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    あんな

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    タイムトラベラーフェルナーが未来へ閣下と帰還する話です。設定とか内容がふわっふわです。フェルオベです。

    簒奪日和「さあやって参りましたローエングラム王朝第54代皇帝タイトル防衛戦、相対しますは発足期よりの宿年のライバル、ミッターマイヤー!本日の種目はボクシング!!果たして王冠はどちらの手に渡るのか!?」

    解説者は声を張り上げる。熱狂と興奮を隠そうともせずに。楽しそうに。
    私の望んだ未来とはかけ離れている。だが、ここには千年の貴き平和があると言う。
    「いかがです?こうした趣向が手を変え品を変え、今では民衆の一番の娯楽となりました。多少騒がしいですがおれはこの簒奪制を気に入っています。何より大量の流血と社会的混乱が無い。未来にはもっと洗練されて残るのでしょうね」

    私はこの世界ーーー未来について何も知らない。ついさっき目覚め、見知らぬ調度品の中顔を覗き込んできた見知った男に、アントン・フェルナーに置かれた状況の説明もそこそこに見せたいものがありますと連れてこられた。
    見慣れぬ造形の地上車に乗り込み、流れる街を眺めた。建造物はあまりに豊かで空気は清浄。短いドライブで辿り着いたのは開放型の大衆劇場らしかった。入り口で音が鳴ると地上車は変形し、全天スクリーンを装備した球体となった。これが席となるようだった。閣下は飲み込みが早くて助かります。とフェルナー。
    球体は音もなくリフトで運ばれ、劇場内のかなりの上位位置へ固定された。良席なのだろう事を直感した。周囲の様子は伺えない。球体が並んでいるが鏡面になっているもの、中が窺えるもの様々だ。そして始まったのがこの、チャンピオンマッチである。

    「おれの正体はいわゆる未来人でした。特別な許しが出て、閣下の死体を連れてこの時間へ帰還しました」
    ぼんやりとした情報に耳を傾けながらタイトルマッチを観戦する。アレクサンデル54世の左ストレートが決まった。
    「死者の蘇生が限定的でありますが解禁されているのです。おれは恩賞として閣下の復活を望みました。出過ぎた真似をして、申し訳ありません」
    おそらくフェルナーは未来でも秘密作戦へ従事する身分なのだろう。そして私にそれとなく伝えている。私を戸籍上近い存在へ迎え入れるつもりかもしれない。例えば婚姻など。
    ふと、自分が生き返ったことをようやく理解した。私は死んだのだった。それをこの男が生き返らせたのだとーーーそれでも混乱は無かった。私にとって生死など目的の為にはどうでもいい事だったのだから。目の前で繰り広げられる大スペクタクル。生身の人間の原始的な攻防。これが大規模な戦争に取って変わったというのなら、どんなに幸福な事だろう。
    「おれは、これをお見せしたかったのです。閣下、あなたが種を撒き、受け継いだ人々がいて、おれはこの平和を享受しています」
    「フェルナー」
    「はい」
    「これはプロポーズか?」
    「はい」
    フェルナーは破顔した。初めて見せた屈託のない笑顔だった。私はそれが嬉しかった。
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