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    零薫/全年齢

    零ちゃんの匂いが大好きな薫くんの話❕薫くんが風邪っぴきです。同棲してます➰
    かきかけばっかり増えて支部に載せられるものがありません😂がんばります

    零薫③


    「薫くん、ただいま〜」
    いつもであれば恋人の元気な返事が返ってくるはずの部屋からは珍しく声が聞こえない。
    「薫くん?」
    今日は雑誌の撮影とコラボジュエリーの打ち合わせだけのスケジュールだと事前にマネージャーから聞いていたし、夕方には本人から帰宅したという旨の連絡ももらっている。コンビニにでも行ったのだろうか?まめな彼が連絡もせずに出かけるのは考えにくい。まさか何か事件にでも巻き込まれているのではないだろうか、などと不安が脳裏をよぎる。とうに成人した恋人に対して些か過保護が過ぎるような気もするが、彼は人気絶頂のアイドルな上に、やっとの思いでお付き合いすることが叶った、あの羽風薫なのだ。心配しすぎているのも納得してもらいたい。
    恐る恐るリビングに向かうとこちらに背を向けた状態で床に座りソファ頭を預けた恋人の姿。手には以前テーマパークで購入した彼お気に入りの亀のぬいぐるみが抱えられているようで、緑色の頭が肩口からひょっこり見えている。
    「今度はキツネの女の子がやってくるんだって!お迎えできるようになったら、また行こうね」と嬉しそうに次の約束を取り付けてきた薫くんは流石にデート慣れしているな、と思わざるを得なかった。最初は2匹だったもふもふな仲間たちも彼の度重なるオネダリで今や6匹。まあ、薫くんがかわゆいからなんでもよいのじゃけど。
    (よかった…ここ最近はスケジュールも過密でお疲れじゃったものな。一段落した安心感で、そのまま眠ってしまったのかのう…)
    スースーと小さく寝息が聞こえ、心地良さそうに眠る彼の姿に心底安堵する。
    このままでは身体を痛めてしまうだろう。せめてベッドに移動させよう。眠りを妨げないようにゆっくりと顔を覗き込んだ瞬間、違和感に気がつく。
    頬は赤く火照り、生え際からは玉のような汗が流れ落ちているからだ。明らかに発熱している姿に、生活のほとんどを共にしているというのに恋人の体調の変化に気が付けない己に腹が立つ。
    「薫くん、薫くん、起きておくれ」
    「………ん〜、れぇくん……?おかえり………」
    「うん、ただいま」
    「おれ、ねてた……?ごはんつくって、ない……」
    「そんなこといいんじゃよ。それよりも薫くん、お熱があるんじゃないのかえ?」
    「ねつ………ないよ……」
    「あるって」
    発熱と寝起きで意識がはっきりしない薫くんは緑色をギュッと抱きしめ直して、舌っ足らずに喋る。
    「ん〜……なんか、さむい……」
    「お熱だからじゃよ」
    「おねつ……」
    「とりあえずベッドへ行こうか」
    「だっこ……」
    両手をこちらに広げて甘えてくる恋人は自分で動けないほど辛いのだろう。
    揺らさないように細心の注意を払いつつ膝裏と首の後ろに手を差し入れてゆっくりと持ち上げる。こういった時ばかりは自らの怪力さに心底感謝する。
    ホカホカと暖かい体に体温計を使わずとも高熱が出ていると確信せざるを得ない。
    薫くんが我輩の首に腕を回したことで、彼の抱えていたぬいぐるみが落ちかける。ギリギリのところでキャッチし、腹の上に戻してやる。
    首筋に顔をグリグリと押し付けてくる薫くんはあまりにも愛らしく、思わず頬が緩む。どうやら匂いを嗅いでいるようだ。
    「う〜ん…?れいくんの匂い、しない…」
    「お鼻が詰まっておるのかもしれんのう……」
    「やだぁ〜……」
    いやいやと頭を振ったことで頭痛がしたのであろう。眉間に皺を寄せ、ぅう〜と力なく唸る。
    薫くんは学院を卒業してから健康管理には人一倍気を使っており、滅多に体調を崩すことはない。しかし稀に体調不良になる時はとことん不調になるタイプで、今回のように突発的に高熱を出すこともしばしば。 後輩たちや、プロデューサーの前ではお兄さんらしく振る舞う薫くんだが、本来は根っからの弟気質。体調を崩した時ばかりは見ての通り甘えたになるのだ。いつもとは反対の関係値、本来の兄気質、甘々の薫くん。全ての要素が噛み合い、薫くんの体調不良の際は少し浮き足立ってしまう。本人に言ったら絶対に怒られるから言えないんじゃけども。
    寝室まで運び、クイーンサイズのベッドに寝かせる。下ろしても薫くんの腕は首から離れず、我輩の上半身をベッドに引き込む形で匂いを嗅ごうとしている。
    「なんでにおいしないの……れぇくんのにおいすきなのに……」
    人よりも数段鼻の良い薫くんは若干匂いフェチなようで、平時から隙さえあれば我輩の匂いを嗅いでいるレベルだ。本人は無自覚なのか、以前酔った勢いで「零くんのね、仕事終わりで香りが薄くなった香水と体臭が混ざった匂いがね、良い匂いで大好きなんだ。ふふ、零くんには内緒だよ?」と告白されてた際には後頭部をハンマーで殴られたような衝撃だった。確かに嗅いどるな〜とは思っておったけども。そんな可愛いことを思っておったなんて、どこまでも末恐ろしい子じゃな。
    「ご飯を食べて、お薬を飲んで、よく眠れば、我輩の匂いがわかるようになる。じゃから一旦おあずけじゃ」
    「やだぁ、いまが一番良い匂いなのに……」
    「ほれ、離しておくれ…我輩、体温計と冷却シートを持ってくるから」
    「ん〜だめ〜…れいくんもいっしょに寝る…の………」
    次第に穏やかな寝息が聞こえ始める。首に絡まる腕をゆっくりと外し、代わりにぬいぐるみを抱かせ布団をかけてやる。本当はもう一度眠る前にご飯を食べて、薬を飲んでもらいたかったが致し方ない。
    (薫くんの目が覚める前にお粥を作らねばならんのう。あとマネージャーに連絡してスケジュール調節…)
    今後の予定を悶々と考えながら救急箱から冷却シートと体温計を取り出し、キッチンに水を取りに行く。体温計と水を枕元に置き、薫くんの形のいいおでこに冷却シートを貼る。柔らかい金色の前髪を横に流し、そのまま頭に手のひらを乗せる。頭皮がじっとりと汗で濡れているのを感じ、できることなら変わってやりたいと本気で思ってしまう。
    残念ながら自称吸血鬼といえど彼の体調不良を変わってやることはできない。スポーツドリンクとゼリーでも買いに行こう。いや、プリンの方が薫くんは喜ぶかもしれない、そんなことを考えながら外出の支度を進めた。


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