うちの子チャンドラ視点
「あ、アーノルド君!お疲れ様〜!」
ミレニアムのブリッジで共に訪れたノイマンはアーサー・トライン少佐にそう声を掛けられた。
(アーノルドくぅん…?)
いつの間にそんなに親しくなったのか。
(そういえばこの間合同で任務に着いたって言ってたっけ?)
あの任務のあとノイマンは少し前向きになった様だけど、だけど、こんなに親しくなったなんて聞いてない。当のノイマンはその呼び方に何も違和感なんて感じていない様子で呑気に「お疲れ様です、トライン少佐」なんて返している。
別に今さらノイマンのことをアーノルドと呼びたいわけでもないし、自分も今さらダリダとか呼ばれたくもないが。
(逆に鳥肌立ちそうだし…)
名前で呼び合う自分達を想像すればやっぱり少しゾワっとした。
そんな事をチャンドラが考えている間にもトライン少佐とノイマンは親しげに話している。表情も柔らかい。
ノイマンは基本身内には甘いがそれ以外あくまで職務上の立場に合わせた対応をするのに。
あれではまるでアークエンジェルのクルーに対する対応と同じではないか!
(…独占欲?)
そこまで考えてそんな言葉が過ぎる。
いやいや、いい大人だぞ。あっちだって同じ年の同性の大人だ。
そうじゃなくてなんか、自分達にしか懐かないと思っていた猫が他人に擦り寄って行くのを目撃してしまった様な…、まさか…、これが!
(うちの子が取られてしまう…ってやつか!?)
「チャンドラ中尉、どうかしたか?」
発言が無かったのが気になったのか、チャンドラの頭も心もぐちゃぐちゃになっているなんてつゆ知らず、ノイマンはいつも通りに話しかけてくる。チャンドラとしてもそんな事になっているなんて知られたらどうにも恥ずかしいので、
「なんでもないですよ、ノイマン大尉」
平静を装いノイマンとトライン少佐の会話の輪に加わった。後でこの気持ちを分かってくれるだろうラミアス艦長とフラガ大佐に報告しようと思いながら。