あたたかさ 何だか、ここのところの寒さと仕事の忙しさが重なって、少し目眩がする…気がする。
「…ふぅ」
ひとつ息を吐いて、肩をおろす。右手で目頭を押さえる。椅子に座り直し、さぁ、次の作業は…と。後ろに引っ張られ、前への動きが封じられる。くるりと振り返ると、炭治郎が服の裾を掴んで立っている。俺は後ろに向き直り、
「なんだ?どうかしたか?」
と声をかける。炭治郎は無言で、ぎゅっと抱きついてきた。
「はぁ…生きてる。杏寿郎さん。生きてる。」
そう言いながら、耳を俺の胸に当てて、ゆっくりと確認するように、そっとひと言発した。そのまま頭の向きを変え、顔を胸に押し当ててくる。
「なんだか…」
「うん?」
「なんだか。怖くなってしまって。健康で、こうしていてくれるだけで、俺はとても幸せなんです。…へへ。今更、何ですかね。恥ずかしいな。」
照れ隠しに笑って見せる。恥ずかしいらしく体勢は変わらないが、うなじが赤くなっているのが、上から見ている俺にはわかる。なんていじらしいんだ。そっと優しく、時にあたたかく見守ってくれる。俺の大事な恋人。
そのまま俺も彼の背中に腕をまわし、右の耳下に唇を当てる。あえて音を立てるようにキスをすると、炭治郎の体がビクリとする。首に手を当て
「な、何するんですか」
顔を赤らめて、上目遣いにこちらを可愛く睨みつける。
「はぁ…君な。そういうとこがな。」
言葉よりも俺の下半身は素直だ。こちらを見つめていた炭治郎の目が丸く大きくなる。
「あ、あの?」
「ん?」
「え?」
「うん。」
にこにこしながら、お互いの下半身がどんどん密着していく。
「寒いなぁ、今日も。あたためてくれないか?」
そっと目を合わせてくる可愛い恋人が頷くのを確認して、俺は彼の手を取り、寝室へと歩き出した。
ーー終わりーー