……どのくらいの時間が経っただろうか。
ふと、目が覚める。周囲は一面の暗闇だった。自分がいま目を開いているのか閉じているのか、それすらも分からない。足は地面に着いていなくて、身体全体が宙に浮かんでいるようだ。ひどく感覚がぼんやりとしている。まるで夢の中にいるような、そんな感覚だった。
「……なんだ、意識があるのか」
声が聞こえる。耳を通してではなく、脳内に直接語りかけてくるような声。
「丁度いい、ひとつ聞こう。まだ、生きたいか?」
声は続ける。その言葉で全てを察した。自分はどうやら死の淵とやらにいるらしい。それともこれが死の間際に見る都合のいい夢というヤツだろうか。どちらにせよ、俺の答えは決まっていた。
――死にたくない。
「死ぬのが嫌、か。まあいい、お前の望みを叶えてやろう」
やはり夢は自分の都合のいいように出来ているらしい。あれだけの事故に遭って、果たして助かるものなのだろうか。どれだけ死にたくないと願ったところで、人は不死身ではないのだ。
「ただし、条件がある」
俺の困惑をよそに、声はそう告げた。
「――お前には、俺の共犯者になってもらう」
反応を返す余裕もなく、意識がまた遠のいていく。最後に聞こえたのは風を切るような、そんな音だった。