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    ჯびたず

    @bach_plant

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    ჯびたず

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    髭バソ。
    座の二人が、あの部屋に入れられてしまったお話。
    座の髭バソは糖度控えめに考えているけど、これは高めかも。

    ##髭バソ

    いつもより、キスはした「……これ……や、ここは」
    「……まさか」
     座の世界の港町。酒場へ向かおうと歩いていた黒髭とバーソロミューだったが、通りを曲がったところで周囲が真っ白になった。
     一切の音が消え、自分達が閉鎖された空間にいることに気付く。目が慣れてくると、そこは安宿の一人部屋程度の広さだと分かった。中央にソファがあるだけの、どこを見ても全てが白い空間。
    「抑止力何してるんだよ」
    「……そもそも、抑止力が関係するのか?……するか」
     黒髭の言葉に、バーソロミューが顎に手を当てて首を傾げる。
     座の世界においては、常に大なり小なり抑止力が働く。それはこの世界の均衡を保ち、明らかな異常事態が起こることは無い筈……そう考えていた。
    「ココの、小せぇバグみてーなもんか」
    「そうかもしれないな。止める程でもないと判断されたか……」
     真っ白い部屋の中で周囲を見渡す。オタク趣味を持つ二人は、この空間の見当はついていた。ここに自分たちが入れられた意味も。しかし、賑やかなファンファーレの音とともに白い壁に現れた文字を見て、思わず声が裏返った。

    『相手に〝愛してる〟と言ってください』

    「はぁあ」
     二人が言えばここから出ることができる、という文字を忌々しげに睨む。
    「やってられるか」
    「ざけんなよ」
     低く唸り、二人同時に壁の文字へ向けて数発、発砲したが、弾は吸い込まれでもしたのか傷一つ付かない。攻撃が通じないとは思っていたが、目の当たりにすると苛つきにしかならない。眉間に深い皺を寄せたが、溜息を着いた黒髭がソファへどかりと座り、バーソロミューもそれに倣った。
    「……お前から言え」
     帽子を外し、脚を組んだバーソロミューが溜息混じりに言う。聞いてやろうという尊大な態度を、黒髭が鼻で笑った。
    「あ?お前が先に言えよ。いっつも、あんあん鳴きながら言ってんじゃねーか」
    「は、黒髭殿の耳には便利な変換機能が付いているようだな。貴殿こそ、最中に何度も……ああ、私に夢中で覚えていないのか?」
     バーソロミューが黒髭の勘に触る口調で言いながら、うっとりと目を細める。
    「フン、言ってろ。んじゃ、今からお前を鳴かせりゃぁすぐってことだな」
     黒髭の手がバーソロミューの顎を掴んだところで、今度はシンバルの音がした。即座にバーソロミューが手を跳ね除け、二人、壁を睨め付ける。
    『制限時間を設けます。只今より五分間です』
    「何?」
    『それでは、スタート!』
     再び文字が切り替わり、デジタル表示でカウントダウンが始まった。

    「何か働いたか。爆発すんのか潰れんのか知らねえが、出んなら、やるしかねーだろ」
    「そうだな」
     刻々と減っていく数字を半眼で見つめる、バーソロミューの横顔。その不機嫌な顔を引き寄せるように、黒髭が肩を抱いた。
    「愛してるぜ。バーソロミュー」
     感情を煽るような素振りも全くない、ただ優しく呼びかけたかのような口調に頬へのキス。バーソロミューの肩が僅かに跳ね、碧い目が見開かれた。
    「な……っ……」
     ぎこちない動きで向けられた顔には驚きだけではない感情が現れ、怒りにも泣く寸前のようにも見えた。
    「妻二桁の経験値ってヤツお望みなら、毎晩言ってやるけど」
     バーソロミューの様子に満足した黒髭が、ニヤリと笑う。
    「ふん。そういうことか……」
     ふ、と息を吐き、バーソロミューがチラリと残り時間を確認してから動く。身体ごと向き直り、黒髭の腰を跨いで頬を優しく手で包んだ。笑みを浮かべている黒髭の目を見つめながら、キスをする。数度繰り返し、離れ際に下唇を噛んだ。
    「っ!」
    「ふふ。愛してるよ。黒髭」
     潤んだ目で視線を外さないまま吐息混じりに囁き、唾液と血に濡れた唇を舐める。己も唇を舐めた黒髭の瞳に、剣呑な光が宿る。そこへ、最初よりも賑やかな音が鳴り響き、ガチャリと鍵の開く音がした。
    「……ほーう。これは何の経験値で?」
    「さぁ。何だろうな」
     微笑んで、黒髭の首筋から鎖骨を人差し指で辿る。胸を押して降りると帽子を掴み、コートを翻して壁の数字を見た。
    「……一分残ったな。行くぞ」
    「おうよ」
     熱の引いた声で言い、現れていたドアへバーソロミューが向かうのを、黒髭が笑い混じりに返事をして追う。二人がドアを潜ると、壁の数字は溶け込むように消えていった。

     ドアを出れば元の場所、角を曲がったところだった。当然、振り返ってみても何も無い。町並みも人も変わらず、通りで立ち止まっている二人を気に留める者はなかった。
    「やっぱ、バグか」
    「そのようだな」
     何かを払うようにコートの裾を捌き、目的の方向へ進もうとするバーソロミューの腕を、黒髭が掴んだ。
    「何か気乗りしねぇわ。戻ろうぜ」
    「何言って、っ……」
     振り向いたバーソロミューが見たのは、先程の剣呑な黒髭の目。つまらなそうな声とは裏腹に、吊り上がった唇にはまた血が滲んでいる。ゾクリとした感覚が腰から上がり、バーソロミューの目がうっとりと細まる。
    「そうだな……船で、憑き物を落とすか」
     腕を掴んだままの黒髭の手首を軽く叩き、ニヤリと笑って踵を返す。
    「ドロップキックは無しだぜ」
    「なんだ……それが手っ取り早いのに」
     バーソロミューの肩を抱き、細い路地に連れ込んで人目から隠す。
    「……今日はいらねえだろ。あんときも、俺にゃ何も憑いてなかったが」
    「ああ。いらないな……お前の魔力で落とせそうだ」
     相変わらず笑みを浮かべている唇を、血の滲んだそれで塞ぐ。
     以前、どこかで強い魔力を受けたバーソロミューが、黒髭の船に乗り込んできた。船長室へ入るやいなや、黒髭にドロップキックを入れ、不意打ちに転倒したところへ襲い掛かった。一度は武器を顕しかけた黒髭だったが、真っ先にバーソロミューの手がベルトへ掛かるのを見てその意図を汲み、その後は煽る言葉をかけながら行為に及んだ。翌日、動けなくなるほど、バーソロミューに搾り取られることになるとは思わずに。
    「……でも、続きは船に戻ってからだ。服が汚れてしまう」
    「俺は気にしねぇけどなぁ……まぁ、その方が楽しめるもんな」
     もう一度、口付ける。鉄の味のキスは互いの興奮を高め、足早に船へ戻った。
     
     あの部屋で囁いた言葉を、船に戻った彼らが交わしたかは、二人のみの秘密。
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