じこちゅ〜「えっ、手伝ってくんないの?」「書きものをどうやって手伝えっちゅーねん」むむむ、それはそうである。じゃあしょうがないなと観念して向日がシャープペンシルをかりかり、と走らせ始めると忍足が横からそれを覗き込んできた。「手伝ってくんないんじゃないの」「漢字………」「え!?」向日がたった今参加メンバーの欄に記入したのは、忍足侑士の四文字であり、自分と宍戸の名前の次くらいに自信があったのでまさか間違えてるわけないと思わず大きめの声が出る。慈郎は書けるけど画数が多いからちょっと苦手。もう一回自分の書いた文字を見てみたけど、やっぱり合っていたので「なんだよ、合ってんじゃん!」と顔を上げる、と。
ちゅ、
ん?
「あ、悪ぃ」「いや、大丈夫やで」
向日が顔を上げると、思ったより忍足の顔が近くにあり、くちびるとくちびるが触れ合ってしまったので、謝罪をした。それは例えば、すれ違おうとしたらちょっと肩が当たってしまった時のように、軽い感じで。くちびるとくちびるがぶつかってしまっただけだったので。忍足は「合うてたわ」と言うと小説にまた目を落とした。