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    mofuri_no

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    POIPOI 54

    mofuri_no

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    一応前回の続きですが、単体でも読めます。
    勇者帰還後いろいろ捏造、ネタバレ盛大。整合性もないです。
    ダイポプに…なったかな?前回ラストでハグありましたが、ダイレオにはなりません。でもレオナすき。
    やっぱり勇者と魔法使いは、最強だー。

    ##dp

    この世の果て#2世界を救った勇者が5年ぶりに帰還したことで、パプニカ、いや、世界中が沸いていた。折しもパプニカ、ロモス、カール王国は復興が進み、人々の心も上向きになっていた頃だ。
    帰還を祝う宴が催され、あちこちで勇者の名の下に乾杯が酌み交わされた。
    しかしそんなお祭り騒ぎもいつしか収まり、為政者は復興の指揮をとり、市井の臣は日々の生活に追われる日常が戻ってきた。

    ダイは帰還して落ち着くと、魔界にいた間のことを少しずつ話すようになった。
    魔界のモンスターと交戦していた、と。その中には、あのキルバーン…ピロロのように、ヴェルザーの配下と思われるものもいたらしい。
    普段ならそれらの魔物は魔界から出ることはできないが、稀に結界が緩み空間の綻びに裂け目ができることがある。それを利用されれば、地上にとって脅威だ。
    ヴェルザーの力は、少しずつであるが回復の兆しを見せ始めているらしく、魔界と地上との結界はその力を弱めていた。未だ石に封印された身であることを考えれば、完全なる冥竜王の復活までには数十年から数百年を要するであろうが、このままではいずれ、地上を危機に晒すことになる。
    ダイの言を受けて、ポップはマトリフ、アバンらの助言を得、フォブスターら大戦時から親交のある魔法使い達と共に綻びを探し出した。そして結界を突破した時の魔法陣を応用して、綻びを縫いとめる作業を行った。今後も効果が切れそうになれば、修復していくつもりだ。


    さて、5年ぶりに晴れて地上に戻ったダイには、レオナと結婚して王配となる道が約束されているはずだった。
    しかし、かつて危惧されていたことが現実となって起きていた。
    過ぎし日、ダイを奪おうと人間の醜さを説くバランに対し、ポップはダイを庇い、こいつのことを迫害なんざするもんかい、と言い放った。
    そのバランは人間への憎しみのために我が部下となる道を選んだぞ、と、ダイにも同様の選択を迫った大魔王バーンに対し、ダイは、お前を倒してこの地上を去るとまで言った。
    どんな人間も、ダイと直接会って話せば、彼がどんなに地上とそこに生きるものたちを愛しているかがわかるだろう。
    しかし大多数の一般国民にとって、強大な力を持つ竜の騎士である勇者が、憧れや信仰と同様に、畏怖の対象となることもまた事実であった。
    そして宮廷内でも、純粋な人間でないダイを王配にすることへの、反対の声が上がっていた。

    そんな声をレオナは一蹴した。
    しかし、パプニカの正統な王位継承者であり、対戦時は各国をまとめ上げたはいえ、いまだ19歳の年若い女王である。
    パプニカ国内に限って言えば、ダイをよく知る三賢者もおり、ダイの出自をとやかく言い、危険視するような見方も切り捨てることができた。シナナ王が統治するロモスも同様だ。
    しかし一歩外に出れば、ダイは人間でも魔族でもない、この世にたった一人しかいない特別な存在だ。
    利用して権力を得ようとする老獪な輩はいくらでもいた。パプニカ女王とロモス王の庇護だけで、守り切れるものではなかった。
    このままでは、人間の弱さ、愚かさの前で引き裂かれてしまったダイの両親、バランとソアラの轍を踏むことにもなりかねない。
    未だ復興途中で混沌としている世界のバランスが崩れ、何かことが起これば、最悪の事態も考えられたのだ。

