左手には汁碗、右手は箸を構えて、ウィルは目の前の流れを凝視する。
程よく上流に近いこの位置取りは、狙いのものを獲得するにはもってこいだろう。少し大人気ない気もするが、幸いにも子供たちとは区画が分かれている。何より大好物が流れてくるとあっては周りに忖度などしている場合ではない。
「流しそうめんかあ。初めてやるな」
ウィルの右手、下流に位置取ったガストが物珍しげに装置を眺めている。確かにこういった祭りでもなければ目にする機会はないだろう。ウィルとて日系の幼馴染がいなければ、こういった文化があることも知らなかったかもしれない。
「日本では、七夕……7月7日に、流しそうめんをする風習があるって本で読んだことがある。これを食べて、無病息災を祈ったんだとか」
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