    先程フロイドが花冠を被せてくれた様に、ジェイドは二人で作った花の指輪を呆然としているアズールの左手の薬指にへと通していった。植物で出来ているそれは収縮がある程度効き、アズールの左指の根元へとすんなりと収まる。

    「えっと…これでなんて言うんだったっけ…?病気の時も元気な時も…?」

    フロイドの言葉に合っているという様にジェイドは頷き、続けるように言葉を繋げた。

    「喜びの時も、悲しみの時も…」
    「「富める時も、貧しい時も…僕ら/オレらはアズール・アーシェングロットを愛し、敬い、慰め…助け…この命ある限り真心を尽くすことを誓います」」



    誓う神もいない場所で…こんな子供のままごとの様な結婚式の真似事にも関わらず、アズールの胸の中に温かな物が流れ込んでくる。
    人魚がする人間の婚姻の真似事なんだ…誰かに笑われても…この誓いをアズールだけが聞いて二人の愛を独占出来ている真実が酷く嬉しかった。


    「アズールも…どうか」
    「オレたちに誓って?」



    声が震えていた…自分はちゃんとあの誓いの言葉を繋げて居るのだろうか…。それでも、アズールも例えままごとや真似事であっても…彼らの真似事に付き合ってやる。



    「健やかな時も病める時も…喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しい時も…僕はお前たち二人を愛し、敬い、慰め、助け…この命ある限り真心を尽くすことを誓います」
    「僕らが僕ららしく居られるのは…アズールがいるから…」
    「オレらがオレららしく居られるのは…アズールがいるから…」



    愛しくて…嬉しくて…悲しくて…切なくて…悔しくて…もどかしくて…
    二人の唇が同時にアズールの唇の半分に触れ合った。
    この愛を貫こう…独り言の様に心にアズールは刻むと、その甘やかな雰囲気をぶち壊す様にアズールは急に立ち上がり、ジェイドとフロイドが花冠と指輪を作った花畑へ歩みしゃがみ込んだ。
    簡単な知識とジェイドとフロイドが作った様な形の良い指輪では無かったが、大急ぎでアズールが作り上げた二つの花の指輪は酷く不格好で、お世辞にも上手に出来ているとは癒えない代物であった。顔をしかめて出来上がった指輪を不満そうに見詰めるアズールに、ジェイドとフロイドは人前では見せる事のない破顔した笑みを浮かべている。


    「まっ…間に合わせで作ったんです!!今度、もっとちゃんと練習して、綺麗に出来たのを差しあげます!」
    「いえ…」
    「うん…」

    上手に作れなかったのを悔しそうに言うアズールの手の中にある不格好な花の指輪を、ジェイドとフロイドは静かに取り上げるとそれは幸せそうに自分たちの左手の薬指に通して行く。

    「これがいいです…」
    「うん、これが良い」
    「あぁっ!もうっ…!」
    「ふふふ…惚れ直しましたか?」
    「アズール顔真っ赤じゃん、茹でだこちゃん可愛い」
    「煩い…っ!…そうですよ!惚れ直しました!
    でも、後で正式な金属の指輪を買いに行きますよ?いいですね!」
    「はい」
    「はぁい」



    六月の晴れた週末…抜けるような青空の下。
    彼ら人魚の番を祝福するように、小鳥たちが福音の歌を歌っていた。




    ー終ー
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