    パプニカ、ひいては世界における情勢を語るレオナの話を聞いて、ポップは激昂した。
    「そんなのってあるかよ!」
    ーダイは地上でもボロボロになるまで戦って、一番苦労して苦しい思いして、そっから魔界で5年も戦ってきたんだ。おれたちが道をつくって、ラーハルトたちが迎えに行くまでは、たった一人で。
    竜の騎士だって、バランとソアラの息子だ。人間なんだ。もう、解放してやってくれ。使命の前に、ダイ個人が幸せになるべきだ。
    個人の気持ちが大事なんだって…、この心で大魔王に勝つんだって、あんときダイに言ったんだろ。姫さん。

    黙って聞いていたダイが口を開いた。
    ーいいんだ、ポップ。
    「父さんとの絆がある限り、おれは竜の騎士だ。
    父さんのこころが宿る竜の紋章。これはおれの一部なんだから」
    その目は静かで、迷いや諦めを孕んでいる様には見えなかった。

    ごめんねダイ君、とレオナは目を伏せた。
    「私はソアラ様とは違う。この国を捨てられないの。
    竜の騎士の紋章がダイ君の一部であるように、私は自分をパプニカの女王であることと切り離せない」

    ダイはわかってるよ、と言うようにまっすぐにレオナを見つめ、頷いた。

    レオナは思う。
    強大な力を持っていても、ダイがただの人間だったら、あるいは。
    カール王となったアバン先生とフローラ様のように、2人で国を治めていく道もあったのかもしれない。
    だけど、言っても詮ないことだ。
    魔族と比べたら、たった数十年と定められた人間の一生で、なんと思うにまかせないことが多いのか。
    何も気にせず、心のままに生きられたら…
    そうも願うけれど。
    レオナは、自分を産み育んでくれたこの国を、ダイと仲間たちが守ったこの世界を、愛していた。 
    ダイには、翼がある。一所に縛り付けておくことはできない。
    一度は青空の向こうへ消えていった小さな勇者が、この地上に戻って来てくれた。それだけで十分。あとは、その翼で、どこまでも自由に飛んで欲しい。
    私は、この地に根を張って生きていく。
    後悔なんてしない、と言ったら嘘になるかもしれない。でも、とレオナは思う。
    どちらにしても、生きてる限りあれこれ思わない日なんてないのよ。
    だったら、今、私が一番私らしいと思うことをする。
    レオナの口の端に、知らずと笑が浮かんでいた。
    ダイくん、私たち似たもの同士ね。  

    デルムリン島で初めて会った時に生まれた勇者と姫との絆は、何があっても、確かに切れずにそこにあった。ダイが記憶を失くした時。2人で大魔王と対峙した時。いつか会えると信じて過ごした日々。
    そして、今もまた、厚い信頼とともに胸の中にある。
    しかし淡い恋心をも伴ったものであったはずのそれは、お互いの中でいつの間にか、その色を変えていたのだった。
     

    ダイを一足先に退出させて、ポップは下を向き、掠れた声で言った。
    「本当に良かったのかよ」
    「……」
    「姫さんのいうことも分かるぜ、けど…」
    顔を上げ、レオナを見て、なぜか泣きそうな顔を見せた。
    「おれはダイに、あんたとダイに幸せになってほしいんだよ」

    「ポップ君」
    レオナは静かに言った。
    「ありがとう…ダイ君を探し出して地上に連れて帰ってくれたこと、感謝してる。これで彼も、私も新しい一歩を踏み出せる。私だけじゃない、みんなよ」
    「それこそ、おれだけの力じゃない。みんながいたからだ」
    ポップは続けた。
    「物語のおしまいに幸せになるのは、勇者と姫と相場が決まってる」
    レオナは、相変わらずの鈍感さを発揮しているこの大魔道士兼勇者の相棒に、いつかのような苛立ちを覚えた。全く世話の焼ける。だけど、憎めない。
    「そうね…でも、知ってた?このお話はまだ続いてるのよ」
    どこか不敵な笑みを浮かべ、女王らしく上から目線で言う。
    「ねえ、長い付き合いだけど。私まだ、キミのこと見直してないのよ。感謝と尊敬はしてるけどね。大魔道士として魔法や智略で並ぶものはいないと言うのに、あなたまだ自分を偽って、見縊ってる。
    個人の気持ちが、というなら、あなたの気持ちはどうなの?勇者の魔法使いクンのハッピーエンドは何?
    ずっと一緒に冒険してきたんでしょ。本当にダイ君のハッピーエンドが、お姫様といつまでも幸せに暮しました、だと思う?」
    最初に言ったのは自分だが、古い話を持ち出されたあげく核心を突かれ、ポップは返す言葉を持たなかった。やはりこの姫には舌戦では勝てない。
    「ちぇっ…あれから何年経ってんだ。相変わらずキッツイ姫さんだよなぁ、あんた」
    悔しそうに毒づいた。


