Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    suzukure8

    いつも眠い

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💛
    POIPOI 24

    suzukure8

    ☆quiet follow

    とあるコルヌレプスの独白

    #リヴリー
    Livly

    夜のない世界で ひのき、という名前に意味があったのかは分からない。しかしひのきはいちばん最初に呼ばれて、その箱の中で目を開けたのだ。どんぐりのような瞳を持つひのきは、どうやらコルヌレプスという種のようだった。ひのきを呼ぶのが誰なのか、分かってはいない、いなけれどもどうにもひのきの言葉は通じていないようだった。何を喋っているのだろう、というそれの言葉は聞こえるのに、ひのきの言葉はそれには通じないのだ。身体の大きさが違うからかもしれない、でもそれだったらひのきが理解するのだって難しいだろうに。この、ホムとかいう装置のおかげだろうか、それの言うことはホムを通じてよく言葉になって聞こえてくる。この耳はよく聞こえるものであるので、そういうことが可能なのかもしれなかった。
    「これは、夢なんだよ」
    それはよく言っていた、箱詰めにした物語。夢の続き。一度、ひのきたちはそれらとお別れをしたらしい。それをひのきは知らないけれど、知っていたところでどうもしないのだろうけれど。だって知らないものは知らないのだから、ひのきはそれとは初めて会ったのだから。
    「箱庭みたいだね」
    それが使う言葉はどうにも、悲観的なように思えた。
     それは、ひのきのことを嫌いではないのだと思う。ひのきが、この狭い世界を飛び回ることをよしとする、食事を与える、シャワーを浴びせる、きらきらとしたよく分からないものを処理してくれる。狭い世界、だなんて思うようになったのはきっと、それの所為だった。でも、それはよくひのきを連れて他の狭い世界を回った。言葉を書き込んでいるときもあった。喋るのが苦手なんだけどなあ、というそれは、それでも楽しそうだった。
    ―――いつか、
    この物語が終わりを告げた時。
     ひのきはそれを嫌うことが出来るだろうか、そんなことを思う。
     眠りに就くのはそう悪い心地ではない、研究所がサポートしてくれているんだよ、というのはそれが言っていた。それはひのきたちに理解させたいのか、それともただの独り言か。後者なのなら面白みもない生き物なのかもしれない。独り言というのは、誰にも聞かれないと思ってするものだと思うのに、それの言葉はひのきには聞こえている。
    「ひのき」
    森の色。
     シャワーを浴びる。それがひどく、気持ちが良い。ひのきは檜を見たことがないけれど、こんな色ではないことを知っている。
    「森の色」
    美しいね、とそれは言った。
     その言葉が物悲しそうだったのは、それが終わりというものを積み重ねて積み重ねて、擦り切れているからかもしれなかった。



    作業BGM「明けない夜のリリィ」Layla(傘村トータ)
    Tap to full screen .Repost is prohibited

    related works

    recommended works