ふたりの朝「──ソン、カーソン」
この声、誰の声だっけ……。
「ショウ、カーソン・ショウ!」
「わあ!? なに!?」
跳び起きると、目の前にいたのはグレタだった。
「おはよう、監督。よく眠れたみたいね」
グレタはベッドの端に腰かけて、くすっと小さく笑った。花柄の赤いワンピースに身を包み、すでにヘアメイクはばっちりと決まっている。
「今何時?」
「何時でもいいじゃない、今日はオフなんだから」
ああ、そうだっけ……。大きくため息をつくと、グレタは何か企むように片眉を上げた。
「でもこれは言っておいた方がいいかもね。今この家には私たちしかいないって」
言われてみれば、いつもは内緒話をするのも難しい寮の中が静まり返っている。みんなどこに行ったんだろう。
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