千藤さんが送ってたIF ダメなとき、大石夜光はとことんダメになる。
この男は自らの恥を晒すのが下手くそというか、吹っ切るのが致命的に遅いというか、弱みを隠そうと必死になるきらいがある。そんな恥を晒すぐらいなら死ぬと言い出すのが昔からの常だった。千藤に言わせれば、それぐらいで死ななければいけないなら警察はいらない、ぐらいの話なのに。
とにかくそういうとき、何故か千藤にお鉢が回ってくるのもまた常だった。腑抜けたあの男をひとに任せっきりにするのも悪い、という千藤の生真面目さが裏目に出ていたこともある。
「私が送っておきます。慣れてますから」
千藤が手を引いて歩き出せば、夜光は抗うことなく従った。そのままトボトボとついてくる。「しゃきしゃき歩いて」と注意しても、やはり夜光の歩みは生まれたての子鹿みたいにふらふらしていた。重症だ、と千藤は溜め息をつく。
1218