鏡に映る君 階段を駆け上がる足音は軽く、あっという間にドアは開けられた。肩で息をしながら、汗を拭きながら、ニコッと笑いながら話しかけてくる。
「遅く…なりました!すみません!」
「いや、大丈夫だよ。連絡もくれてたんだから、そんなに汗かくほど走らなくても…」
爽やかで可愛らしい笑顔に自分も笑顔で返す。
「あ、そうですね!は!汗かいたら髪切りにくいですかね!すみません!」
今どきの若者らしくない誠実な彼が、最近の俺のお気に入りだ。可愛らしく、弟が出来たようだ。
2度目の謝罪と共に下げた頭を、そっと上げながらこちらを覗く。上目遣いが無意識なんだから、怖い。
「いや、最近暑いからね。仕方ないよ。大丈夫。少しクールダウンしよう。アイスコーヒーでいいかな?」
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