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    縒@ぬ🦀

    おおよそ、ぬ🦀のあれこれ書きます。多分えちは少なめ多分

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    縒@ぬ🦀

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    身内のワンドロで書いたやつ

    #エイエド
    aed

    休日自分の中では完璧にこなしていると思っているんだろうな、と、しゃんと背を伸ばして廊下を歩く騎士服を纏った副団長の背中を追う。確かこの間は今日は非番と言っていた筈だ。いつでも職務に追われっぱなしの男に、いつになったら俺に構ってくれるんだと大人げなくもごねたら次の休みにはと予定を教えてくれたのだ。
    それでも、いつもと変わらない服装を見るに、今日は休みでは無くなったのだろうか。
    それでも、屋敷まで来ているのだから、仕事、ではないのだろう。
    どうしたものかな、と思いながら、必死に取り繕っていてもエドモンドが酷く疲弊しているのは見過ごせない。自分の限界を知らない。何度もその限界を超えて散々な目に遭っているくせに一向に直せない頑張り屋を、どうやったら怒らせずに褒めてやれるだろうかと考えながら、ずいずいと前を進む男を黙ってエイトは追いかけた。
    明らかに誰かを探す様子の男を見て、探し物はなにかなと首を傾げる。
    俺の屋敷なんだから、主である俺に用があるのだろうとは思うが、いつの間にか大所帯になった今自身満々にアイツの目的は俺だろうと言えないのが少し悲しい。大方、エスターあたりに話に行って、全てが整った頃に呼ばれるのが関の山。小難しい話に参加したところで頭にも入ってこないし、それならば、もう少しで読み終わりそうな小説でも読みに行った方がいいだろうかと頭を掻いた。
    「あっ、副団長~」
    丁度良く、軽快な吸血鬼の声が廊下に響く。
    約束でもあったのだろうか、来客に驚く様子もなく、声のする方に身体を向けた男もそれをすんなりと受け入れていた。
    (やっぱり俺に会いに来たんじゃないんだな)
    そう思いながら、これ以上の詮索は野暮だなと、杜撰な追跡を打ち切ろうと踵を返す。
    くるりと回ったただっ広い廊下には人影もなくて、目的を失えばそこは酷く長い道のりに思えた。エドモンドを見つけてからここまで何も気にしなかったが、ここから部屋に戻るには随分と億劫だなと思うほどに、遠く迄来ていたらしい。
    窓を見れば、見慣れた庭が広がっている。
    このままここを突っ切った方が早いが、エスターのペットをまだ上手くあやせる自身もないし。仕方ない。ちゃっちゃか歩くか!と鼓舞するようにパーカーの袖をまくると、エイトと背後で声がした。
    不意に振り返れば、エスターに呼ばれた筈の銀髪が、その扉の端で揺れていた。
    なんだバレていたのか。と思うと、バツの悪さより、気付いていたんなら声掛けたかったなという後悔が先に立つ。
    「こちらの話が終わったら、君の部屋に行ってもいいか」
    そう問われて、へらりと笑ってしまう。
    少しだけ伏せられた瞳が、扇情的で。それが疲労からくるものと知っていながら、身体の奥がむくむくと劣情を生む。約束を忘れていなかったことが嬉しくて、頷くほかにない。「勿論。なんならずっと此処で待っててもいい?」
    「こんな、何も無いところで待つなんて君は馬鹿か。それなら中で……」
    「いやいや良いんだ。大事な話をするんだろ。俺がいたら邪魔になるだろうから」
    「いや、まあそれは」
    優秀な眷属たちが、自分が居るだけでほんの少しネジを飛ばす頻度は低くない。丸く収まる話も、たがを外したせいで変な所へ転じていく様を幾度となく見てしまっては自分が邪魔だということを認識せざるを得ない。そうしてその波乱に一番巻き込まれ、疲弊する素直な男はそれを否定する言葉を濁らせた。それが何よりもの答えである。
    それなら椅子を用意させよう、と言われて。そんなのに座ってたら、なんだか面接を待つ求職者みたいだなと苦笑する。やっぱり何しても迷惑かな。そう思うと殊更顔がふにゃふにゃと緩むのが判った。目の前の律儀な男に気取られないように、笑った顔はだらしなくなっているといいな。
    「判った。じゃあ大人しーく待ってますよ」
    ちゃんとベッドは温めておくからさと付け足せば、白い頬が一瞬で赤みを増す。恥ずかしさからか怒りからか、一瞬で血を集めた顔が面白いほどに桃色に染まっていくのを見送りながら、今度こそ身体を元いた方へと向けた。もとより今日はエドモンドを甘やかす日なのだから、奴の困らせることはしたく無かった。なんでこんな日まで仕事着なのか、とか。なんで真っ先に俺のとこに来ないの、とか。自分本位な文句はいっぱい溜まっているけど、それでもいいや。男が、部屋に来ると言った。無意識にでも期待を込めて放たれた誘い文句のお返しに、とろっとろに甘やかしてやろうと思うとその足取りも軽くなった気がした。
    本当のことを言えば、この道は、手繋いで帰りたかったけど。
    でも、進言したところで叶わなかったろうし。
    いつか、進んで向こうから手を繋いでくれるようになったらいいなと笑いながら、ぐっと両手を上げてひと伸びして吸い込む空気は晴れやかだった。
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