アレクセイ・コノエ大佐から困った様に「何も聞かず行って欲しい」と言われて向かった部屋に赴くと、目の下にクマを作ったキラ・ヤマト准将とアルバート・ハインライン大尉がパソコンに向かい猛烈な勢いで作業をしていた。
チラリと見えた画面からとてつも無く複雑なプログラムを組んでいる事がわかったチャンドラは、これに巻き込まれては堪らないと、部屋からの撤退を試みた。しかし、今し方自分が開けて入ってきたはずの扉はロックが掛かっていて開かなかった。
(遠隔操作…!)
何としてでも逃さない、そんな強い意志を感じチャンドラは慄いた。そして、いつの間にか近づいて来たハインラインにがしりと肩を掴まれる。
「…逃すわけがないだろう。手伝え」
地の底から這い出すような声であって、普段なら素直に返事をしてしまいそうである。が、ここで怯んでしまっては、優秀なコーディネイター2人が目の下にクマを作ってまで組んでるプログラムの構築作業を手伝う羽目になってしまう。
「それ、俺には出来ませんよ!」
「嘘、ですよね。僕チャンドラさんがこれくらいなら出来るの知ってますよ?」
「ヤマト准将もそう仰ってるが、僕もお前がこれくらい出来る事を知っている。大人しくそこに座って手伝え」
「ぐっ…」
確かに出来なくはないのだが…、
指示されたパソコンに目をやれば、既に作業を振り分けてあるのか、画面いっぱいに複雑なプログラム並んでいる。
…やりたくはない。
「…ハインライン大尉の部下はどうしたんですか?俺より確実に早く作業出来ると思いますけど」
「あいつらには手伝わせる事が出来ない」
「ちょっとした機密なんです」
あはは、眉を下げて困った様にヤマトは笑った。
チャンドラは、そんなものなんで俺に手伝わせようとしてるんだと思い、そのまま口に出した。
「そんなもの俺に見せて良いんです?」
「チャンドラさんになら大丈夫です」
「僕もそう思っている。…あと、あいつらとお前なら作業スピードはそう変わらん」
2人の評価と信頼は素直に嬉しく、くすぐったい様なそんな気持ちになった。
「2人がそこまで言うなら、お兄さん頑張っちゃおうかな!」
そんなくすぐったさを誤魔化すようにチャンドラは元気良くそう言って、パソコンの前に座った。
「ありがとうございます!」と言ったヤマトは本当に嬉しそうにしていたが、ハインラインは不満そうに「僕の方が年上なんだが?」とかなんとか言っていた。