    うまく眠れない。
    ダイはため息をついた。まだ、魔界にいた頃の浅い眠りの癖が抜けない。一度目が覚めてしまうと、再び寝付くのは難しかった。
    両腕を枕にして上を向いていた体勢を変え、ごろんと横向きに寝返る。
    すると窓の外、月明かりの闇の中にふわりと浮かぶ人影が見えた。
    「ポップ…」
    「よおダイ、散歩でもどうだ。月が綺麗だぜ」
     
    ポップは屋根に登ろうと言った。ここなら誰にも邪魔されない。2人は城の上から、並んで月を見上げた。
    沈黙が降りる。
    ポップが先に口を開いた。
    「…またおれを置いてくつもりか」
    ダイは目を見開いた。
    「なんで…」
    本当に、この大魔道士は油断がならない。
    言わずにいこうと思っていたのに。
    ダイは密かにパプニカを出ることを決めていた。
    パプニカだけではない、どこの国にも行く気はなかった、勇者ダイとしては。
    「地上とお別れしたあの日、おれは太陽になってみんなを照らすんだ、なんて思っていたんだ。実際には地下に堕ちちゃったわけだけど」
    間抜けだよな、とヘヘッと笑う。
    「でも後悔はしてなかった。たとえこの目で見れなくても、みんなが幸せでいてくれることがおれの希望だったから。だけど、思いがけずおまえに会えたとき、
    迎えに行くから待ってろって言ってくれた時…、
    どうしてもまた地上を見たくなった。みんなに会いたくてたまらなくなった」
    ー本当は、たった1人の声が、聞きたかった。夢の中でいつも聞いていた声。その笑顔を見てその手に、髪に触れたかった。
    そんなこと口が裂けても言えないけれど。

    「ラーハルト達が来てくれて、本当に心強かったよ。魔界での戦いは厳しかったけど、こうしておまえたちのおかげで帰ってこれた。おれの望みは叶ったから、もういいんだ」
    とダイは言った。
    「おれは、みんながいたから勇者になれた。あの時、地上を救ったのはみんなだよ。おれは最後の仕上げをやっただけなんだ。
    王様とか英雄とか、おれにはつとまらない。
    いまは、ただのデルムリン島のダイに戻って、誰も知らない所から、この愛する地上を見ていたい」
    「……」
    「レオナがああ言ってくれて、本当はほっとしてるんだ、おれ。ずっと待たせておいて、ひどいよなぁ」
    眉を下げて言うが、意外にも悪びれた様子はない。
    その目にははかつての幼な子のような純真と、大人の男へと変わる時期の色気が同居して、不思議な魅力を放っていた。

    「ばっか、おまえの考えなんかお見通しなんだよ…相も変わらず同じことしようとしやがって!」
    ポップが腕組みをしながら言った。
    「おれが何のためにさんざ苦労して魔界くんだりまでラーハルトとおっさん迎えにやったと思ってんだ。
    姫さんだけじゃない、マァムやヒュンケル、アバン先生、師匠だって、ノヴァもロンもチウもヒムも。ロモスの王様や、それにブラスじいさんも!みんなおまえを待ってたんだ」
    ポップの声は少し震えながら、今にも泣き出しそうな響きを纏っていた。
    「あんなことは2度とごめんだぜ。言っただろ…この世の果てまで追いかけてやるって」

