ミラーリング #12(英雄争い編)英雄争い
「お母様! お母様!」
豊かな髪を揺らし、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、少女は叫んだ。
「落ち着きなさい。そうはしたない振る舞いをするものではなくてよ」
ゆったりとした長椅子に腰かけた母親がたしなめた。その肩には小鳥がとまって愛らしくさえずっている。母親は愛おしげに小鳥をなでた。
「でも、お母様!」
桃色の唇をかわいらしく尖らせて、少女は窓の外を指差した。
「お客様よ。ものすごく立派な戦車が来るわ! アルスター王の戦車だと思うの」
「なんですって?」
母親は長椅子から立ち上がり、娘が指差す方向をにらんだ。目に映ったのは、見事な装飾の華麗な戦車。
──見間違えようもない、アルスター国王の戦車だ。
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