後悔のその先に…俺はその日嫌な予感がした。
単純に運が悪いで済めば良かったが、重なりすぎた。
始めは手持ちのタバコが切れた。次にありとあらゆるものが絶妙に使い切っててどうしようもなかった。足の小指をぶつけた、入ってるはずの筆記用具を忘れた、抜き打ちのテスト、食堂で食いたかった飯が完売。
怖くなって家に帰ればしまいにゃ何故か4人で揃いにしたグラスが割れた。
その時愚痴るのにレイジに連絡したのが運の尽きだ。
「……諏訪、いいかよく聞け……っ遠征艇の定期連絡が途絶えた……通信障害の可能性もあるが───」
いつもは運がツイてる方の俺がついに見放されたと気付いた。
それは、連絡する前に割れたグラスは青色だったからだ。
それからは早かった。
揃いにしていたグラスは買い替え、1つでも手がかりになるならと玉狛経由で情報を探した。
直接伝えなかった後悔と気付いていて知らないフリをした天邪鬼という枷を嵌めて。
何度も無断渡航も考えた、ただ俺にはそれができないだけの楔になる奴が多かった。
だからこそ帰ってきた時には俺がアイツの楔になると決めた。
そして願ったり叶ったりな事は突然やって来た。
あちこち困らせ、親しい奴を泣かせてた行方知れずの遠征艇が帰ってきた。
乗ってた奴らはみんなボロボロだったが、誰かが死んだり黒トリガーになる事はなかったらしい。
怪我の多い奴らから順に降りていたが俺が一番心待ちにしてた奴の姿は一向に見えない。一緒の隊である歌川と菊地原は先に降りていたから居るのか聞けばいいのだが、いざという時に己の天邪鬼は顔を出し聞けずにいた。
そうしてるうちに最後の集団になった。
年長組は誘導や指示等をしていたのだろう、1つ前に出てきた奴らよりもボロボロで一際疲労が見えた。
ようやく一番に待っていた風間は支えられて出てきた。そんな姿に泣きそうになった。
小型高性能とよく呼ばれていた手足はボロボロでひとつだけ欠けていたから。
涙を堪えながら徐々に速度を上げて近寄る。向こうも気付いたのか喜びなのか絶望なのかよく分からない顔をしていた。
「……っか、ざまっ!!」
「諏訪………」
支えられていたなんて、傷だらけなんて忘れて勢いよく抱きしめた。
風間もやられるままに体重を俺に預けてた。
「おまっ、馬鹿野郎っ!」
「馬鹿野郎か…俺は帰ってきて最初に会えて嬉しいんだがな……」
「ーーーっ!……俺も嬉しいけどよ……それ以上に…めちゃくちゃ後悔してたんだよ……」
泣くものかと思っていたのに、声を聞いてそんなことを言われたら俺の涙腺は決壊したらしい。
風間の肩に顔を埋めて、見られないようにして泣いた。それに気づいたらしい風間は回していた腕の力を強めた。
「俺も……後悔をしていた…死ぬかもしれないと思った時に思い出したのがお前の顔だったから…」
「…ズッ」
「言葉にしなくても伝わるが、しなきゃ通じ合えないとお前の手紙で気付いた瞬間でな。何がなんでも帰って伝えたいと思った。」
「風間………………、おかえり。生きて帰ってきてマジでよかった…」
「ああ、ただいま。お前は…痩せたか…?」
「後悔して言いたかった事それかよ…」
「いや、つい気になってな………… 好きだ、諏訪…心配かけた…」
「……………っ、待たせすぎだっての……俺も…好きだよ、風間」
ようやく、顔を合わせた。
俺は泣いてぐちゃぐちゃで風間は怪我だったりでボロボロで、それなのに告白という暴露を周りの目を気にせずやってやった。
段々と理性が働いて恥ずかしくなっってきたがお互いに可笑しくなってきて…笑いだしてしまった。
「ははは!!マジ何やってんだろな!」
「本当にな、これだからお前といるのは飽きないな」
「…………お前ら、周りが引いてるからイチャつくのをやめろ……」
「「っははは!」」
「はぁ………風間、お前は病院だ。諏訪は休め、寺島頼んだぞ。」
「この状況で俺呼ぶー?ったく、ほら行くよ諏訪。」
周りのドン引きを見てたら余計に笑えてしてたら、木崎に止められた。
風間はレイジが病院に、俺は雷蔵が家に連れてくことになった。
「風間、早く家に帰ってこいよ?」
「その前に見舞いにでも来い、諏訪」
後悔しないように、再会を約束して。