    2人の間に、再び沈黙が訪れた。
    今度は先に破ったのはダイだった。
    「会えなかった間…」
    「あん?」
    「魔界で一人で過ごしてたとき、地上での出来事をずっと思い出してた」
    ダイは静かに言った。
    「モンスターがいたし、あんまりそんな暇もなかったけど、やっぱり寂しかったから。思い出したくない辛いこともあったけどね」
    「…親父さんのことか」
    「それもあるけど…父さんはずっとおれの中にいるし、母さんと一緒に見守ってくれてる。おれが考えてたのは…お前のことだよ、ポップ」
    「…えっ…」
    「お前を2度と失いたくなかった。2度と忘れないと誓ったのに、ずっと一人でたたかって、頭がおかしくなりそうで。お前の声を忘れないように、空に向かって、必死で歌ってた…お前と歌った歌」

    ポップはハッとした。
    最初は2人だけで始まった冒険の日々。
    デルムリン島から2人で船を漕ぎ出したあの日から。
    不安を紛らわすように、希望を見失わないように。
    星の見えない夜には2人で歌った。

    「おれも…おれも歌ってたよ。昼間は、ずっとお前を探して動き回ってたけど。夜…眠ったら、あの時の夢ばかり見て。つらくて、会いたくて。歌ってた。空に向かって」
    「ポップも…」
    おれと同じことを。

    「お互い成長しねえな」
    ポップは苦笑した。
    「おめーは背ばっかデカくなりやがったけど、中身はお子ちゃまのまんまだ」
    「なんだとぉ!」
    「お、やんのか?」

    睨み合って、同時に吹き出した。
    「なぁ、やっぱり」
    ポップは観念したように言う。
    「おれにとってダイはダイだ」
    おれの親友。おれの、勇者。
    おれの…
    なんだ?
    胸の奥に違和感を感じる。
    一度、こいつとなら、死ぬのも悪くねぇと思った。
    それから、離れても、こいつが幸せならそれで良いと思った。それがあん時手を離してしまった、おれの責任だって。
    でも、今はこいつと生きたい。
    こいつが選んでくれるなら。その隣にいるのはいつも、ずっと、おれでいたい。
    なんだこれ、これって、なんてんだ?
    魔法使いのハッピーエンド…
    おれにゃあよくわかんねぇよ、姫さん。

    とにかく、とポップは続ける。
    「お前頑固だからな。言うだけ無駄だ、おれだって少しは学んでんだ。もう止めねぇよ」 
    「……」
    「でもさ、おれを連れてけよ。お前のその、体に比べりゃあちっちぇー脳みそで思い悩んでること、苦しんでることがあるんならさ。大魔道士様に聞かせてみろよ。そんでまた考えりゃいい」
    トン、と指で肩を突く。
    「いまお前を一人で行かせたら一生後悔するからな。
    知ってんだろ。このポップ、同じミスは2度としないのがモットーなんだからよぉ」
    と、おどけてウインクしてみせる。

    「ポップ… ありがとう。おれ、ずっとお前と2人で旅したいと思ってた。あの時みたいに」
    月明かりを浴びたダイの頬が、心なしか赤く染まっているように見えた。  
    「お安いご用。おれとおまえは一連托生、どこまでもついてってやらあ」
    「また難しい言葉使って…。どういう意味なの?」
    「…しらねえ、自分で調べろ」 
    「けちー、教えてくれたっていいじゃん」
    頬を膨らませるダイを見ながら、ポップの耳も密かに赤く染まった。
    言えるか。
    (…ずっと一緒ってことだよ)

    「よーし、そうと決まりゃあ。ひとつ気ままな2人旅と洒落こもうぜ、まずはどこへ行く?」
    ーどこでもいいよ。お前となら。 
    答えるかわりに、ダイはそっとポップの頬に唇を寄せた。思わぬ熱さに、ポップは目を瞠り、隣の顔を見つめる。
    「いきなり何しやがる」
    唇を突き出して目を眇めると、極上の笑顔で笑かけられて、毒気を抜かれた。顔が熱い。
    ああ…、おれの冒険は、これからも続くみたいだ。
    ハッピーエンドまで…あと何マイル?
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